「マジかよ・・・」
「マジだよ。」
なんで右手で箸扱いながら左手で人のスマホポチポチしないといけないんだろう。
知るかよもう、知るかよ!と思いつつやってあげる切原は、短気ではあるがなんだかんだ情に厚いのだ。
「さて・・・あー。モカちゃん・・・3回目・・・」
「まだやんのかよー・・・」
「えー?モカちゃんで手を打つか?うーん確かに悪くはないんだよなーモカちゃん。クールビューティーで、心を許した人にだけ見せる乙女な一面が・・・お前本当に興味なさそうだな?」
「なさ”そう”なんじゃねえよ!ねえの!実際!」
モカちゃんだかラテちゃんだか知らないからもう勝手にしてくれ、と思いながら両手を合わせて御馳走様。
さ。
「おやすみ!」
「ええええ!?」
「もう手伝っただろお!飯食う間だけな、って約束だったじゃねーかよ!」
「早食いすぎだろ!」
「知らねえよ!」
「ちょっと待てもう一回だけ!なあーーー」
もう一回!
もう一回!
もう一回・・・
切原。
「ほら。」
「え。」
「もう一回だけやったら。」
ふと我に返った途端、耳に流れ来る音の洪水。
目の前の黒崎先輩がピン、と何かを弾いて咄嗟にそれをキャッチ。
100円玉だ。
「あ・・・あざっす!」
「その代わり今度こそ決めなさいよ。」
「出来るか・・・?」
「ちょっとお!不吉な事言わないで下さいよ、ジャッカル先輩!」
「心配しなくても取るわよ。ね。取れるわよね、勿論。当然。」
「ぐ・・・あ、当たり前っすよ!」
此処はゲームセンター。
目の前のクレーンゲームの中には、俗にピンクの悪魔と呼ばれる、あの丸っちいボディのあいつのぬいぐるみが穴の手前で鎮座している。
くっそ、こっちの気も知らないで呑気な顔しやがって。
あまりに取れなさ過ぎて(つまり小遣いを吸われすぎて)一周回って嫌いになりそう。
紀伊梨先輩があんな笑顔で可愛いとさえ言わなかったら、お前なんかもう欲しくねえよ、ふんっ!で済むのに。
「あんたも変なところ頑固よね。」
「まあまあ、気持ちは分かるぜ。出来るもんならプレゼントしたいじゃねえか。」
「出来るなら、でしょ。出来ない可能性の方が高いのによくやるわ。」
「ううん・・・でも、取れないわけじゃないだろ?」
「そうでもないわよ。兄貴が言ってたけど、こういうのって先ず基本の成功確率が数%くらいで、何回かに一回くらいのペースでそれが上がるタイミングがーーー」
「可能性とか確率だとかそういう話も止めて下さいよ!そういうの頭痛くなってくるんすよ、参謀相手にしてる時だけで十分すぎますって!」
「えええ・・・」
お前に関係ある事なんだから聞いておけよ、という桑原の言うこともわからないじゃないけど。でも聞いてもきっと分からないだろうから、それなら分からないこと聞いてテンション下がった状態で挑むより聞かないで居たい。
「ふう・・・おし!見てろ、今度こそ取ってやるからな!」
「赤也・・・言いにくいんだがその台詞、」
「私ら聞くの今日4回目なんだけど。」
「・・・良いんすよ、そういう細かい事は!」
チャリ、と硬貨が落ちていく音。
プレイ回数の所に1の文字が映り。
ボタンを押して、アームを左へ。
左へ。
もうちょい左へ。
もうほんの気持ち左へ。
そして次だ。
奥へ。
もうそこまで来てるから、あまり奥へアームを進ませすぎても駄目。
何か目の色変わってない?
あ、まずい・・・
そんな会話が背後から聞こえて来てる気もするけど、今の自分にとっては店内BGMと一緒である。
今かなり真剣なんだ、外野にかかずらっていられない。
来い。
来い。
来い。
「・・・来い!」
「来ねえー!」
「・・・・んあ、」
うがああ!と叫びながら雄叫びを上げる友人。
机に置かれたスマホには、多分4回目のお目見えになるSSRモカちゃん。
別にモカちゃんは何も悪さしてないのにな。
嫌われて可哀想に。
「・・・別にリセットしたら金かかるわけでもねえのに。」
「それよ!」
「あ?」
「なまじだよ!なまじ金がかからないから、止め時見失うのよ!時間ならつぎ込めるから!つぎ込む事が出来てしまうから!」
「あー、そーかよ。」
「ってわけで。」
「あ?」
「放課後もよろ!」
「ふざけんな!」