そうせよと言われたから一応こまめに連絡してる丸井だが、先行組は皆半分以上忘れてる・・・とまではいかなくてもちょっとどうでもよくなりつつあった。
そんな急がなくていい。
というか、なんなら急いで来てもらってもこっちがカラオケの体制になれないかもしれない。
「ねえ、丸井から連絡来てるけど。」
「しかし、そう急いで向かって来なくとも良いのではないか?」
「この状況ではそうだろうな。俺から、焦って向かって来なくていいと返信しておこう。」
「おーし、じゃあゲームマッチを改めまして開催しまーすw賭けるのはお互いのお財布でーすw」
「おーし、来い!」
「お手柔らかに。」
「ゆっきー頑張れー!多分負けないけど頑張れー!」
「実際、勝率はどんな感じなんだろうな・・・」
「あちらの女性の実力が伺えませんからね。なんとも。」
「伺え・・・まあ、知らんというのはそうじゃろうが。」
しかし、伺えないかと言われると伺えはする気もする。
大きい事言ってるけど結構下手そう的な意味で。
「じゃあまず最初は、そっち指定の格ゲーですねw」
「おし!あれだ、あれあれ!さ、行くぜ!」
少女が指さしたゲームは『リアル・ファイターズ』という、まあオーソドックスな格闘ゲームだった。
「3Dなんだね。」
「おう!まさか2Dしか自信ないですとは言わせねえぜ!」
「そうは言わないよ。ただ・・・審判。」
「はいw」
「練習を一度させて貰えないかな。これはやった事がないから。」
「うーん・・・因みに相手選手の方、ご意見どうですか?」
「別に良いぜ?一回くらい練習したところで、実力差が埋まるわけでもないしな!」
さあてそれはどうかな。
と少女以外の全員が思っている。
「有難う。じゃあチュートリアルと・・・技のコマンドはどこかで分かるかな?」
「選手、カンペの方良いすかw」
「許す!」
「チュート・・・コマンド?何語だ?」
「チュートリアルというのは、いうなれば手引き付きの練習のようなものだ。コマンドというのはあそこにある各種ボタンの組み合わせの事で、特定のタイミング、順番で押すことによって強力な技がゲーム内で使えるわけだ。」
「ふむ・・・」
「リアファイ6だー!紀伊梨ちゃん3までしかやった事ないなー!」
「どういうゲームなんだ、あれ?あ、いや、格闘ゲームの雰囲気は知ってるんだが・・・」
「6って事は結構続いてるんじゃない。」
「割と古い部類ではあるぜよ。俺らが生まれる前から発売されとるき。」
「確かに、いつゲームセンターに行っても置いてはありますね。」
初代は2Dであったこのゲームは、3Dになったばかりで後は古い格闘ゲームとなんら変わりない。
バカでかいフィールドの代わりにリングアウトがあり、ジャンプで飛べる高さはたかがしれている。
時間は有限、5本勝負。時間切れになったら体力の少ないほうの負けという、スタンダードオブスタンダードな格げーだ。
「・・・・・」
「おい、チュートリアルなんだからキャラなんてどれだって良いじゃねえかよ!」
「対戦相手への妨害は辞めるようにw慣れた人にとってはそうでも、初めてにとっては色々重要なんですよw」
「えー!早くしろよなあ!」
(これが主人公、『稲葉 奏』・・・重量感があり、技は出しやすいが上級者向き・・・パワーS、スピードB、コマンドA、防御A・・・『南 時雨』、女性格闘家でスピードを活かした持ち回りが武器・・・パワーC、スピードS、コマンドS、防御B、)
「・・・うん・・・うん・・・・うん、大体分かったよ。」
「おし、やるぞ!対戦、対戦!」
チャリ、と200円を入れて、向かいに座りキャラクターセレクト。
「俺は此奴だ!」
「ブライアン・ブラックストーン・・・」
「どういったキャラクターなのでしょうか?」
「紀伊梨ちゃん知ってるお!ブライアンは1からずーっと居るもんね!ブライアンはねー、パワーがちょーつおいんだよ!スピードもあるし!」
「欠点はないのか。」
「ううん!防御がC!」
つまり、超攻撃型である。
わかりやすいというかなんというか。
「で、こっちはどれにすんの。」
「うん、これで行こうかと思って。」
「・・・幸村。」
「うん?」
「あまり詳しくない俺が意見することでもないが、止めておいたほうが良いのではないか?」
「同意見じゃ。」
「・・・臥鬼だと?」
『臥鬼(ふせき)』。このキャラクターは、スピードこそSだが他は軒並みオールCである。
パワー弱い、防御は紙、使える技は僅かに1つでしかもその1つは足払い。
シリーズ最弱の名を欲しい侭にしている老人キャラクター、それがこの臥鬼である。
「おい。」
「うん?」
「お前舐めてんだろ!こんなんで俺に勝つ気があんのか、ああ!?」
「どうどうw」
「審判、止めんな!」
「止めるよwどのキャラを選ぼうが自由でしょ、これも作戦だよw自分が弱そうに見えるキャラ使ってるからってw勝手に相手の作戦を崩しちゃダメですw」
「・・・ちっ!」
「こんなシンプルな勝負で審判なんか要らないと思ってたけど・・・」
「存外必要なものですね。」
「っていうか、単純にあっちがいちいち煩い。」
「んー、でもでも、ブライアンと臥鬼だったら絶対ブライアンの方が強いお!」
「単純にパラメータで負けているからな。その判断は極めて妥当だ。」
「後はスキルの問題じゃが。」
「よく知らんが、能力差をひっくり返せるだけの技術を持っているのか?」
此処に居る全員臥鬼の事はよく知らないが、持っているはずがない。
持っているのなら、とっくのとうに強キャラ認定されているはずだからだ。それがされてないということは、まあお察し。
「ふん、まあいい!この勝負、貰ったぜ!」
「さて、どうかな。」
《レディー・・・ファイト!》
「とう!とう!」
《ヤッ!トウッ!ハアッ!ハアッ!》
《むっ!ふっ!むっ!くっ!》
次々に技を繰り出すブライアン。
しかし同じくスピードSの臥鬼は躱し続ける。
「・・・おい、避けるなよ!」
「寝言は寝てからにしてくれるかな。」
「はあ!?」
「流石にねw基本避ける以外出来ることないからねw」
「しかし避け続けても解決にならんだろう。」
「おー!おー!すごーい!」
「回避がお上手ですね。」
「スピードSなだけはあるがの。」
だが、真田の言うとおりである。
避け続けていても解決にはならない。
幸村の事だから、引き分け狙いは考えにくいけど・・・と一同が思う中、その幸村はちらりと画面上部に目をやる。
(後60秒。)
59、58・・・お互い何も攻撃出来ないまま、ただ時間ばかりが過ぎる。
「・・・く、っそお!」
《はああ・・・ハアッ!》
《む!》
「おお。避けたじゃん。」
「今のは食らったら致命傷だったな。」
「ああ。流石に一撃でKOはないだろうが、限りなくそれに近いことにはなっていたはずだ。」
「くそ!くそ!」
(30、29、)
「おらっ!おらっ!」
(15、14、)
「これでもか!これでもーーー」
「えい。」
え。
と全員が呟く中、臥鬼の足払いが決まりブライアンはダウンした。
《タイムアウト!》
《K.O!》
《ウィナー・・・臥鬼!》
「・・・は?」
「あり?え?勝ったの?」
「おい、どういう事だ?」
「タイムアウトだ。」
「タイムアウトって何だっけ。」
「時間切れという事です。大抵この手のゲームは制限時間内に、どちらかの体力が0になり勝敗が着くのが普通ですが。」
「お互い体力が0じゃない状態だから・・・」
「体力の少ない方に敗北判定が出る、っちゅうわけじゃな。」
今、幸村操る臥鬼の体力は満タン。
対して少女のブライアンの方は、最後の足払いのせいでわずかだが体力が減っている。
よって、勝者は幸村側。
「・・・・・・!ずりい!」
少女は立ち上がった。
しかし幸村は涼しい顔である。
まあ、性格的にこういう勝ち方に納得いかないタイプであろう事は予想がついていた。
ただ、それはそれとして勝ちは勝ちなので。
「おい!審判、反則だろ今のは!」
「デジタルゲームに反則なんて出来ないよw貴方の負けですw」
「タイムアウトなんて卑怯だぞ!男らしく勝負しろ!」
「幸村は何もwルール違反はしてないだろw」
「でも!」
「ちょっとちょっとwタイムアウトって決着が嫌だっていうんなら、最初にそう言っておかないとwおたくの言う「ずるい」っていうのはそれこそずるいよw後からその勝ち方はやっぱりなしです、なんて言いっこなしなしw」
「う!ぐぬぬぬぬぬ・・・・!ああ言えばこう言いやがって・・・!」
「俺は何も言ってないけど。」
「ああいった勝ち方があるんですね。」
「ああ。俺はゲームのことは知らんが、なかなか戦略性があるな。」
「せんりゃくせ?」
「この場合、戦い方が色々あり奥深いという意味だ。」
「思いついたからって普通は出来ないけどね。」
「初めてやるゲームだもんな・・・」
「そもそも操作に慣れとらんと出来ん勝ち方じゃき。」
幸村が初心者だからという事を差し引いても、土台性格的に少女はこういう細かい勝ち方の研究とか対策をしていないのだろう。
だからといってずるいとか言われても困るが。
「どうしますw一応5本勝負設定だからw次もこのままやることになるけどw」
「くっ・・・!良いだろう、受けて立ってやらあ!」