『そうです、そのまま直進。後300mほど。』
「本当に大丈夫なの?」
「大丈夫なんじゃないかな。蛇の道は蛇と言うし、此処は松風さんに任せよう。」
千百合と幸村は走っていた。
公園で休んでいた所松風から連絡が入り、もう塩とレモンティーは良いから今からいう所へ向かえと言われ。
言われた通り歩いていたが、通話を続けている内に「紀伊梨が近い、走れ」と言われたので今指示に従い駆けている真っ最中。
松風から目くらましは防いでおくから大丈夫と言われたが、果たして本当か。
それは松風のみぞ知る。
「・・・あ。居た。」
「五十嵐!」
「紀伊梨!・・・と、誰?」
「あれが精霊だろうね。」
見通しの良い夜の道路の向こう、まだ距離があるが見慣れた紀伊梨のシルエットと、連れ立って歩く青年が見える。
「・・・ごめん、紀伊梨ちゃん。」
「お?」
「やっぱり、死にはしないけど痛いから。急ぎたいから、走っても良いかな。」
「お!うん、良いよ良いよ!紀伊梨ちゃん足速いし!」
「有難う・・・・」
「紀伊梨!ちょっと、紀伊梨ってば!聞こえないの!?そんなわけないでしょ、あんたの耳で!」
「あの精霊が何かしてるんじゃないかな。」
「・・・聞こえない様にって事?」
「見えない様にしてる可能性もあるよ。松風さんは俺達に対する影響は防げるし危害も加えないと言ってたけれど、五十嵐は直ぐ傍に居るから松風さんにもどうにも出来ないんだろう。この程度で危害とは言えないし。」
「じゃあどうすんのよーーー」
『どうもしなくて良いです。』
スマホに松風から着信があった。
「どうもって。」
『そのまま山へ追い込んで下さい。あそこへ連れて行きさえすれば終わりですよ。』
「良かった。可哀想だけれど、捕まえて引っぱたくしかないかと思っていました。」
「え。」
「え?」
「いや・・・なんで?」
「何故って。単純に見えない聞こえないは目くらましの範疇かもしれないけれど、物理的な行動は目くらましとかそういう事じゃないから。有効なんじゃないかと思って。」
『・・・ええ、それは当たっているといいますか。実際我々も時たま使う手段なんですがね・・・・』
(何か引かれてない?)
流石に引いていると言うのは言い過ぎだ。でも必要なんですよと言われたら、ああそうですかと言わんばかりに女の子を引っぱたく用意がある幸村の容赦の無さに、松風とてもちょっと戸惑い気味なのは事実。なんという割り切りぶり。
「しかし、追い込んだ後は?春日と丸井に何かさせるんですか?」
『もうして貰いましたよ。』
「「え?」」
『私が頼んだのは罠の設置までです。それも上手くいったようなので、後は君達が誘導してくれれば、もう何もして貰わなくて結構です。』
後はかかるのを待つだけ。
見上げると夜の江ノ島で奔走する一同を、暦外れの満月が見つめている。