「それで、そこは途切れ途切れにしか聞こえなかったんだって。」
「そいつ等も言ってるけどさー、網代さん弱みとかなさそうじゃん?ってなると・・・」
「・・・奥の手、とか言うのを使ってくるってことだよね。」
「朝香、もっかい思い出してよ。なんて聞こえた?」
「う~んとね~、しょう・・・とするなら・・・まお・・・よ。って。聞こえたとこはそこだけなんだけど~。」
(しょうとするなら、まおよ・・・?)
なんの事だかよく分からない。
辛うじて推測するならば、「しょう」の部分はおそらく人名ではないだろうか。同様に、「まお」の部分も片づける事が出来る。
更に朝香が聞き逃した部分を推測すると、○○がしょうとするなら、○○はまおよ。とかいうところだろうか。
「でさあ!あたしが考えるに、」
「真美!もう、余計な事は・・・」
「ヨケーじゃないじゃん!有りうることじゃん!」
「真美・・・?」
「あのね~可憐ちゃん。真美ちゃんは、奥の手っていうのが暴力じゃないかって思ってるんだよ~。」
「ぼっ・・・!?」
絶句する可憐。しかし、確かに真美の言う通りというか、有りうる話である。
言葉で言い包められないなら実力行使というわけだ。
「まあ、流石にお互い女だし?殴ったりとか蹴ったりとかはないだろうけど・・・」
「でも、それなら逆にイジメみたいな事する事だってあるしね!それで、可憐も良かったら気を付けてあげて、」
「勿論だよ!ううん、なんなら私、休み時間の間中付きっ切りで・・・!」
「ちょ、ちょっと落ち着いてよ!多分まだ何も始まってないんだから!」
朝香が聞いたのは、言わば実行前の作戦会議の部分である。実際に向こうが行動を始めたとしても、まだ口論のステップが残されている筈だ。
「それで~、今日の朝練とか、変な感じなかった~?」
「そーそー!見慣れない奴が居たりとかさあ、網代さんの様子おかしかったりとか!」
「普通だったと思うんだけど・・・あんまり意識しなかったから自信が無い・・・!」
可憐は頭を抱えた。
知らなかったとはいえ、どうしてもう少しちゃんと見ておかなかったのだろう。
「まあまあ、可憐!ほら、部活中は多分、滅多な事は無いよ!」
「ま、あそこは跡部のフィールドだからね!」
「それより可憐ちゃん、私の聞いた人の名前~。」
「うん・・・しょう君?とまおさん?だよね。」
少なくともテニス部と自分のクラスには、その名前の該当者が居ない。
「でも、実際「しょう」って名前はキッツイわよねー!」
「無数に居るもんね、「しょう」なんて・・・」
可憐は真美に同意せざるを得ない。漢字が分かっているならまだしも、このマンモス校でその汎用性の高い名前を出されると。
「「まお」も、「まお」だけじゃ男か女か分かんないし~。」
「ま!取り敢えず、私達3人は名前を気にしつつ、なるべく網代さんの事気にかけましょ!
可憐は主に部活中だけど、気を抜かないで見ててね!」
「うん!」
可憐は思わず拳を握る。
やらなければ。
大事な友人を守るのだ。
「・・・・あの~。」
「「「うん?」」」
「実はさっき、瑠璃や真美にも言ってなかった事があって~。」
「はああ!?」
「早く言いなさいよ!」
「違うんだって~!そんな大事な事じゃないかもって思って~!」
「それはミンナで考える事なのー!」
「で?何よ?」
「・・・あのね~。」
榎本は少し言いにくそうに可憐を見て、口を開いた。
「実は、私の聞いた話続きがあって~・・・」