無事一式買い揃えられた一同は、向日と忍足と商店街で分かれて今は駅に向かって歩いていた。
「はーあ・・・」
「やっぱり重いですよね・・・」
「暑いー!疲れたー!」
水着は兎も角、浴衣は一式買うとかなり嵩張る。
浴衣本体に、帯に下駄にアクセサリーにと諸々購入するとかなりしんどい。
「ねー、もータクシー拾おー!それか休憩しよー!お茶したいー!」
「お茶はさっきしたでしょ。」
「ううん、でもタクシーは考えても良いかもしれません・・・まだ駅は遠いですし、この荷物の量は・・・」
「まあ、コスパは良いかもね。」
中学生なんだしタクシーは少々贅沢だが、3人で割り勘出来る上に涼しくて荷物をふうふう言いながら運ばなくても良いという点でタクシーはとても良い案に思えた。
どうする?本当に呼ぶか?な雰囲気が3人の間に漂い始めた頃。
一台のバスが通り過ぎた。
「・・・居た。」
「「え?」」
「ジロっちだー!乗ってたー!」
「「・・・・ええええ!?」」
完全に不意をつかれた。
見つかれば良いなと思っていたけど、こんな疲労してる時に見つかったって追うのもままならないじゃないか。
「バ、バス・・・!ああ、行ってしまいました・・・!」
「何処行きかとか見てた、紀伊梨?・・・って!」
「待てーーーー!」
もう遅かった。
紀伊梨は浴衣をその場に置いて駆け出してしまった。
勿論人間がバスに追いつけるわけがない。
そして、それはそれとして紀伊梨の足に紫希と千百合は追いつけないのだ。
「紀伊梨ちゃん!紀伊梨ちゃん待って、行っては駄目です!紀伊梨ちゃ・・・あああ・・・!」
「くそ!迷子増えただろうがあの馬鹿!」
紀伊梨は携帯を持っているが、紀伊梨1人の状態ではそれはあまり役に立たない。
走っている間は携帯など見ないだろうし、見る頃には連絡は取れてももう「此処は何処?」状態になってしまっているだろう。
急いで追いかけようにも追いつけない上に、紀伊梨の浴衣まで一緒に移動させねばならず余計に残された2人の動きは重くなってしまう。
「どうしろってのよ・・・」
「と、取り敢えず電話はしてみます!運が良ければ気づいてくれるかも・・・」
そうは言っても、まあ無理だろうという事は2人共分かっていた。
これはもう逆に2人で先に駅まで行ってしまって、ロッカーに荷物を入れつつ紀伊梨が体力の限界で足を止めるのを待つのが最善まであるな、と焦りながらも半ば諦念気味に2人揃って思わず俯いてしまった。
その時。
「おい、どうした?」