Camp school:Cowardly spirit 4 - 2/7


「いらっしゃいませー。」

明るい店内。店員の声。

「あ、あの・・・」
「はい?」
「お伺いしたいんですけれど、此処はフ/ァミ/リ/ーマ/ート○○店?ですか?」
「はい、そうですけれど。」

(良かった・・・・・!)

紫希は膝から崩れ落ちそうなくらい安堵した。

良かった。良かった。自分は目指していた場所に到着できたのだ。
このままずっと右も左も見失ったままだったらどうしようかと思った。

(ああそうだ、LINE、LINE・・・皆に無事着いたって連絡を・・・)

紀伊梨が行方不明になってから一同は絶えず連絡を取り合い、お互い何処に居て何のために何しているのかを報告しあっていた。
だが紫希だけは目くらましされていたのでそれが出来ず、一応警察や新海の元を目指しさえしなければ大丈夫なのではと予測はしたが、ちゃんと到着するまで「正常に戻った」の報告は止めようと思ったのだ。

(○○店に、到着、しました、と・・・よし!次です、飴を買いませんと!)

飴を買えと指示はあるものの、何故飴を買うのかはよく分からない。
まあ松風がそうせよと言ってるのだし、理由がわからなくても信じて買うけれど。

♪♪♪

「?」

LINEの返事が来た。
皆から、お疲れさま、良く頑張ったという励ましがピロピロと発言される。良かった、皆一先ずは今も無事のようだ。
その中で千百合から、自分達も今コンビニであるという一報も混じった。

(レモンティーと、お塩・・・塩はなんとなくお清め的な事かと思いますけど、レモンティーは全然わからないです・・・)

まさか飲むためじゃないだろうが、飲まないでどうするのだろうか。


そして、当たり前といえば当たり前だが未だに紀伊梨がどうなったという知らせはない。


もしかして運が良ければ、自分達が動いてる間になんらかの形で助かって居ないだろうかと淡い期待を抱いてしまうが、世の中そんな、目の前に並ぶ飴のように甘い事なんてなく。

「早くしませんと・・・」

ただでさえ自分は足が遅いのだ。
こう、1分1秒が惜しまれる時にぐずぐずしている暇は無い。

なんとなく、なるべくスタンダードな方が良いかもという判断が働き、何の変哲も無いフルーツ味の飴を急ぎ購入する。

「レシートのご入り用は・・・」
「大丈夫です!有難うございましーー」

一瞬レジの方を振り向きかけた、丁度その時誰かにぶつかった。
ドン!という音と共に後ろにふらつく自分の体。

「きゃあ!ご、ごめんなさい!すいません、大丈夫で、す・・・」


「おう。平気平気。」


見慣れた顔。
聞き慣れた声。

丸井だ。

何故だ。何故居るんだ。

「あ、飴はもう買ったんだな。」
「ああ・・・ええ、はい・・・」
「そっか!危ね、擦れ違う所だっただろい。急いで正解だったぜ。」
「急いで・・・あ!そ、そうです、急がないと・・・」
「おう、行くか!山へ行くんだったよな?」
「はい。」

ああ。
でも。

何故ここに居るのかとかそういうのは全部後にして、取り敢えず向かおうとするけれど。でもこうして一歩外に出て、向こうにそびえ立つ黒い山を見ると。

「・・・・・」
「どうした?」
「あ、いえ、ちょっと、あそこまで行けますよね、みたいな・・・」

距離の問題じゃない。
紫希が恐れているのは、果たして向かう事を許されているのだろうか、という事。

まあ、今は所在地のわからない警察と違って、目の前に目標があるのだから見失うことは無いとしても。

「・・・じゃあ、行きまーー」

ポン。
と背中に手が当てられる。

ああ。暖かい。

「丸井君・・・」
「・・・俺、別に霊能者でもなんでもねえからさ。何とかしてやるとか、大丈夫だからとか言ってやれねえけど」

だから幸村に言われた時強く言えなかった。
お前が行ってどうするの。
何かしてやれる事があるの。


それは本当に、お前じゃないとしてやれないの。


そう念押しされた気がして、でもその念押しに対して何も反論が浮かんで来なかったのだ。
行く事しか出来ない。
してやれる事も殆ど無い。
諸共で目くらましに遭っても、自分にはどうにかするような特殊なスキルも霊感も何もないし、自分じゃないと駄目なのかって言われると全然そんな事無い。危ないからって理由なら、幸村の言っていたように近くに居る人の手を借りればそれで済む。

でも。それでも。無理してでも。


「でも、一緒に居るって。」


1人にしない。

今の紫希にはそれが何より心強くて、安堵の涙でちょっと視界が滲んだ。