「おやすみー。」
「おやすみ・・・」
「紀伊梨ー、寝ないのー?ふああ・・・私らもう寝るけどー?」
「うん・・・」
同室の友人が次々就寝していく中、紀伊梨はベッドに寝転んでぼーっと窓から外を見ていた。
何かあったんだろうか。
皆思うものの、自分達も眠いしもう遅いし。
それに静かな事は静かだが、具合が悪いだとか悲しみに暮れているとか思い悩んでいるとか、そういうマイナス要因から大人しくなっているという感じではない。
態度が凪いでいるというか、純粋に落ち着きから大人しくなっているという空気を感じたので、話を聞くのは明日にしようかと全員が思ったのだった。
かくして紀伊梨は、1人夜のホテルの部屋で起きたままとなったのだが。
「・・・・・・・」
不思議だ。
いつもなら夜の暗い部屋で1人起きてるなんて怖くて堪らないから、さっさと寝てしまおうと思うのに今日はそんな気にならない。
怖くもない。
『ただ、寂しかっただけなのに・・・・』
『良いんだ、そんな事をしなくても。友達になってくれなくても・・・』
『君は、人間だからね。』
そうだね。
今思い返すと、あの紀伊梨に対して人間なんだからと言った時の彼の顔は、とても俗世離れしていた。
自分が人間じゃない事を受け入れている・・・というか受け入れるとかそういうレベルを越えて、当たり前だと思っている顔だった。
でも、人間だからとか人間じゃないからとかそれがなんだって言うんだろう。
寂しいと思う気持ちには変わりないなら、別に諦めなくて良いじゃないか。
よしんば自分が人間であるからというのが問題だったとして、だ。
それなら、紫希と丸井が会った幽霊はどうなる?
彼女は元は人間だったかもしれないが、最早もう人間じゃない。
なら良いんじゃないか?一緒に居られるんじゃないか?何が駄目?
(最初に約束破っちゃったから怒ってるのかなー・・・でも、そんな怖いとか怒ってるとかそんな感じじゃなかったって2人共言ってたしー・・・)
紀伊梨は基本的に気まずいという感覚に乏しいので、こういう時はイマイチピンと来ない。
まして恋愛が絡むと尚更分からない。
「・・・何か眠くないなー。」
眠くないし怖くない。
非常に珍しい事に紀伊梨は体を起こして、一度寝ころんだベッドからもう一度立ち上がった。