Help 2 - 9/9


昼休み終了後、授業間の中休み。
無情なお知らせがビードロズ4人の携帯を鳴らした。












「うーわ、マジかよwマジかよ・・・」
「黒崎?どうした?」
「桑原、お前良い奴そうだから言っとくわ。」
「何をだよ。」
「仁王はマジで性格悪いぞ彼奴。」
「え・・・」












(冗談でしょ・・・・)

「黒崎さーん。このプリント・・・黒崎さん?どうしたの?」
「・・・何でもない。」
「いやいやいや、嘘でしょ。今目の前で泥棒に財布取られたみたいな、
絶望感漂う目つきしてるよ。」












(え、え、え、どうしましょう、どうしましょう、どうしましょう、どうしましょう、)

「・・・春日?」
「・・・・・・・」
「春日どうした?具合でも悪いのか?」
「・・・・・・・」
「おい春日!」
「真田ー、聞こえてないって。」












「それでね、それでね、」
「なあ、それでねは良いけど、携帯鳴ってないか?」
「うえ?あ、ホントだー!おお!ニオニオからとは珍しいなり!」
「へー。なんて?」
「・・・・おおおおおおお。」
「お?」

(・・・これはあれだね!)

紀伊梨はグループLINEを開いた。




『放課後、ビードロズは全員音楽室に集合されたし!』
























放課後。

紀伊梨の、いや、リーダーのこの号令に異を唱えるものなど居よう筈もなかった。
全員が集まる事の必要性を感じていた。

まだ空は青い時間に、幸村を除く4人は揃っていた。

「よし!それじゃあ、全員揃ったところで!」
「これな。」

棗が携帯を4人の中心に置いた。

「皆も来ましたよね・・・?」
「うん。同じ文面でね。」
「じゃ、やっぱり仁王としては、これ以上言うことは無いってスタンスなわけだ。」

企画書について棗が再度聞いた時、返ってきたのは一言だけ。




『ライブの後に向こうが黙るかどうかは、お前さんらの演奏の腕前に任すぜよ。』



「これって、黙らせろって事よね。」
「そ。生徒会が大目に見てくれるレベルの演奏しろよって話だ。」
「・・・・・・」
「うんうん!で、私から先ず聞きたい事があります!皆手上げてねっ!」

紀伊梨が顔を上げて言った。




「”そんなの出来ない”って思う人は?」




しん、と音楽室が静まり返った。
誰も手は上げない。

紀伊梨はにんまり笑った。

「じゃあ、出来るって思う人!はいっ!」
「いやーw」
「んー・・・」
「・・・・・・」
「えええ!?私だけ!?なんで!?」
「いやいやいや、今の演奏レベルじゃ若干厳しくないかw無視する事の大きさが大きさだけにw」
「私もそう思う。」
「なんでよー!」
「あのう・・・」

紫希が言いにくそうに口を開いた。

「はい、紫希ぴょん!」
「・・・正直に言うと、私、出来るとは思えません。」

演奏する立場じゃない人間が、何を言うのかとも思う。
でも、メンバーの一員として意見を仰がれているのなら、変な遠慮はしてはいけない。

「・・・そうなの?」
「はい。でも、出来ないとも思っていません。」
「つまり?」

「正確に思ってる事を言うなら、”出来るかもしれない”が一番正しいです。」

棗の意見は正しいと紫希は思う。
今の練度では普通のライブならまだしも、今回のようなイレギュラーをねじ伏せることは出来ない。

でも、今からでも詰めて練習すれば。

もっともっと頑張って、本当の全力を出し切れるなら、出来ないとはいえない。
それが紫希の意見だった。

「私も、どっちかっていうと紫希寄りの意見。」
「出来る「かも」?」
「寄りってだけで一緒なわけじゃないからね。今のレベルじゃ無理じゃない、って思うのは本当。でも「無理そうだからね、しょうがないね」みたいに思って何もしないのは絶対嫌。」

ならどうするか?
きっとやれる、そう信じてブラッシュアップしていくしかない。
結果がついてくるかどうかなんて、考えているような余裕はないと言うのが千百合の意見ーーーというか、方向性だった。

「ふんふん。なっちんは?」
「俺も似たようなもんかな。可能性は低いけど、他に案もないしやるっきゃないよね。」
「ふうん?」

紀伊梨は笑って腕を組んだ。

「どう?これじゃ不満かしら、リーダー。」
「うーん、50点かな!」
「手厳しいw」
「紀伊梨ちゃんはどう思ってますか?」
「私はねー、後の50点分が埋まればきっと成功すると思うよ!」

こういう時の紀伊梨は、抜群のリーダーシップを発揮する。

音楽が好き。
愛している。

それ故に迷いが無い姿勢こそ、紀伊梨が只の天才ではない、ビードロズのリーダーたる証。

「お前がそういう時って絶対無茶ぶるんだもんwあー聞きたくないなーw」
「今に始まった事じゃないし。」
「酷いなー!そんな無茶な事言ってないよ?」
「「だから嘘だってそれは。」」
「えええ!?」
「ま、まあまあ。それで、紀伊梨ちゃん。私達、どうすれば・・・」

紀伊梨は不敵に笑った。








「ニオニオから言われた事は忘れちゃおう!」








今度こそ3人は、自分達が窮地に立たされているのだと分かった。
紫希は一気に遠い目になり、棗は引きつり笑いをし、千百合に至っては天を仰いだ。




分かった。
我らがリーダーの考え。




「皆顔が怖いよ!これから楽しい楽しいライブに向かって、突き進んでいくぜー!って感じがしない!それじゃーダメダメでしょ☆

そんな風になるくらいだったら、成功させなきゃとか黙らせなきゃとか、そんな事忘れちゃおう!




楽しく行こう!それがビードロズのいっちばん素敵なライブだよ!」




このライブが成功しないともう学校で二度とライブ出来ないかもしれない。
それを丸々聞かなかった事にして、平常心でライブしろ。

紀伊梨の要求はつまりそういう事である。

「ね!暗い空気とかナシナシ!企画書もぱぱっと書いて、サッと出しちゃえー!
それより、もっとライブの事を考えよーよ!」

ハイテンションで回りだす紀伊梨に、3人は溜息を吐いた。

「やっぱり無茶じゃないかw」
「良いんじゃないでしょうか、ビードロズらしくて。」
「死なば諸共ね。」
「死なばもろともって「後にしろ。」はい・・・」
「じゃあ、方針としてはそれで行くって事でw」
「ようしっ!」

紀伊梨が片手を出す。
皆それに続く。

スタートをゴールにしない為に。




「最高に楽しいライブ、絶対やるぞー!!!」
「「「おーーー!!!」」」




ビードロズの叫びは、青い空を突き刺したのだった。