「3人共、結構遅いね。」
「紀伊梨でしょ。」
黒崎千百合と幸村精市は、門を潜って直ぐの所で、木に背を預けて立っていた。
少し離れた所にはクラス名簿の掲示板と、それを見ようとする生徒達。
クラス発表一緒に見ようね、なんて言う紀伊梨の口をナチュラルに棗が塞いで、紫希が目そらししながら話をはぐらかしたのはついこの間の話。
(何か企んでんなと思ってたらこういう事だったわけ・・・)
要するに、自分と幸村を2人にしようとしていたわけだ。
確かに自分達は一応、お付き合いというものをしている間柄ではあるけれど。
(別にそんな気使わなくたって、)
良いのに。
そう思って、不意と隣の幸村を見た。
(綺麗・・・・)
気まぐれに舞い落ちる桜が木陰の幸村を取り巻く様は、なんだかよく出来た絵画か何かのようだ。
「うん?」
「・・・・・・別に。」
相手が気づいて振り向いたので、すぐさま顔を逸らす千百合。
千百合は時たま、幸村の整った顔立ちが憎らしくなる。
普通にしていても十分綺麗なのに、この男は自分を見る時なんとも言えない優しい目で自分を見るから、恥ずかしくて堪らない。
「どうしたんだい、千百合?」
「・・・どうもしないから、あっち向いててくれない?」
「どうもしないなら、どうしてあっちを向かないといけないのかな?」
「私はあっち向いてて欲しいんだけど。」
「それは困ったね。俺は千百合を見ていたいから。」
「~~~~~~!」
詰将棋みたいな誘導をしやがってこの馬鹿。
こういう事を平気で言うから、千百合はなかなか幸村を正面切って見られない。
2人の時は特に。
「・・・精市の卑怯者。」
「そうかい?」
「そんな事ばっかり言うから、私は精市の事あんまり見られないんじゃない。私だって精市の事見てたいのに。」
「!・・・・・・そ、そう、なんだね。」
あっちを向いている千百合は、幸村が何時もの涼しい顔を崩して赤くなっている事など知る由も無い。
「あ、千百合とゆっきーだー!」
良く通る明るい声。
千百合と幸村はお互いを意識から束の間外して、校門を今正に潜り抜けた3人を見やった。
「おはよ。」
「おはよう、3人共。」
「おっはー☆」
「おはようございます、千百合ちゃん、幸村君。」
「おっすー。ごめんね邪魔して。」
今此奴はごめんね邪魔してと言った。
やはりわざとだったか。
「てめえ帰ったら100叩きだかんな。」
「怖ー。妹が怖いよー。お兄ちゃん泣いちゃうよー。」
「まあまあ!罰がキツいって事は、それだけ千百合とゆっきーがラブラブ出来てた証っすよ☆」
「・・・・・・」
「あだだだだだだだ!止めて!髪の毛引っ張らないで!」
「まあまあ千百合ちゃん、その辺で・・・ね?そ、そうだ!クラスはもう確かめたんですか?」
「まだだよ。五十嵐が言ってただろう?クラス発表一緒に見ようねって。」
「おお!ゆっきー、やっさすぃー!」
「・・・って、千百合が言うから俺も待つ事にしたんだ。」
「ちょっ・・・!」
余計な事を言わなくて良いのだと千百合が言うより、喜色満面の紀伊梨が飛びついてくる方が早かった。
「マジすか!千百合ー!千百合っちー!」
「ウザい!抱きつくな!離れろ!」
「・・・・・・」
「・・・紫希?来たいなら来て良いから。」
「紫希ぴょんも混じる?それっ!」
「あ、わ、わ、」
3人で団子になってぎゅうぎゅうひっつく女子中学生3人。
「微笑ましいねー。」
「そうだね。・・・ちょっと春日と五十嵐が羨ましいけど。」
「へえ。?お前でも人を羨む事があるんだな。」
恋ってすげえね。
棗の言葉が溢れたと同時に、また桜がひとひら舞った。