こういう時紀伊梨は決まるのが早いが、実は紫希も結構早い。
紀伊梨とは逆方向でイメージを固めているからだ。
「それは止めたら?何か子供っぽいし。」
「そ、そうですか・・・」
「紫希ぴょんこれとかどおー?」
「あ、ち、ちょっとそれは・・・」
「この色やったらこっちもあるで、紫希ちゃん。」
「あ、ええ、そうなんですけど・・・」
「・・・なあ春日さん。」
「はい?」
「もしかしてビキニ嫌なん?」
その通り。
紫希はビキニを着たくない。恥ずかしい。とても無理。自分に着こなせる代物じゃない。
「えー、なんでー!?ビキニ可愛いよ、ビキニ着ようよー!」
「いえ、でも、」
「何か着られへんのん?お腹に傷とか?それともビキニがただ嫌いなんやろか。」
「いや、嫌いじゃないよ。ビキニ可愛いとは人並みに思ってるし。あれはただ、恥ずかしがってるだけで。」
「うーん・・・」
恵里奈は暫し考える。
「・・・紫希ちゃんは、ビキニの何が恥ずかしいん?」
「え?」
「スタイルに自信があらへんねやろか?もしかして泳がれへん?肌を見せるのが嫌?」
「そ、それは全部ちょっとづつ理由のうちですけど・・・」
「ほんなら何が一番嫌やろ?」
「・・・私がビキニを着て、それで誰が得するんだろうって思ってしまうんです・・・」
恵里奈は目を見開いた。得。得と来たか。
「えー!?得だとか損だとかそんな事考えないで良いよー!」
「で、でも私可愛くもないですし、見苦しいですし、笑われそうで・・・」
「笑うような奴居らへんと思うで。」
「ていうか私も紀伊梨も別に誰かに得させてるわけじゃ、」
「えー?ゆっきーは得するっしょー。」
「・・・・・」
「まあ五十嵐さんもナンパされてるいう事は、その人らに得させてるわけやしな。」
「・・・・よし、分かった!」
恵里奈は手を叩いた。
「ちょっと待っときや、持ってくるさかいに。」
「先ずこれやろ?」
恵里奈はビキニを一着紫希に差し出した。
「え、でも、」
「まあまあ、待ちいな。本題は此処からやで、これを着た上で。これを。こう・・・する!ほら!」
「・・・・・・!」
「おお!」
「・・・なんちゅうかこれは。」
「ほぼワンピースじゃん。良いんじゃない。」
「紫希ちゃん、どない?これでもあかん?」
「あ、いえ!これなら・・・」
「せやろ?で。もしビキニ着てもええなって気になったらこれを今度は・・・こう。」
「わ・・・」
「おおおお!可愛い、良いよ良いよー!紫希ぴょん最初からこれで行こうよー!」
「無理です!」
「えー!」
「でもまあ、落としどころとしてはええんとちゃうやろか。」
「いや、これはかなり良いと思う。スイッチが楽だし。」
スイッチできるという点では他の型のもスイッチできるけど、気楽さがこっちと全然違う。こっちの方が便利だし、その気になった時に怯まずに済むだろう。
「後は、彼氏を作る事やな。居る?」
「え!?い、いえ居ませんけど・・・」
「彼氏居た方が良いのー?」
「彼氏が居ったら、少なくとも一人は紫希ちゃんのビキニで得するわけやから。いっぱい褒めて貰たら、ビキニもそない恥ずかしくならへんで。」
「そういうもんなん?」
「そういうもんやて。もしなんやったら、誰か男子の友達1人選んで、頼んでめっちゃ褒めて貰たらええわ。」
「いえ!そこまでしなくても・・・」
「紫希。」
「はい?」
「当分ビキニ姿で着るのは止めとこ。」
「あー!なんでそんな事言うの千百合っちー!」
なんでって気に入らないし疲れるからである。
そんな話の流れになってみろ、誰が選ばれるかなんて話を持ち出す前から分かり切ってるようなものよ。
別に友達と仲良くなる分には全然良いけど、友達以上の事を思ってないくせに友達以上のような行動を取られるのは、千百合は甚だ遺憾である。見ててイライラするから。なんだよお前、その気があるのかないのかはっきりしろよ。無いなら人の事振り回してんじゃねえ。
「良いもん!紀伊梨ちゃんが頼んじゃうもん!紫希ぴょん誰が良いー?」
「しなくて良いです!しなくて良いですから!」