Booty 2 - 8/9


「なーんて言っちゃって。なんだか上手くはぐらかされちゃったって感じ、ね。」

放課後の部活、ももう終わり。今日のマネージャー用日誌を一緒に書きながら、網代は足をぶらつかせて言った。

「結局まだ教えて貰ってないよねっ?」
「そうなのよねー。その内な、とも言ってたけど「その内」なんて本当に来るのかしら?」
「あははっ!確かに覚えてる内は来ないかもっ!」

と言いつつ可憐の気持ちは明るい。

だって、勝った。勝ったのだ。
ああ良かった。これで今夜はぐっすり眠れる。

「それにしても、何の準備もしてなかったと思ったらあんな隠し玉があったなんて。やるわね、侑士君?」
「えっ?」
「ほら、勉強の件よ。」
「ああっ!そうだね、凄いよねっ!何時の間にって思っちゃったよっ。」

確かに一緒にテニスの勉強はしていたが、まさか自分がテニスだけの勉強をしている傍ら、片手間とは言え他のスポーツに対する知識も吸収していたとは。
改めて忍足の賢さを認識しながら今日のスコアを写していると、部屋にノックの音が転がってきた。

「お疲れさん、2人とも。」
「あら侑士君、お疲れ様。」
「お疲れ様、忍足君っ!」
「なんや楽しそうやったな。何の話しとったん?」
「あ、あのねー・・・」
「今日の勝利は、可憐ちゃんのおかげだって話よ♪」
「えええっ!?」
「あら、本当の事よ?ねえ、侑士君もそう思うわよ、ね?」
「思わないよっ!どうしてそうなるのっ!?」

慌てだす可憐に忍足の顔がふっと緩む。

「せやな。言う通りや。」
「忍足君まで悪ノリは止めてよ・・・!」
「悪ノリやあらへんで?もし勉強会してへんかったらクロールのコツなんかわからへんままやったやろうし、そうなってたら勝たれへんかったと思うわ。」

もし勉強会が無くても、心理的なブラフはかけられただろう。
でも、それはあくまで布石でしかない。どんなに精神を揺さぶったって、実力で大きく離されていては結局ひっくり返す所までは持って行けないのだ。


「おおきにな、可憐ちゃん。ほんまに有難う。」


そう言って忍足に微笑まれた瞬間だった。
可憐は胸の内にふ、と柔らかくてあたたかな何かが広がるのを感じた。

可憐自身、理屈では知る由もない事だったが、今のお礼はいつもの忍足のお礼ではなかった。
狙ってやった事ではなかったとはいえ、今回の件について可憐は初めて。
初めてちゃんと、自分自身で「役に立った、自分が居たから今の結果が出せた」と思う事で忍足に感謝されたのだった。

忍足は決して陽気でお喋りな性格ではないけれど、別にぶっきらぼうだとかそういうわけじゃない。普段のやり取りの中、他愛ない事で有難うを言われる事は普通にある事だけど、今回は違う。

「・・・えへへっ!どういたしましてっ!」

大事な人から有難うを言われる事がどんなに嬉しいか、可憐は今初めて分かった気がした。