Camp school:With memories 1 - 4/7


本日の午前中は林間合宿最後のイベント。
とは言ってもやる事は比較的ソフトで、近所のガラス細工ミュージアムに見学に行くだけなので、別に体力が必要だったり暑さに耐えねばならなかったりはしなくて良い。

「ふああ・・・・・・」
「ねーねー!あれ・・・って、郁、眠いの?」
「昨日結構、郁遅くまで起きてたよねー。」
「ああ、まあ・・・ちょっと、寝付けなくて。気にしないでくれ。」
「「「?」」」

一緒に回る友人達が解せない顔をする中、郁は一人目をしょぼしょぼさせていた。

そんな友人の様子に?が絶えないのは林。
郁は確かに性格に繊細な部分はあるが、眠れないとか食べられないとかは結構少ない事を友人付き合いの中で知っているからだ。別にばりばり運動できるわけじゃないけれど、環境の変化で体調を崩すことは少ない。

「ねえ郁、どうしたの?」
「どうもしないよ。」
「えー?何か悩んでたりしてない?風邪ひいたとか。」
「・・・・・・・・・取り敢えず、風邪じゃないよ。原因も自分でわかってるし、本当に大したことじゃないんだ。心配しないでくれ。」
「?そう・・・?」

もうちょっとで、誰のせいなんだよと八つ当たりしたくなった。
危ない危ない。

「はあ・・・」

郁の寝不足の原因。
それはずばりスマホと丸井の件であった。

礼を言ったらと林から勧められ、突っぱねたもののなんだか気になり、流石に一言も何も言わないのもアレかなと思い。
しかしさりとて言いにくいことには変わりなく、どうしたらサラッと流すように軽く言えるだろうかと考えた結果、結局第三者の目に入らないところで偶々顔を合わせたのでその時に・・・という風を装おうとしたのだ。

だから狙い目としては、昨日の夜一同が夜間学習で皆より遅れて帰ってくるタイミングがベスト!と思いわざわざ起きていたのだ。起きていたのに、それなのに。

(つくづく計算が狂った・・・なんなんだあれは、夜更かしして話し込むのは女子のする事じゃないのか。何を話してたんだか知らないが、解散してもいつまでも残ってうだうだと・・・)

そう、帰ってきても昨日一同はロビーで話し込んでしまったのだった。
早くしろよこっちも眠いんだよとイライラしつつ、でも割って入る事も出来ず。
それでも根性で解散までは待ったのだが、なんと丸井はその後も残って、紫希と千百合、それに幸村と棗ともう一話(ひとばなし)としゃれこんでしまったのだ。

挙句途中で千百合と紫希が離脱して、隠れて様子を伺っていた自分の方に歩いて来た時、郁は完全にその夜を諦めた。無理。もう無理。今晩は付き合いきれない、眠い。

そうして引っ込んでおやすみなさいしたのは良いが、こうして一夜明けてみるとやっぱり失敗だったかなあという気持ちもある。
眠さとかを抜きにすれば、やっぱりベストタイミングだったのは昨日の夜だった。

おまけに。

(ねえねえ鈴。)
(んー?)
(やっぱりさあ、マジなんじゃないのあの噂・・・)
(えー、ないよー。ないない、流石に。)

「・・・皆、何か僕に言いたいことでも?」
「「「いいえ!」」」
「・・・・・・」

気にしないようにしているが、郁の耳にもあの噂は入っている。


丸井が自分を好きだという噂。


これの困った点は、自分には本当かどうか判断がつかないと言うことだ。
まさか本人に聞くわけにもいかないしというか、誰かに対して本当なのかって聞くというのがそもそも無理というか・・・。

・・・って。

「困らないだろ!」
「「「え!?」」」
「困らないさ、なんで僕が困らなくちゃいけないんだ!本当だろうが嘘だろうがどうだっていいんだよ、嘘なら嘘で今と変わりはないし、本当だったからって僕の知ったことじゃーーーあれ?」
「郁・・・・」
「ど・・・どしたの?」

引き気味の目で自分を見つめる友人達に、郁ははっと正気に返る思いがした。

「す・・・すまない!ごめん、悪かった。なんでもないんだ、何でも・・・・」
「郁、本当に大丈夫?マジで風邪引いてない?」
「自分でわかってないだけかもよ?」
「ホテル寒かったもんねー。」
「大丈夫だ!大丈夫・・・もし本当にまずいようなら、自分でバスに引っ込むから。今日の午後にはもう家なんだし。」
「まあ、それはそうだけど・・・」

(ああ、余計やりにくくなった・・・)

友人達には悪いが、こうやって気にかけられるとスッと離脱してサッと言うこと言って、何食わぬ顔で戻ってくるというのが非常にやりにくい。
また徒に寝不足になってしまったのが余計良くない。頭が回らない。首尾よく苦手なことを成し遂げられるコンディションじゃない。

どうしたもんかな、と悩む郁のポケットには、少々傷ついてでもちゃんと動いているスマホが眠っている。