Hey,families! 1 - 1/6


その日はまあまあなアンラッキーデイだった。

と、放課後の時点で丸井は思っていた。

そもそも朝から雨が降ったり止んだりしていて、あーあ半端な天気、とか思っていたのだ。
そこで、「途中から天気崩れると面倒だから、最初から室内で筋トレにしようか」という旨の連絡がテニス部内を駆け巡った。

もうその時点でマジかよ、と思ったのだ。

筋トレは嫌いだ。楽しくない。

そして放課後に入る直前、部活中止の連絡が入った。野球部とかち合って話し合った結果、譲ることになったらしい。

いかに常勝を掲げる立海とは言え、同じ学校の部活同士、譲り合わなければいけない時もある。常にテニス優先な自分達だが、他所の部活に対してテニス部を常に優先しろなんてことは流石に言えない。

ところが、いざ放課後になってみると、雨は止んでいたのだ。
とはいえ、もうすでに部活なしの体で予定を組んでしまった者が多数いる状態で、「やっぱりありで」は難しい。
結果論だが、ただ部活が無意味に無しになってしまっただけ、とも言える。

(なーんか、いろいろ空回りしちまった感じだよな。)

まあ、そういう日もあるだろう。たまには。
そう思って気を取り直して、一人で最近できたマカロン専門店に行ってきたのだ。

桑原は居ない。というか、いくら仲が良いとはいえ、流石にスイーツのためだけにわざわざ遠方に行く丸井に付き合ったりしないのが男子の距離感。

別にそれは良い。
どうしても一人は嫌だなんていう気はない。
確かに賑やかなのが好きだけど、一人は一人で気楽で良いと思う。

思うが、それはそれとして。

「・・・・・・・」

ああ、今日は自分も空回りの日かも。なんて、ちょっとらしくないことを思った矢先だった。

「・・・・ん?」

パツン。

と、軽いデコピン程度の衝撃がつむじに走った。

まずい。
まずいぞ。

と思ったのもつかの間。

ざああああああああ!

「うわ、マジかよ!?」

マカロンをブレザーに隠すようにして、丸井はダッシュした。

とりあえず屋根のある所へだ。
この雨の勢いでは、雨具を出してる間にずぶ濡れになってしまう。

「はあ、はあ、はあ・・・くそ。やっちまっただろい。」

ここは、自宅からまあまあ遠い公園。
そこの、屋根付きベンチである。

ここから走って帰るとなると、間違いなくその間にびしょ濡れ。
かといって。

「・・・・あーあ、やっぱり。」

ちょっと一瞬思ったのだが、鞄を開けてはっきりした。
傘を置いてきてしまった。なまじ、学校を出た時点では降っていなかったから。

(とりあえず、タオルタオル!)

すっかり濡れ切った上着を脱いで、鞄からスポーツタオルを出す。

その時。

丸井のカバンから、パサっと軽い音を立てて、生徒手帳が落ちた。
それを、たまたま同じ境遇で隣で雨宿りしていた高校生の少年は見ていた。

「・・・・・・」

普段愛想が無いと言われる彼だったが、落とし物をした人を目の前で見て、まるっきり無視するタイプでもなかった。根はなんだかんだ優しいのだ。
だから、タオルで拭くことに一生懸命になる丸井の意識の外で、彼は何の気なしに生徒手帳を拾い上げてやったのだが。

「・・・・・?」

拾った時表紙がー--名前やクラスが書いてある表紙が少年の視界に入った。

「・・・立海大、附属・・・丸井、ブン太・・・」
「え?あ、俺の!ありがとーーーござい、ます?」

拾ってくれたのだと思い、お礼を言いながら丸井は手を差し出した。
だが、青年は丸井に手帳を渡すことなく、検分するようにしげしげと見ている。

「・・・・あのー。」
「傘。」
「え?」
「あるのか。」
「傘・・・いや、ないですけど?つうか、その前に手帳を、」
「来い。」
「え?」
「うちはここから近い。このままだと風邪をひく。」
「は?え、いや、ちょっ、ちょっと、おい!」

青年は丸井の上着と荷物を回収すると、丸井の手を掴んで、未だにざあざあ降りの屋根の下に出た。

抗おうとしたが、強い。シンプルに力が強い。

「おい!ちょっと待てー---誰だよお前!」

青年はその言葉に、足を止めて振り返った。

「春日孝浩。」