昼休み。
幸村と柳の居るD組を訪れた紀伊梨だったが。
「えええええーー!?2人とも居ないのお!?」
「なんか、生徒会がなんとかって言ってたけど?」
「のおおおおーーーう・・・・」
がっくり項垂れる紀伊梨に、なんだか教えた生徒の方が気の毒に思ってしまう。
「・・・・そっか!有難!じゃあしょうがないねっ!」
「帰って来たら教えようか?」
「ううん!大丈夫です!五十嵐紀伊梨、行って参ります!」
「ああ、うん?行ってらっしゃい?」
何処へか分からないけどと思いつつ手を振る生徒に見送られ、紀伊梨は駆け出した。
(うううん、2人とも居ないとは計算外だよう!でも、待ってたってしょうがないしなー!これは私1人で行くしかないね!)
何処へか?
C組である。
(1-C・・・うん!ここですな!)
「さあって、真田、真田・・・居た!」
そう。
紀伊梨は真田に会いに来たのだ。
今日千百合と真田の事で一頻り考えた紀伊梨だったが、よくよく考えると千百合の事は兎も角、真田の事は全然知らない。
知らないならこれから知れば良いじゃない?の精神で紀伊梨はC組に特攻をかけた。
本当は幸村や柳に真田の事を教えて貰ってからが望ましかったが、仕方がない。
紀伊梨は怯む事なく背筋を伸ばして予習する真田に近づいた。
「真田君!」
「む?お前は、確か今朝の・・・」
「そう!今朝も会ったね、B組の五十嵐紀伊梨ちゃんでっす!」
ビシ!と決めポーズを取る紀伊梨。
「・・・そうか。して、何の用だ?」
「うわちゃ、滑ったかあー!」
((((滑るに決まってるだろ・・・))))
あの真田相手に良い度胸である。
C組の生徒は逆に紀伊梨に尊敬の念を抱いた。
「用事はありません!」
「用事は無いだと?」
「うん!お喋りしにきた!あのね、私真田君と千百合っちに仲良くして欲しいんだ!」
うわ、彼奴言いよったぞ。
と果たして何人が思ったか。
「仲良く?」
「うん!でも私真田君の事良く知らないから、お喋りして理解をふかめよーと思ったのであります!というわけで真田君!お喋りしよ!」
「話すのは良いが、仲良くは断る。」
「なんで!?」
「仲良くというのは、しようと思ってするものではない。付き合いの中で徐々にそうなったり、ならなかったりするものだ。そして、俺と彼奴はウマが合わん!」
「うまがあわん?ってどういう意味?」
「知らんのか、たるんどる!相性が悪いという意味だ。」
「へー。」
紀伊梨は真田の言葉を咀嚼する。
仲良くというのは自然になるもので、そして自分と千百合は相性がよろしくないから仲良くはなれないと。
なんじゃいそりゃあ。
「でもそれって、なんか怠けてなーい?」
「なんだと!?」
「だってそーじゃん!それって、つまり仲良くする為の努力とかは別に何もしないって事っしょー?それって怠けてるって言わない?」
「言わせておけば・・・!」
「おいおい、大丈夫かよあれ・・・」
「ええと、春日さん・・・は、居ない!」
「え、でも一応渡り合ってない?」
「ね。負けてないよね、あの子。」
「良いか!友情というものは、無理をして築き上げるものではない!わざわざ努力しなければ生まれない友情など、必ずどちらかの負担になる!そんな物に価値があるか!」
「あ!言ったなー!」
今度は紀伊梨に火が付く番だった。
「価値ならあるもん!私だって、千百合っちや紫希ぴょんと最初から親友だったわけじゃないよ、みーんな性格全然違うんだから!分かるっしょ!?同じクラスなんだし!」
「む・・・」
これは説得力があった。
千百合と紫希は同じクラスだから2人の違いは真田にも分かるし、紀伊梨は紀伊梨で2人のどちらとも違う事は今現在進行形で理解しつつある。
「でも最初は頑張らなきゃいけないのはしょーがないじゃん!何も分かってないんだから!それなのにさー、自分では何もしないで最初から「合わない」とか、「価値がない」とか、そんなのなくない!?」
「しかし何もしていないのは彼奴も同じだろう!」
「確かに出来てないかもだけど、千百合っちは頑張ってるよ!やろーとしてるもん!だから真田君にも、出来なくて良いからせめて頑張ってほしーの!」
今日の様子を見る限り、千百合も歩み寄りという意味ではあまり成果が上がっていないのは分かる。
でも成果が上がらなくても良い。
やろうとしてる事こそが何より大事なのだと紀伊梨は思っている。
「・・・・・・」
「ね!それでも相性悪い!って言うんなら、それはもう良いよ!でも少なくともそれが分かるとこまでは頑張ろーよー!」
「・・・・むう。」
「ね!ね!それでも駄目?それもしたくない?」
今やC組の全員が紀伊梨に感心していた。
あの正論大魔王の真田を相手にして正攻法で押し切るなんて。
「・・・分かった。考えよう。」
「本当!?」
「やらん事は言わん!」
「マジか、きゃっほう!」
「回るな、騒がしい!」
喜びの舞を踊る紀伊梨には、真田の叱咤も届かない。
この鈍感力こそが、千百合には何より必要なのかもしれなかった。
「ありがとー、真田っち!」
「待て、その呼び方はなんだ。」
「え?仇名!」
「止めんか!真田と呼べ!」
「えー!」