「ほんまに有難うな。」
一言だが含まれる感情は切実である。
「えー、なんでー?おっしーが紀伊梨ちゃん達の事連れてってくれるんっしょー?」
「いや、そうやねんけど。」
「苦労してるわね、あんたも。」
忍足は水着の買い物を終えた後、3人を次の目的地まで連れていくという名目で姉の買い物の同伴を逃れたのであった。良かった。助かった。地獄で仏。
「あ!ねーねーそーいえば、おっしーが居るって事は可憐たん達もお休みだよね!お茶しよーって連絡しよ・・・」
「今日はマネジミーティングやから、可憐ちゃん達は休みとちゃうねん。残念やけど。」
「えー!そんなー!てゆーかマネージャーさんにミーティングなんて必要なのー!?」
「いや、立海もちょくちょくやってんじゃん。」
「え?いつ?」
「はあ・・・・」
「・・・・・」
紫希はほんのちょっと後ろを歩いて、前を行く3人の背を見つめる。
(・・・今は普通ですよね、千百合ちゃん。)
じゃあさっきのは偶々疲れてたとかそういう事だろうか。
いやでも、ついこの間も似たような違和感を覚えた気がする。どこでだっただろう、でも確かに先日も・・・
「紫希ぴょん!聞いてるー!?」
「!は、はい!すみません、なんですか?」
「先に昼にしよかいう話しててんけど。」
「どうしたの?疲れてる?」
「い、いえ!大丈夫です!ごめんなさい、ちょっと考え事を・・・」
「まあ、大丈夫なんやったら行こか・・・て、ごめん。ちょっと電話取らしてな。」
鳴った携帯を手に取ると、岳人と登録されてる名前が出てくる。
珍しい、大した事の無い用事ならメールで済ませるのに。
「もしもし?」
『もしもし、侑士?なあ、お前今日は姉ちゃんと買い物居るんだよな?』
「ああまあ、今逃れたとこやけど。」
『マジ?なら暇してたらでいいから手伝ってくんねえ?』
「・・・お店の話?」
『じゃなくて、ジローが迷子になっちまったみてーでさ。』
「・・・どこで?」
『どっかで。』
「・・・・・・」
『どっか。』
「・・・・・・」
向日がどっか、としか言わない時は本気で行動範囲が絞れない時である。
都内に留まっているかどうかすらも分からない、そういう時だ。
『だから見かけたら連絡くれよ。序で良いから。』
「まあそれはええけど・・・」
自分は良いけど、今自分は一人じゃないのだ。
忍足から気づかわし気な視線を向けられて、紀伊梨はピースサインをした。
「良いよ良いよー!ジロっちの迷子作戦、お付き合いいたいしゃす!」
「はーあ・・・」
「まあまあ、しょうがないですよ。やっぱり心配ですから。」
「堪忍な。」
『堪忍?』
「あ、いや。こっちの話やねん。それより、跡部にはもう頼んであるん?」
『それなんだけどよー・・・』