Camp school:With memories 1 - 2/7


「紀伊梨。紀伊梨ってば!」
「zzzzz・・・・・zzzz・・・・」
「井谷ちゃん、どうかな?」
「駄目そう。パンとか取っといてやるか。」

C組のテーブルでは紀伊梨が寝落ちていた。

普段眠くても何かしら食べれば回復する紀伊梨だが、昨晩は割とちゃんと夜更かしをしてしまい、それ故に今朝は完全にバタンキュー。圧倒的に眠気が食欲を上回っている。

「よ!はよ。」

ぽん、と沈む紀伊梨の後頭部に手が乗っかる。

「あ、丸井。」
「おはよ、丸井君。」
「おう、おはよ。・・・あれ?おい、五十嵐?」
「むに・・・zzzzz・・・・」
「ほら、昨日遅かったから。」
「ああ。つっても夜10時にはもう帰ってきてたぜ?」
「何か昨日あんまり眠れてなかったみたい。なんだかずっと起きてたし。」
「ふーん?」

もしかして未だに何か憑いてたり・・・と一瞬思ったが、今平和そうに寝こけてるからまあ大丈夫だろうか。

「丸井は眠くないの?」
「俺は別に?いつもより動かねえし起きる時間も遅いし、怠けてんなって感じがするくらいだけど。」

(流石テニス部・・・)
(安定のブラック部活ぶり・・・)

勿論2人とも、思っていても口には出さない。

「紀伊梨とか、マネジ出来なさそー。」
「体力は十分と思うけどね。でも朝弱いって致命的かも・・・」
「無理無理、此奴には。マネジって体力もだけど頭よくねえと出来ねえもん。段取りとかスコアとか消耗品の残りの計算とか、メニュー・・・は、まあ今は良いか。柳が居るし。」
「へー。マネジって色々大変ねー。」
「ね。私、何かもうちょっとメルヘンな想像してた。周りにマネジの子居ないし。」
「メルヘン?」
「いやもうほんと、少女漫画っていうか。ほら、五十嵐ちゃんは可愛いから、可愛い子がマネジになってくれたら、皆はりきるんじゃないかなーなんて?」
「あっはは!聡子っぽーい!」
「ああ、まあ間違いでもないんじゃねえ?」
「嘘!?」
「うちは部員多いし、マネジが可愛いからとかそーいうのがやる気に繋がる奴だって別に居て良いじゃん?」
「そ、そんな動機で良いの?」
「それは別に?どんな動機でも、強いなら誰も文句はねえよ。まあそういう意味では向いてんのかもな、五十嵐も。空気作るの得意だし。」
「ムードメーカーだもんね五十嵐ちゃん。」
「なんだ、結構適正あるじゃん。良かったねー、紀伊梨ー。」
「んに・・・・」

ほっぺをつつかれても身じろぎ一つしない紀伊梨。
これはきっと移動のバスでもすやすやコースだろう。

「あれ?でもさ、私風の噂に聞いたんだけど、男子テニス部って部内恋愛禁止になったんじゃなかったの?」
「えっ!?」
「いや?別に?」
「えっ?えっ?どっち?」
「あれー?私聞いたんだけどなー。」
「別に普通にしてれば良いんだよ。ただ、なるべく絡ますなって事。好きな奴が部員だからマネジになってアタックとか、逆に彼女をマネジに勧誘とか、彼女ほしいからマネジの中から選ぶとかそういうのは駄目。」
「ああ、そっちかー。」
「そっか。じゃあ、入ってから仲良くなって両想いに、っていうのは良いんだね?」
「それは良いと思うぜ?そもそも目的は『本分きっちりしろよ』っていうとこだからな。それが出来てれば、まあ。他の事は。」
「「ああ・・・・」」

つい・・・と丸井が目線を動かした先には、サボり癖が一向に直る気配もないのに何故か見逃されているイリュージョニスト様の姿があり、井谷も青羽も全てを察した。

「なんか、凄いんだね。実力至上主義、って感じ。」
「ま、その通りだな。試合で勝てるんならある程度の事は見逃されるし、逆に態度が良くても勝てないとな。」

立海テニス部で一番偉い人種というのは、それこそ三強のような真面目かつ鬼のように強い者達。しかし次点は真面目にやってる勝てない人間ではなく、多少不真面目でも勝てる奴である。

実際は不真面目というか、必要な努力の方向が人と違うだけで努力してることには変わりない。その事を纏める側の人間も分かっているから好きにさせている所もある。
努力や目標の種類も方向も、好きにすればよろしい。
でもちゃんと実力伸ばして成果は上げて。

その方針に沿っているから仁王は多少サボっても許されているというただそれだけの話で、あれで本人が何も掴めていなかったら多分今頃大目玉である。

そう。
そういう意味では、仁王よりもっと問題のある者は学年問わず山ほど居る。実は。


自分も、その一人。


「・・・・?ありゃ?ブンブンおはよ・・・どったの?」
「・・・ん?ああ、いや。つうかお前、いい加減起きろよ?そろそろ朝飯終わるぜ?」
「えっ!?嘘っ!?待って、なんで誰も起こしてくんないの!?」
「起こしたわ!起きなかったんでしょ!」
「取り敢えず、キープできるものはキープしておくからさ。五十嵐ちゃんはどうしても今食べたいものだけ・・・って。」
「早!」