Booty 1 - 7/7


「なんかタイヘンな事になっちゃったなー!」
「どっちが勝つかな~?皆、ジュース賭けない~?」
「あんたは楽しそうね、朝香・・・」
「楽しんでる場合じゃないよっ!ああもう、どうしよう・・・!」

可憐は頭を抱えていた。

結局勝負は目の前で決行される事に決まってしまったけれど、自分は一体どうしたものやら。

「別に良くない~?」
「朝香!いい加減に、」
「でもさー、アタシは朝香の言う事も分かるよ?だってかかってんのは、デートに「誘う権利」じゃん?網代さんが断れば済むじゃん。」
「そ~そ~。別に何が減るわけでもないんだしさ~。」
「そりゃあまあ、そうかもだけど・・・」

(違うよ皆、減るんだよ減っちゃうんだよ・・・!)

そりゃ確かに、お金賭けてるだとか強制デートだとか負けたら今年の夏は丸々バスケ部の助っ人になれだとか、そういう事言われてるわけじゃない。

でも減る。
好感度と言う名のパラメータは絶対減ると思う。

そもそも忍足は向日の言う通り賢いから、要らない喧嘩は買わないしどうでも良い勝負はしない。それこそ恰好がつくとかつかないとかで、こんな不利な勝負に乗って来るような性格してないのだ。

じゃあなんで今回あんな理由で勝負を受けたのかと言ったら、それはやっぱり網代の件だろう。他の皆には分からないけど自分には分かる。

自分だけがはっきりと知っているのだ。
忍足が網代を好きだって。

勿論向日や網代がそう思っているように、可憐だって忍足側になんらかの勝算があるのだろうとは思ってはいる。
思ってはいるけど、宣戦布告が今日じゃ忍足は何の準備も出来ていやしないだろう。
正直勝てるかどうかはかなりリスキーなのじゃないかと思う。

(どうしよう・・・どうしよう・・・何か出来る事・・・ううう、無いっ!無いよね、そりゃあ無いよっ!)

だって、水泳大会である。
相手側にも言える事だが、基本誰にも手出しは出来ないのだ。どんなに協力したいと思っても、泳ぐ本人じゃない部外者が当日になって出来る事なんてたかが知れてる。

「「「・・・・」」」

伊丹達は顔を見合わせた。

友達である可憐はさっきから頭を抱えているが、正直そんなに深刻になるような事か?と内心思っている。さっきからわざと軽い調子で話してみたりとかしているが梨の礫。
そりゃ忍足に負けろとは全く思ってないけれど、仮に負けた所でどうだっちゅうのよ、というのが3人の見解である。

「ううん・・・そう、そうなんだけどねっ!でも、」
「・・・いやまあ、別に。ね。」
「アタシらも別に、忍足君に負けて欲しいわけじゃないけどさ。」
「まあ、なんでも良いんだけどね~。」
「そう、私達は良いんだけど。そんなに落とせない勝負なんだったら、何か手伝おっか?」

そう、伊丹達は突き詰めていうと正直そんなにどっちでも構わない。
忍足が勝とうが負けようが。それこそ減る物がかかってるわけじゃないし。

伊丹達はそうじゃなくて、可憐の方が気にかかるのである。
自分達はなんのかんの忍足の事も網代の事も良く知らないからさっきの場面と条件だけ見て話をしているが、可憐からすると何かここで負けてはいけない事情を抱えているのかもしれない。

「皆・・・本当に有難うっ!」
「とは言ってもね~。」
「水泳の勝負で今から出来る事ねえ。」
「網代サンに聞きに行く?」
「そ、それは駄目っ!」
「まあ確かに・・・」
「この流れで網代さんを当てにって恰好悪すぎ~。」
「だよね・・・!」
「あ!じゃあじゃあ、逆に相手をジャマするってのはどうだ!」
「それはもっと恰好悪いでしょうよ。」
「だ、駄目駄目っ!そんな風に勝っても何にもならないよっ!」
「悪名が轟くよね~、忍足君側の。」
「そうじゃなくて、もっとこう忍足君のパワーアップを図る方向でっていうかっ!」
「ドーピングでもする~?」
「どうやってするのよ・・・」

ああでもないこうでもない、と浮かんでは消えて行くアイディア。
午後から始まる水泳大会は、もう後僅か3時間後である。