Booty 2 - 9/9


その後日誌を書き終えると、可憐はそそくさと「忘れ物を思い出したから」と言った。
勿論忘れ物なんか無い。忍足と網代を2人にさせる為の嘘である。

「じゃあ、又明日ねっ!お疲れ様っ!」
「お疲れ様、可憐ちゃん♪」
「お疲れさん・・・」

軽快に閉まるドアの音を聞いて、忍足はちょっと呆気に取られる。

「・・・なんやえらい機嫌良かったな。」
「あら、分からないの?」
「分かるん?」
「・・・・」

分かるよ。
でも教えてはあげない。

自分は其処まで優しくはないから。

「・・・さあ、どうかしら、ね。ところで侑士君?」
「ん?」
「今、わたししか此処に居ないわよ?」
「・・・何?」
「やだわ、戦利品の話よ♪結局勝って何を貰ったの?ね、誰にも言わないし誰も居ないからこっそり教えて?」

別に。
どうしても此処でそれを聞きたかったわけじゃなかった。

網代は忍足が勝って得たものの情報が欲しかったわけじゃない。
ただ、秘密の話がしたかった。
秘密そのものは小さなことで良い。それがいつか明かされるものであっても構わない。

ただ、2人の秘密を作る。
網代はそれが目的でこの話を振った。

それだけだったのだけど。

「せやった。それやねんけど、ええ知らせがあるわ。」
「え?」
「跡部も言うとったけど、茉奈花ちゃん前に言うてたやろ?マネジが足らへんいうて。マンパワー的に。」
「ええ、まあ。そうなんだけど・・・」
「やから、ちょっと広告を大きく打つのはどうやろと思て。」
「思って?」

「バスケ部の2年生だけやねんけど、3日間貸して貰える事になってん。」

貸してもらえる。
人間を。3日の間貸して貰えるという事は。

「良いの!?ビラを配らせたり放送を流して貰ったりクラスで宣伝してくれたり人間広告塔になって貰ったりしても!?」
「にん・・・まあ、ええんとちゃう?」

人間広告塔というのは、都会の町中なんかでよく見かける、広告をぶら下げて歩いているあの人員の事である。
やる方はちょっと恥ずかしいかもしれないが、まあ負けたんだから其処は向こうに割り切って頑張ってもらおう。

「時期は決めてへんから、マネジが都合の良いタイミングでやって貰たらええわ。まあ向こうも向こうの事情があるさかい、全員総出で3日間働かせっぱなしいうわけにはいかへんやろけど。」
「うんうん!それは勿論よ!でも随分助かるわ、やったあ!可憐ちゃんと相談しなくちゃ、部長様は・・・まあ、事後報告で良いかしらね♪」

手放しで喜ぶ網代に、可愛いと思うと同時にどこか選手として申し訳なくなる忍足。
人足りない足りないと聞いてはいたが、実際どれだけ足りていなかったのか今の網代の態度から推し量れよう。

「もう、そんな事ならもっと早く言ってくれても良いのに♪嬉しいことの段取りは、なるべく早くやりたいのが乙女心って奴で・・・」
「いやまあ、俺にはおまけやさかい。」
「ん?何よおまけって。」
「おかしいと思わへん?」
「?」
「俺は不利な条件で勝負したったのに、勝って貰えるもんは平等にとか言われても困るやん。」
「・・・・!」

分かった。
分かったぞ。この男。

「まさか自分だけご褒美を2個にしてもらうとは、やるわね侑士君。」
「土台が不公平なんやから、多少はええやろ?」
「そうかもしれないけど、よく相手がオッケー出したわね。」
「まあ相手からしてみたら言うた事そのまんま突き返されただけやからな。」

網代は目をパチクリさせた。

言ったことを突き返した。
という事は。


「俺も欲しかってん。茉奈花ちゃんをデートに誘う権利いう奴。」


その内使うからその時はよろしく。
なんて微笑んで平然という忍足に、網代は内心でわからないようにこっそり白旗を上げた。