Outing 2 - 1/5


今年のGWは。
暑いなあ、と全国の誰もが思っていた。

勿論地域によって度合いは違うが、東京都民ならそう思わずには居られない。
下がる事の無い気温。照りつける日差し。そんな中で運動なんてしようものなら、もう。

「ふっざけんな、クソクソ!暑い!」

汗だくの向日の叫びに、周りの部員は皆同調した。

「しょうがねえだろ・・・暑さを言い訳にするなんざ、激ダサだぜ岳人。」
「言い訳とかじゃねえよ!今年は暑い!いい加減にしろよ・・・!」
「確かになあ。樹の陰に居っても、汗引かへんわ。」

海風びゅうびゅうの立海と違って、東京の23区に位置する氷帝学園に自然発生する風等、平常時は微々たるものである。まだ5月の頭だというのに。

「屋内コートあんだから、そっちで練習したいぜ。」
「そうは言うてもなあ。実際試合する時は空調なんてあらへん場合のが多いやろ?」
「分かってるよ、言ってみただけ!」






「向日君の気持ち、分かるな・・・・!」

思わずつぶやく可憐。
そりゃあ動きっぱなしの部員程ではないが、マネージャーだってそれなりに暑い思いはしている。

「・・・あ、跡部君!」
「アーン?桐生か。どうした?」
「このメニューそろそろ全員回ると思うから、片づけてこっちのメニューの準備しておくねっ!」
「分かった。」
「じゃあ、」
「待て、桐生。」
「えほっ!?」

シャツの襟首を後ろから引っ張られる可憐。

「跡部君!この呼び止め方、苦しいから止めてって言ってるのにっ!」
「ああ悪いな。だが、小動物を捕まえる時は襟首を捕まえるのが定石だろ?」
「私、人間だもんっ!」
「ほう?こんな、ちっせえ、ナリでか、アーン?」
「叩かないでっ!」

メニュー表で頭をぺしぺしされる可憐。痛くはないが、なんだか気分的に縮んでしまう気がする。
小柄なのはそこそこ気にしているのに。

「もう!ご用件はなんなんですかっ!」
「このメニューの準備は、近くの奴にさせる。お前はジローの様子を見てきてくれ。」
「あ!そうだね、今日は暑いもんね。」

普段なら、序はともかくわざわざ見に行ったりなどはしない。だが、今日のような日は、流石に放置はまずい。

「ああ。岳人達の話じゃ、彼奴は暑かろうと寒かろうと寝たら起きないらしい。熱射病にでもなられたら困るんでな。出来れば起こして、適当に涼しい所に移動するよう言ってくれ。」
「分かった!」
「・・・なんだ、にやにやしやがって。」
「え?何でもないよっ!私達の王様は優しいななんて、そんな事全然!思ってません!」
「フン、ばーか。俺様のは「優しい」じゃねえ、「慈悲深い」っつーんだよ。」
「えへへっ!はーい!」






「彼奴、又・・・」
「あ?」

隣に居た忍足がポロッと呟いたのを、向日の耳はちゃんと拾った。

「何が?」
「跡部や。首のとこ引っ張っとる。」
「ああ、あれか。」

離れているので遠目にしか見えないが、忍足の視線の先に、
跡部が可憐の襟首を引っ張って引き止めているのが見える。

「女の子にああいうん、したらあかん言うてんのに。」
「女子だから優しくとかって、そういう概念ねえからなー、跡部。」
「社交界でレディ・ファースト習わへんねやろか。」
「レディじゃないから良い、とか思ってんだろ?」
「そんなんありなん?」
「だって彼奴、この間差し入れ持って来た女子に向かって「雌猫」って言ってたらしいぜ?」
「逆に感心するわ。」

良くそんな事が言えるなという事以前に、良くそんな言い回しがサッと出て来るものである。
しかもおそらく、その言い草で尚、言い返されたりビンタを食らったり、そういう事はなかったのだろう。
その辺が跡部の跡部たる所以というか、他者にはおいそれと真似の出来ない所である。したいかどうかはさておき。

「・・・で、今度は叩いとるし。」
「あれなー。縮むから止めて欲しいって、桐生も言ってたけどな。彼奴小っせーからなー。」
「言うたらあかんで?割かし本人、気にしてるみたいやから。」
「・・・・・・」
「なんや?」
「いや?別に?」

女子の扱いの丁寧さについては、跡部と足して2で割ったら丁度良いのに。

(いや、女子の扱いなのか桐生の扱いなのかは結構微妙な所あるけどな・・・)

「あれ?」
「ん?」
「何処行くんやろ。あっちに今用事無い筈やけど。」

マネージャー業務、虎の巻は、一緒に作っていた忍足の頭にも入っている。
だから、マネージャー陣がどういう動きを取るのか忍足には分かるのだ。

「ジローじゃね?」
「芥川?」
「彼奴の定位置の方向だろ?今日あっちーからなー。」
「さよか。・・・せやなあ。」

暑いな。
そう呟く忍足の頭上で、太陽は煌々と輝く。