Booty 1 - 3/7


「でさ、アレ?」
「ちょっと何この人だかり!」
「どうしよう、これじゃ教室まで行けないよっ!」

上履きに履き替えて廊下を進む4人は、人の群れにあっさり通せんぼされた。

「誰か一発芸でもしたのかな~。」
「いや、それはないと思う。」
「でも困っちゃうよっ。どうにか通れないかな、」

「あ、可憐!」

人だかりの外側に居たクラスメイトが、輪から外れて4人の元に来た。

「可憐、今来たの?聞いてた?」
「えっ、えっ、えっ?何がっ?知らないっ!」
「あ、聞いてなかったんだー!あのねー、何かバスケの2年の先輩が来て、忍足君に喧嘩売ってんのよ。」
「ええっ!?」
「あ、殴ったりとかじゃないよ?今日の水泳大会で勝負してー、勝ったら網代?茉奈花ちゃん?っていう子をデートに誘う許可が欲しいんだって!」
「ええええええっ!?!?」

パニックになる可憐の後ろで、伊丹達3人は瞬時に「ああ、そういう話・・・」な空気になる。

「網代さんって誰?マネジさん?忍足君の彼女?」
「あー、イヤ・・・」
「まあ、彼女ではないけど?」
「う~ん、ぶっちゃけ時間の問題っぽい子かな~って。」
「へー!そうなの、可憐?・・・あれ、可憐?可憐?おーい!」

(あわわわわわ)

どうしよう。どうしたらいい。自分は何をどうするべきなんだ。







慌てふためく可憐をよそに、人だかりの輪の中心に居る忍足は息を吐いた。

「・・・ふう。」

落ち着いて。
落ち着いて。

突っ込みどころが多い・・・というより最早突っ込みどころしかないけれど、混乱してはいけない。ちゃんと聞く事聞いて、言う事言わないと。

「・・・あの。」
「おう。」
「茉奈花ちゃんの事デートに誘いたいんですよね?」
「おう。」

これだけで、もうざわめく。
きゃー、とか聞こえてくる。

「俺と勝負する理由どこにあるんです?」
「だって網代さんを彼女にしたいんだったら、まずお前を倒すのが先決だろ、って部活の奴に言われて。あれだろ?今お前が、網代さんの彼氏最有力候補なんだろ?」
「誰に聞きはったんですか?」
「え、誰にっていうか・・・噂?」

(頭痛(あたまいた)なってきた・・・)

どうしようこれ。
すんごい困るのだが。

いや、ある意味困らない。
だから困る。

「さあどうする?受けるのか?受けないのか?」

(誰かの入れ知恵なんか知らへんけど、これもやらしい話の切り出し方やな)

この状況で受けませんと言う事が、どんなに自分のこれからを傷つけるか。
勝負から逃げた臆病者のレッテルを貼られて、これからずっとやっていけって?冗談はよしてほしい。

かといってじゃあ受けるのが正解かと言われると。

「・・・・・」






「うわあ・・・」
「詰め寄り方きっついよね~。」
「ど、ど、ど、どうし、どうしよう、」
「オチツケって・・・まあ無理かこの場合。」
「どうし、どうし、あ!向日君だ、向日君!」

「ん?ああ、桐生!」

誰か助けてくれそうな人は、と辺りを見回すと少し離れた所に向日がいた。
鞄を持って怠そうにしている辺り、向日も教室に向かうに向かえなくて、面倒な思いをしているらしい。

「向日君っ!ねえどうしよう、どうしようどうしたらっ!」
「どうしようって・・・どうしようもなくね?」
「えええ!」
「しょうがねーだろ、侑士の話なんだから!」
「そうだけどっ!」
「大丈夫だよ!侑士は頭良いんだ、別に悪いようにはならねーって!」

そう、忍足は頭良いのである。
何かしてやりたい気持ちもわかるけど、自分達が知恵を出すより、忍足が自分で考えて結論出した一手の方が、絶対賢いはずなのだ。

後ぶっちゃけ、向日としてはなるべくこの問題に近寄りたくない。
ややこしい話は嫌いでして、はい。

と。
思っていたのに。




「おい!さっきから、お前は一体なんなんだよ!」


「あっ!宍戸君の声だっ!」

(亮・・・!)

なんでだよ、なんでそうやって口出ししちゃうんだよと思いつつ。
分かってる、宍戸はこういう性格だ。