忍足の思い出した商店街というのは、向日達の店や家が立ち並ぶ所謂地元の商店街である。
向日達は生粋の地元人で、親がどこでどんな風に働いてるかよーく知っているので話をしていると商店街は度々登場する。
「とーきょーにも商店街ってあるんだねー!」
「?無いと思うてたん?」
「あーでも23区にはもうないってイメージはあったかも。」
「今はもう、段々モールに代わっていってますから・・・」
「ああ、確かになあ。」
言われてみれば自分の地元も商店街は少なくなったっけ。
「でもきょーとは商店街まだまだいっぱいあるよね!」
「大阪もまだあるって聞いた事あるけど。」
「せやで。よう知ってるな。」
「えっへん!紫希ぴょんのおじーちゃんとおばーちゃん、京都に住んでるから知ってるんですよっ!」
「偶に私ら遊びに行かせて貰うしね。」
「・・・そうなん?春日さん、田舎は京都なんやな。」
「はい。忍足君と違って、長い間住んでたとかそういうわけじゃないんですけれど。」
「どこに住んではるん?」
「ら・・・桂、です。」
忍足はその返事に一瞬目を細めた。
分かるよ。偶に口ついて出てくるよね。
「でも、それでもやっぱり昔よりは減りますよね。」
「せやな。時代の流れやわ。」
「へー。モールも商店街もどっちも建てたら良いのに。ねー、千百合っち!」
「私通販があれば良いや。」
「もー!って、あー!あったあった、商店街だー!」
商店街の多くは、屋根や看板とかでそれとなく「此処から先が商店街の範囲ですよ」と教えてくれる。「キキョウが丘商店街」の看板を掲げた商店街は、今も尚なかなかの賑々しさが入り口前からも伺える。
「よーし!じゃあ浴衣目指して、レッツ・・・」
「・・・五十嵐?」
「ほえ?あ、亮ちゃん!」
「その呼び方止めろ!」
商店街前を偶々横切ったのは宍戸であった。
「宍戸やん。」
「あ、忍足にお前らも・・・なんか珍しいな、桐生無しで揃ってんのって。」
「まあいろいろ、偶然と成り行きやな。」
「浴衣買いに来たんだよー!亮ちゃんもお買い物?」
「亮ちゃんは止めろ!激ダサとかいうレベルじゃねえ!」
男に「ちゃん」づけがそもそもどうかと思うし、何かイントネーション的に某繋がり眉毛の警官になったみたいで凄く嫌だ。
分かって貰えないだろうかこの男心と思う宍戸だが、そんな繊細な性格してるなら紀伊梨は今よりもう少し落ち着きのある女子になってるだろう。
「ったく・・・そうだよ、俺も買い物だ。今から行くところだけどな。」
「商店街ですか?」
「いや。俺が用があるのはあっち。中古のCDショップがあるんだよ。」
「・・・中古の・・・」
「・・・・CDショップねえ。」
「な、なんだよ。何か悪いのかよ?」
「結構悪いわよ。」
「はあ?」
ねえ又今度にしなよ、と千百合が言う前に紀伊梨の瞳はもう輝きだす。
「紀伊梨ちゃんも行くーー!行きたーーーい!行こーーー!」