さて。
一方で千百合と別れた3人は、無言でレジャーシートを広げていた。
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
皆、一応やる事無いから昼食の準備をしているが、内心では千百合が気になって気になって仕方がないのである。
気にしないようにしよう、信じようとしても、待つ以外する事が無いから、どうしても意識がそっちに向くし。
~~~~♪
「きゃあっ!」
「おおう!うお、うお、おおおべっくらこいたー!」
「心臓に悪いw止めてくれよw」
「ご、ごめんなさい・・・」
紫希の携帯から突如鳴り響く着信音に、意識を急激に引き戻される3人。
慌てて画面を見ると、発信者に母の名前。
「はい、もしもし!」
『もしも・・・、紫希ちゃ・・・?ごめん・・・、・・・戦中に。』
「いえ・・・試合は今はもう終わりましたので。」
『そ・・・の?なら・・・ね。あのね、ちょ・・・お兄ちゃ・・・』
「ご、ごめんなさいお母さん、ちょっと待って下さい!あの、紀伊梨ちゃん、棗君、ここ少し、電波が悪いみたいなので、」
「あ、お電話してくるー?」
「良いよ、行ってらっしゃいwこっちは、やっとくからw」
「すいません・・・!」
「だいじょぶだいじょぶ!任されよー!」
「あっちにWi-fiスポットあったからw行ってらw」
「はい!」
紫希は頭を下げつつ、走って会話の出来る所を探しに行った。
「ーーーそうです。その、右端か、その辺りにありませんか?オレンジのカバーです。」
『ええと、右端、右端・・・オレンジの・・・あっ!あった!有難う紫希ちゃん、見付けたよ!』
「ああ、良かったです。では、お兄ちゃんに渡しておいて下さい。」
『はーい。紫希ちゃん、今日はまだ観戦だよね?暑いし、熱中症に気をつけて楽しんでね?』
「はい。では。・・・ふう。」
通話を切る紫希。
漸く用事を済ませた時、紫希はかなり遠くまで来ていた。
観戦者よりも制服を着て行き交う人が多く、もしかしたら選手控えのスペースなどが近いのかもしれない。
ぐずぐず止まっていても迷惑だろうし、早くここを離れて戻ろう。
と、踵を返した時。
「あっ!」
(え?)
数メートル離れた所で、女の子が1人、空のドリンクボトルをバラバラと取り落とした。
元々無理な量を1人で持っていたのだろう、1本落ちたと思ったら2本、3本と続けざまに落ちて行き、あっという間に辺りに散乱した。
「はあああ・・・・」
うんざりなんだが。
という様子を隠そうともしない、溜息を吐くその少女が着ているのは、制服。
紫希が何時も着ている、立海の。
「あーあ・・・あーあーあー・・・」
「あ・・・あの。」
「ん?」
人見知りの紫希は、たとえ相手が女子であっても、初めての人は緊張する。
ましてクラスメイトとかでもなんでもなく、同じ学校という事以外は学年すらも分からない人になんて。
でも、きっと困ってると思ったから。
「お・・・お手伝い、します。その・・・私も立海生なので、差し出がましいかもしれませんけど・・・」
その子はキョトン・・・としていたが、ちょっとだけ目元を緩ませると、言った。
「・・・じゃあ、お願いしようか。」