「それで、どうなさったんです?」
『全員一致だよ。助けて貰う事になった。』
「ま、普通そうだよな。」
丸井は今、柳生と共に幸村からの・・・正確に言うと松風と棗と話し合いをして決定した事の連絡を受けていた。
松風に助けを求めるか、否か。
多数決を取って出た結論は、助けて。
夜間学習の一環だよとか。そうでなくても都合が悪くなったら大人に助けを求めるのかよとか、元々精霊を捕まえるってそういう事なんだからとかそういう思いも全く0ではないけれど、やっぱり安全には代えられない。誰かを犠牲にしてまで優先するようなものじゃない。
「んで?こっからはどうすんだ?」
『先ず現状なんだけれど、俺は千百合と。それから柳生と丸井で散会してる。柳の方のチームは柳と仁王が捜索していて、棗は見失った場所から動いてない。松風さんとのやり取りに集中して貰ってる。真田の所は、全員バラバラだ。』
「春日さんもですか?」
『春日は散会と言うより、警察に直接駆け込むつもりだったんだ。つもりとしてはね。』
「やっぱ、無理?」
『うん。妨害に遭ってるらしい。向かおうとすると目くらましされて、自分でも今どこにいるのかわからなくなりかけてる。』
「危なくねえ?」
『危ないけれど、ジッとしてろと勧めてもジッとしてるような性格をしていないからね。こういう時は特に。』
「あーあ・・・」
溜息を吐く丸井に柳生はちょっと笑ってしまう。
分かってるなあ、紫希の性格をという思いで。
「ということは、春日さんも実質は行方不明と言うことですか?」
『そうなるかな。まあただ、警察なんかに向かいさえしなければ妨害もされないと思うんだ。だから普通に捜索を始めれば春日の位置の問題はすぐに解決すると思う。ただ、それはそれとして春日には別の頼みごとがあって。』
「と、言いますと?」
『ここからが本題なんだけど、松風さんの指示が幾つかあるんだ。その内の一つに、飴を買って神社に戻って次の指示まで待機というのがある。それは春日がやるのが良いらしいんだ。あの神社にはもう元々狐が居るから、2人一緒にしておく事で精霊は尻尾を出しやすくなる。』
「成程。精霊は春日さんを守る狐も神社の狐も怖がっている。精霊から見ると怖いものが一か所に固まってくれて気が緩むわけですね。」
「飴を買ってねえ。飴なら持ってっけど?」
『何に使うか分からないから、一応新品であるに越したことはないかな。だからコンビニに行ってもらって、その後その足で山へ戻ってもらって・・・リフトを使えば、近くまで楽に行けるしね。』
「・・・それって一人で?」
『まあ、一人で出来なくはないから。』
「暗いから危ないんじゃねえ?」
『誰か付けるとしても、位置が分かってからかな。近い人と合流して行ってもらうことになるけど、誰からも遠いなら無理をしなくても。』
「・・・・・」
「兎に角、春日さんの事情は分かりました。他の指示は?」
『そうだね。それなんだけど、』
「・・・ふう。」
ひとしきり今後の見通しを聞き終わり、柳生は通話を切った。
「さて、行きましょうか。・・・と、言いたいところですが。丸井君。」
「?」
「私達はこれから一先ず買い出しに行かねばなりません。」
松風からの指示。
紫希はさっきの通り飴を買ったら山へ行く。
棗は完全に連絡係として機能して貰う為、その場から動くなということだった。
後は皆、先ず買い出しが必要だった。
とは言ってもそんな大したものじゃないし、飴でもない。その辺のコンビニでレモンティーと塩を買って来いというだけの話だ。
「そこで、」
「それなんだけど。」
「はい?」
「・・・春日のとこに行ってやりてえんだけど、駄目?」
ちょっと悪い事言ってるなと自覚しながらの物言いに、柳生は思わずくすりと笑ってしまった。
「出来れば、幸村君にはオフレコで。」
「ええ、構いませんよ。というか、今それを提案しようかと思っていたところです。」
「マジ?」
「はい。丸井君も仰っていましたが、やはり女子一人は危ないので。黒崎さんには幸村君がついていますしね。」
「そっか。」
「それから、幸村君にもオフレコにする必要はないと思いますよ?」
「そうか?何かさっきの電話じゃ、別にしなくて良いからみたいな言い方だったじゃん?」
「それでも丸井君は行くと言い出すでしょう。おそらくそこまでわかっていると思いますよ、幸村君は。」
「マジか・・・まあ、幸村君ならそっか。」
結局こういう時頑固なのは紫希も丸井も似ているのである。
あーあとか言ってたが、丸井だって人のことは言えない。決して。
「でも、悪い。お前が一人になっちまうけど・・・」
「こちらはこちらでなんとかしますよ。適当に合流出来そうならそうしますし、そもそも私は中学生の男です。一人で夜道を歩いていたからと言って、如何程のことでもありません。」
「そ?なら良いんだけどよ。」
「ええ。それよりも、春日さんをよろしくお願いします。もう既に五十嵐さんは行方知れずです、これ以上誰かに何かがあるのは避けたい事態ですから。」
「おう、任しとけって!」
勿論そうする。
その為に自分は行くのだ。