『そうなの、大変ね・・・』
『うん・・・その。お金を持ってないから、医者にも行けなくて。』
『そうなの、気の毒に・・・お医者様は高いものね。』
嘘を吐いた。
本当は生まれつきだった。
病気でないことも自分でわかっていたし、そもそも人間どころか普通の生き物じゃないのに医者なんて要らなかった。
でも、嘘を吐いた。
こう言う事で、彼女は自分に寄り添ってくれるのではないかと期待したのだ。
そしておそらくその期待通りにいくだろう事も分かっていた。
そう、分かっていた。
彼女ならどうするか。
どういう反応になるか。
ずっと見ていたから。
『・・・ねえ。貴方さえ良ければ、私の家に来ない?』
『それほど裕福というわけじゃないけれど・・・今よりは良い暮らしをさせてあげられると思うの。』
『この神社に住んでるんでしょう?確かに神聖な場所だけど、布団も何もないのに体に良くないわよ。』
『健康になれば、目も良くなるかもしれないわ。』
『ね?どうかしら?』
『いや・・・此処が気に入ってるから、それは遠慮しておくよ。』
嘘だった。
此処が気に入ってるからじゃない。一緒に住むとボロが出るからだ。
『君に迷惑だし。』
嘘だった。
本当にそんな謙虚な心があるんだったら、こんな風に姿を見せたりしなかった。
『でも、良ければ・・・一つだけお願いがあるんだ。』
嘘吐き、嘘吐き。
一つじゃ全然足りないくせに。
『お願い?なあに?』
『・・・俺と、友達になってくれないかな。』
この時、彼女には聞こえていなかっただろうが自分には特大の笑い声が聞こえた。
社の主の白狐が自分を指差して笑う声だ。
友達だって。
この大嘘吐きめ。
友達じゃ嫌だから、お前は今、そこでその姿で居るんじゃないか。
ああ、ああ、分かってるよ言われなくても。
でもどうしようもないじゃないか。
他にどうしろっていうんだよ。
こうするより他に自分じゃ思いつかないんだ。
悪いとは思ってるけど、自分を抑えられないんだ。だから。
『ええ、勿論よ。』
『・・・有難う。』
彼女の笑顔は眩しくて、眩しすぎてとても見られたものじゃなかった。