「ああ言うたけど、別に普通にしといてくれてええで。」
紀伊梨の希望でパンケーキが昼食になった4人は、モールを離れてほど近いカフェにいた。
「普通と言いますと・・・」
「別に、頑張って探さんでええで。居らへんかな、ってなんとなく見といてくれるだけで。」
「えー!でもでも、ジロっち迷子なんっしょー?それなら探そうよー!」
「気持ちは嬉しいねんけど、範囲が広すぎんねん。モールの中で迷子とかならローラー作戦もええねんけど、東京にまだ居る確証もあらへんさかい。」
「壮大な迷子ね。」
「迷子いうか、厳密に言うたら行方不明やな。方向音痴なわけやないし。」
芥川は起きてその気にさえなっていれば、一人で大抵行きたいところに行って帰ってくることは出来る。
問題は先日ショップに行けなかった時のように、一人じゃないと人任せになる事。
そして何よりも、所構わず寝る事。
公園のベンチとかに居てくれれば良いのだが、路上で寝てる可能性もあるので事故が怖い。何より、バスや電車に乗るともう手が付けられない。終点までノンストップで眠ってしまうから、起きた時には県を2つ3つ4つ動いてるなんて良くあること。
「行先は分からないんですか?」
「それやねんけど、ちょっとややこしい事になってんねん。なんや出かける時に、「跡部に言われたから行ってくる」言うて出て行ったらしいねんけど。」
「じゃーべ様はどこ行ったか知ってるのー?」
「それが知らへんらしいわ。親御さんも跡部が居るなら安心やて思うてたらしいねんけど、昼前に迷惑かけてないかて連絡したら、何の話ですかて言われたて。」
「跡部が約束忘れてんの・・・って、彼奴はそんな事しないか。」
「日付の勘違いでしょうか?」
「どれもちゃうねん。跡部はどこかへ行こうて誘ったことも、呼び出しもしてへんて言うてるし。」
じゃあなんで跡部の名前が出てくるのか、そこからしてそもそも解せないのだが、時すでにお寿司。唯一事実を知っている本人は、もうどことも知らないところへ旅立ってしまった。
「携帯はー?」
「鳴らしてるけど、この程度では起きへんわ。まあ何かの奇跡で起きた時のために、着信は残しとくけどな。」
「駅に連絡は・・・」
「それは一応、もうしてあるわ。期待率は3割言うとこやけど。」
「GPS付けた方が良いんじゃない?携帯とか財布とかに。」
「・・・・それも難しいねん。わけあってな。」
「「「?」」」
本人の名誉のために今伏せたが、正直芥川にGPSはあまり意味がない。
携帯や財布を睡魔に負けてどこかに置き忘れるのなんて日常茶飯事だからだ。
普段だって貴重品どころかジャージの短パンを履き忘れてトランクス一丁で練習してたりするくらいなのに。
「普段、生活してる時も学校で眠られてるんですか?」
「せやで。起きてる時は起きてるし元気やねんけど、いかんせん持続力がどうしてもな。長い間そのテンションを保ってられへんいうか、ちょっとつまらんと思うたらすぐ眠気に負けてまういうか・・・本人に悪気はないし、ええ奴やねんけど。」
「あーなんか、紀伊梨に似てるわその辺。」
「えー!?そんな事・・・・ちょっとはあるかもだけどー!」
「まあ取り敢えずそういう事やから。話戻すけど見かけたら教えてくれるくらいでええし、3人とも元々の用事があるんやろ。そっちの方優先してくれて構わへんで。」
「よーじかー。でももー水着は買っちゃったから、ミッションその1はコンプリートしました!」
「後は浴衣ですね。」
「あーやだ。水着より断然荷物になるじゃん。」
「・・・浴衣?」
「何?」
「あ、いや・・・なんやこないだ、どっかで浴衣売ってるとこの話聞いた気がすんねん。」
「おー!どこどこ?おっしーのお勧めですな!」
「お勧めとはちょっとちゃうけど、どこやったやろか・・・」
どこで誰から聞いたんだっけ。
頑張って記憶を手繰っていくと、今さっき電話してた友人の声が蘇った。
「・・・あ。思い出した、商店街やわ。」