For dive 2 - 7/7


「私これで良いや。」
「じゃあ私はこれで・・・」
「よっしゃー!決まった決まった、これで8月は準備バッチリで夏祭りに行けますなー!」

帯から何から本当に一式合わせて決めて、それなりに時間はかかったけれど紀伊梨はご満悦である。

「夏祭り?」
「うん!紀伊梨ちゃん達、夏休みになったら夏祭りに行くんだよ!」
「毎年行ってるんです。皆で浴衣を着て。」
「それってテニス部の奴らも?」
「うん!部活の後でも間に合うって言ってたお!」
「お疲れでしょうから、あまり長い時間は楽しめないかもしれませんけれど・・・」
「まあこうでもしないと彼奴ら夏の間何処へも行けなくなりかねないし。自分達でもそう言ってるしね。」
「「・・・・・・・」」

それは忍足や向日達、氷帝勢も同じである。
夏は詰め、それは分かっている。夏を制する者は受験を制すると言うが、部活でもそれは同じだ。夏の間いかに心血を注いだか?時間を使ったか?それが如何に重要なポイントか、部活に打ち込んでいる者にそれが分からない筈がない。

ただ。
それはそれとして、ちょっとくらいは遊びたいよっていう心理だって中学生は皆持っている。
夏だぞ、夏。
授業がある間は出来ない事行けない所、あれやこれや。

だから夏の間どこへも行けなくなりかねない、という千百合のコメントは結構2人の胸にぐっさりと刺さる。
立海は自分達を超えるブラック部活だからと聞いてはいるけれど、氷帝だって練習量は別に少ないわけじゃない。

「俺らは百歩譲ってええとしても、マネジの人等は輪をかけて気の毒やなあ。」
「くそくそ、もうちょっと休みくれても良いじゃねーかよ!」
「ひょーてーもやっぱりお休み少ないのー??」
「そっちよりは流石に多いと思うけどな。それでも少ないとは思うわ。」
「お前らは休みあんのかよ?」
「ビードロズは毎日お休み!です!」
「練習もするわよ。合宿もあるし。」
「でもやっぱり、楽しいことが最優先ですから。グループの方針として・・・」

リーダー・紀伊梨は楽しいこと以外やりたくない。
ガツガツ練習を詰め込むくらいなら、遊びに行った方が良い曲や良い歌詞がきっと出てくるからそうしようぜというスタンスでビードロズはずっとやってきた。

又、本人には言わないが紀伊梨の為にも遊ぶことを疎かにしてはいけないと、この場に居ない棗を含む3人は考えている。
時間の限り遊ぶことも含めて、「今しか出来ない事」の内だ。

3年しかない。
高校生活が始まった時にはもう、今と同じではないのだから。

「って考えると、やっぱ可憐とか茉奈花って可哀想よね。」
「う!」
「そーだよねー!マネージャーさんだって遊びたいって思う時あるよー、絶対!」
「分かってんねん。俺らもそれはよう分かってんねんけど。」
「しょうがない気もしますけど・・・」

なんか矛盾しているようだが、マネージャーの本分は人のサポートなのである。
部員に尽くすのがマネジの仕事だ。
しかしだからと言って、俺達の事手伝う為に毎日部活出てこいよと言うのはやっぱり部員としてはちょっと心苦しい。マネジだって部員なんだから出てきて当然というのも正論だが、それはそれとして。

「せめて人数揃うてたらなあ。シフト制にでも出来たかもしれへんけど。」
「無理無理!今だって普通に回してるだけでひいひい言ってんのに出来るわけねえよ!来年にでも期待しててみそ。」
「氷帝も、マネージャーさんが足りないんですか?」
「もしかしてそっちも居らんのん?」
「何か足りないっぽいよー?」
「今臨時で人呼んで、自転車操業してるらしいけどね。」
「忽ち足らんのん?大変やな。」
「ひょーてーはお手伝いさん集めないのー?」
「それも無理なんだよなー、うちは。」

そもそも部員の数が違う。
数が違うから規模が違う。
規模が違うからてきぱき動いてくれないと話にならないし、臨時で雇った人にあれやってそれやってああしてこうして・・・なんて手とり足とり教えていられないのだ。

それに、氷帝はあの膨大な人数をカバーするために普通はマネジに任せないような事まで任せている。
スコアやボール拾いくらいならいざ知らず各メニューの準備なんて、テニス部マネジの経験があった人を連れて来られたとしてもサッとは馴染めまい。

「マネージャーさんって凄いですよね。」
「それはほんまにそう思うわ。」
「俺達って、体は動かすけど考えることは少ねーもんなー。段取りとか気にした事殆どねーし・・・」
「そーなんだー。うん、やっぱり紀伊梨ちゃんにはマネージャーはちょっと出来ませんな!むつかしそー!」
「やっぱり、向き不向きっていうのはあるんでしょうか?」
「そりゃ、あるんじゃないの。要領悪いとか物覚え悪いとか、人が見てないとだらけるとかさ。」
「いや、まあ。見てないとだらけるいうのは論外やけど、要領と物覚えはやる気で十分カバー出来るさかい、気にせんでええと思うで。」
「そうなんだ。」
「ねーねー!じゃあじゃあ、マネージャーさんに向いてる人ってどんなのー?」

忍足の脳裏に、今居るマネージャー達の顔がざっと蘇った。


「・・・部の全部が好きな人、やろか。」