Camp school:With memories 2 - 4/7


「んー・・・・」

千百合も珍しく悩んでいた。
あーあ面倒くせ面倒くせ。そう思ってストラップのコーナーに直行したまでは良かったが、じゃあどれにしましょうかね、と見回した時に珍しく「おっ。」と思うトンボ玉を見つけたのだ。

見つけたのだけど。

「んー・・・」

アンラッキー。売り切れである。

この商品は品切れですー、の商品の写真付きカードがぶら下がっているだけで、物はもうそこにはなかった。
ああ、でも綺麗だなこれ。写真で見てるだけでも好みだし、これが欲しかった。
もうこの際ストラップじゃなくていいから同じやつが付いてる他のアクセを買おうか。でもそこまでするのも面倒だから、他のストラップでお茶を濁そうか。

「千百合。」
「ん?ああ。・・・お疲れ。」

こうやって周り中に生徒が居ると、流石に精市と呼ぶのが難しい。
そういう所も可愛いと思いはすれど、口には出さないのが幸村の大人なところである。

「悩んでるのかい?珍しいね、即決しないなんて。」
「あ、いや。即決のつもりだったんだけど売り切れてて。」
「売り切れ?」

千百合が指差した先の売り切れ御免のカードを見て、幸村はああ、と口から零した。
綺麗な紫のトンボ玉。ちょっと赤みと黒が混じった濃い紫。

「ストラップで良いと思ったんだけど。」
「・・・・・」
「無いから他のストラップにしようか、別のアクセにしようかって・・・聞いてる?」
「良いね。」
「は?」
「千百合、ちょっと来てくれないかな。」

何の話してるのっていうか、人の話聞いてたの。
背をさりげなく押されながら、その迷い方をしてるんだったら、と言う幸村に千百合は言いかけた口を噤んだ。
そうだった。
この男がもしかして話聞いてなかったの?みたいな行動を取る時は、聞いてないんじゃなくて、聞いた上でいきなり結論を話している時なのだ。

「これはどうかな?」
「これ・・・」

幸村が勧めてきたのはアンクレットだった。

「嫌なら、無理にとは言わないけど。」
「いや、嫌ではないけど。」

寧ろ有難いといえば有難い。
ストラップ以外なら何にしよう、というのを考えるのが面倒だったわけだから、決めてくれるのは楽なんだけど。

「なんでアンクレットなの?」
「うん?」
「何かあるんでしょ、理由が。」

何か「良いな」とか言ってたし、何かアンクレットを推す理由がどこかにあるのだろう。
尋ねると幸村は悪戯っぽい微笑みを浮かべた。

「秘密。」

秘密。
秘密か。秘密ね。

千百合はあまり好かない響きだ。人が(人というか大体棗だが)これを言う時は凡そ碌なことにならないから。

でも。そうね。

「買ってくる。」
「良いのかい?」
「良いよ。」

幸村は自分に酷い事はしない。
それを知ってるから。

だから良いよ、秘密でも。
貴方の秘密なら。

「・・・ちょっと。」
「ん?」
「何、この手は。」
「何って、会計だよ。」
「会計するのは私でしょ。」
「俺だよ?俺が勧めたんだから。」
「理屈がおかしい。」