「昼も一緒に食べられない?」
「申し訳ありません・・・!」
中休み、机越しに両手を合わせる紫希。
一緒に食べられないのは構わないとしてもだ。
「なんで?」
「少し、用事がありまして・・・」
「先生とか?」
「いえ、ライブの事で。ごめんなさい、これ以上言えないんですけれど・・・」
「・・・仁王か。」
何処で何をするのかは分からないが、仁王が指示出ししているのは見当がつく。
言えないというのも、おそらく仁王が口止めしているのだろう。
教えてくれても、と思わないでもないが、自分達は今仁王に頼るより他は無い。
そうせよと言われたのなら、従わなければ。
「分かった。行ってらっしゃい。」
「すみません。」
「良いから。でも、何か言われたりされたりしたら、すぐ言ってよ?」
「大丈夫と思いますけれど・・・でも、有難う御座います。千百合ちゃんは、今日お昼どうなさいます?」
「今日は弁当あるから、音楽室。ライブなんとかなりそうだし、練習しないと。」
部外者である仁王に頑張って貰ってるのに、肝心のライブがお粗末ではお話にならない。
天才肌の紀伊梨と要領の良い棗は兎も角、自分はもっと練習が必要だ。
「放課後は今の所大丈夫そうですし、私も音楽室に行きますね。」
「分かった。」
「それから、仁王君から何か指示があったら言って下さいね!私が代わりに出来る事なら、私がやりますから。」
「いや、それは・・・」
「やりますから!千百合ちゃん達は練習なさって下さい!」
「はいはい。」
千百合はクスッと笑った。
ライブが近くなると、紫希は何時もこうである。他の事は自分がやるから練習を!と言う姿はなんだかマネージャーのようだ。
助かるけれど。
「真田ー。なんか、テニス部の先輩来てるぞー。」
「む!分かった、今行く。」
キビキビと千百合の横を通り過ぎて廊下まで出る真田を、千百合と紫希はなんとなく見送った。
「・・・・・」
「そうです、千百合ちゃん。真田君で思い出したんですけれど、今朝・・・」
「そ。やらかしちゃったのよ。」
授業の時間になり、後ろの女子生徒に起こされて事の次第を聞いた紫希はそれは吃驚した。
自分が寝てる間にそんな大騒ぎになっていたなんて。
「ごめんなさい、私が寝ていた所為で・・・」
「紫希の所為じゃ無いから。アレは彼奴と・・・まあ、私が悪い。」
あの状況で紫希を叱る真田を止めた事は後悔していない。
でも、自分ももう少し言い方というものがあった筈なのだ。
「あーあ。なんでああなっちゃうんだろ、我ながら不思議だわ。」
「ううん・・・まあ今回の事は兎も角、大体何時もはどちらが正しいとかではなくて、主義主張の違いですから。難しいですけど。」
そう、どちらが悪いとか正しいとかではないからこそ、歩み寄りが必要なのだ。
そして厄介な事に、千百合に輪をかけて真田はその意思に乏しい。
「若しくは、幸村君に間に入って貰って・・・」
「それは嫌。迷惑かけたくないし・・・って、これじゃ紫希なら良いのかって事になるよね。ごめん、そういうつもりじゃ、」
「それは良いんですよ!私は全然構わないですけど・・・そうですよね。」
幸村に要らぬ苦労をかけたくない、というのは千百合のみならず真田も思っている事だろう。
「・・・まあまあ!こう言うと千百合ちゃんや真田君は怒るかもしれませんけれど、時間が解決してくれる事がありますよ。まだ学校生活は始まったばかりですし、お互いの良い所が見えてきたら、きっとまた変化があります。気長にいきましょう?」
「・・・うん。」
そうだ、色んな事がまだ始まったばかりだ。
ゆっくりやっていけば良い、と言って貰えて、千百合は幾分か心が軽くなった。
(そうだ、今すぐなんとかしないととか、そういう問題じゃないんだし。焦らない焦らない。締め切りがあるわけでもないしね・・・)
「あ。」
思い出した。
締め切りという響き。
「そうだ紫希、仁王に会ったら聞いておいて欲しいんだけど。」
「?」
「私も会ったら聞くけど、企画書は結局どう書いて出したら良いのか聞いといてくれない?」
「あ。」