切原誕2019 - 2/4


「切原、頼むって!もう一回!もう一回だけ!」
「やだ。」
「そう言わないでさ!な、もう一回ーー」
「もう一回もう一回ってよお!さっきから何回「もう一回」をやってんだよ!」
「なんだよー・・・ちょーっとボタン押すだけじゃんかー。」
「怠いんだよ!興味もねえし!」

切原は机に座って、前の席でスマホと睨めっこしながらぼやく友人をねめつけた。

新しいソシャゲが出るからリセマラ協力してくれと言われ。
ファミチキの奢りに釣られたは良いが、何回やっても目当てのSSRが出ない繰り返し作業に、元々短気の切原は早々に飽きて匙を投げたのだった。

「じゃ・・・じゃあ押すだけ!ガチャのボタン押すだけ!名前の入力とかは俺がやるから!」
「ああん?ったく・・・」

ぽち、と画面をタップして、もう何度見たか分からないくらい見た演出画面を又見て、1枚確定のSSRカードが表示される。

「出た!あー・・・シーラちゃんかー・・・」
「もう良いじゃねーかよそれで。」
「シーラちゃんなー。確かに清楚お淑やか系美少女は王道だよなー!んー、でも俺のツボじゃない・・・って、切原!」
「・・・zzzz・・・・」
「寝るなよ!もう一回!もう一回引いて!もう一回!」




もう一回!
もう一回!

もう一回・・・


切原君。


「・・・・!」

はた。
と顔を上げると、目の前には先輩が。

辺りは真っ暗。
そして手には棒が。

いや、棒じゃない。手持ち花火だ。

「もう一回です。」
「・・・え?」
「火が点いてないですよね?点けますから、動かさないでくださいね。」
「いや良いっすよ!自分で出来るっすから!」
「でも、」
「ほら、春日先輩はスカートじゃないっすか!長いしひらひらしてるんすから、先輩の方が危ないっすよ!なんかスカートに火の粉とか飛びそうで!」
「う、ううん・・・そうかもなんですけど・・・あっ、」
「よ。交代!」

サッとチャッカマンを丸井先輩が取り上げた。

「ほら、赤也。」
「だーかーらあ!自分でできますってえ!」
「却下ー。俺達、お前に火は触らせないように言われてんの。」
「はああ!?何すかその信用の無さ!」
「そういう台詞はもうちょい信用されるようになってからにしろい。この前もよそ見しててボール踏んで転んだじゃねえか。」
「う・・・」
「その前は家庭科で指切ったとか言ってたし?」
「指!?だ、大丈夫だったんですか!」
「大丈夫っす!大丈夫っすから・・・っていうかそんな事までバラさなくて良いじゃないっすかあ!」

ぐうの音も出ない正論だが、扱いが完全に子供過ぎてどうしても不服なのは隠せない。
幼児じゃないんだぞ。

「ほら。」
「うー・・・」
「あ、丸井君。私出来ますから・・・」
「良いって。赤也じゃねえけどお前もスカート危ないじゃん?」
「・・・今度からパンツにします。」
「ダーメ。」
「駄目!?」
「駄目なんすか?」
「スカートのが可愛いじゃん?」
「か・・・」

夜でも分かるくらい真っ赤になる先輩。
いやでも、これは切原自身頷ける。自分もどっちかというと好きな女の子にはスカート履いてほしい。いや、別にパンツルックが嫌なわけじゃないんだけど、いつもパンツよりはいつもスカートの方が良いなあ。

(あ、でも!紀伊梨先輩、よくテンション上がって飛んだり跳ねたりすっからスカートも・・・んー、俺にだけスカートに見える秘密道具とかあれば良いのによ!)

あったとしてそんな目的では、さしもの青い猫型ロボットでもそれこそ却下するであろう。

「・・・わかりました、じゃあ。」
「じゃあ?」
「・・・は、履いたことないですけど、タイトのミニなら大丈夫で」
「「絶対ダメ!」」

色んな意味で一番危ない選択肢である。
春日先輩はどうもこういう所がある。勉強あんなに出来るのに、なんでこういう所ポンコツなんだろう。

「じゃあ何を履いたら良いんですか・・・!」
「今ので良いんだよ。それで、こういう事は俺に任せておいたら良いの。」
「でも・・・」
「なら代わりに御苦労様のキスでもくれよ。」
「え、」
「嫌?」

切原は丸井のこういう所が、言いはしないけれど凄えなと思っていた。
あの部長もそうだけれど、自分が得する方向への話の持って行き方が鮮やかすぎやしないだろうか。

良いよなあ、俺も同じように出来たら良いのに。
と思いつつ、どうも上手くいかないというか自分はこういうのが下手だ。

「・・っつうか!あんたら俺をダシにしていちゃつくのは止めてくださいよ!」
「あ!いえ、あの、ごめんなさ「ダシにされたくねえんだったら、火くらい自分で点けれるようになれよい。」
「点けれるっての!渡してくれねえのそっちじゃないっすか!貸してくださいよ、やりますから!」
「ま、待って!待ってください、チャッカマンなんて取り合いになったらそれこそ危ないーーーーー」






「・・・っぶねえ!」
「・・・あ?」

薄目をあけると、友人はまだスマホを握りしめていた。
データ残るところだった・・・と呟いているあたり、まだマラソンは終わらないらしい。誤タップするほど疲れてるなら切り上げれば良いものを。

「って、あー!チャイム鳴った!」
「ふあ・・・鳴ったんだから席戻れよ。」
「おう!又昼な!」
「おう、昼・・・昼だあ!?昼もやんのかよ、おい!」