Rudeness 1 - 5/7


昼休み。
チャイムが鳴ると、忍足は何時になくサッと席を立った。

「あれ?忍足?」
「何か用事?」
「ああ。ちょっと行かなあかんとこあんねん。」

厳密に言うと行く場所とはちょっとニュアンスが違うのだが、まあ良い。

(それより早よ行かへんと、安心出来へん)

その思いが、忍足の足を何時もよりちょっと早くさせる。
廊下を進み、階段を下り、角を曲がって、いつも行くサロン。

「あ、見て見て、忍足君!」
「サロンに良く来るって本当だったんだー!」
「・・・って、あ、あれ?」

・・・を、華麗にスルーしたら其処の階段を上って、2階。ええい、まだ着かない。無駄に広いこの学校。
でも後は真っ直ぐ。ひたすら真っ直ぐ。
真っ直ぐ行って。




ーーー見えた。




「ご、ごめんなさいっ!ごめんなさい、急いでて、わ!と、とっーーー」

人を避けた拍子に足が縺れる。迫ってくる、ワックスで光った廊下の床に、良く知ってる衝撃が走ると思いきや。

「・・・あれ?え!忍足君!?」
「急がんでもええ、言うたのに。」

そうは言っても走ってくるんだろうな、とは思っていた。だから待ち合わせ場所じゃなくて教室まで迎えに来たのだが。

「ご、ごめんね!時間が惜しくて、ついっ!」
「別に謝らんでええけど、怪我せんといてや?」
「うんっ!」

忍足はやっぱり優しい。
胸がほんのり暖かくなるのを感じながら、可憐は忍足に並んで歩き出した。

「でもびっくりしたわ。」
「え?」
「いきなり大事な話があるとか言われるし、待ち合わせ場所部室やとか言うし。」

中休みの時、携帯が鳴ったので見ると可憐から昼休みに会いたいと言う連絡だった。
単純に昼食の話かと思ったが、どうも違う。

部室を指定するのは、其処なら絶対他に誰も居ないと分かっているからだ。
という事は聞かれたくない、邪魔の入らない状態でしたい話という事になる。

「私刑か、告白か、どっちやろなあ思て・・・」
「えええっ!?わ、私そんな事しないよっ!」
「冗談やて。」
「忍足君の冗談は分かりにくいよ!」

忍足は冗談を言う時表情を一切変えないので、何処まで真面目に言ってるのか可憐は分からなくなる。

(もう・・・又笑うんだから、そうやって!)

堪忍やで、と言いながら緩んでいる口元。
そんなに自分をからかうのは楽しいのだろうか。

ちょっと拗ねて歩いていると、部室棟が見えてきた。

「あ。そういえば鍵・・・」
「あるよっ!中休みの間に借りてきておいたから!」
「へえ。準備ええな。」
「・・・うん。」

(ん?)

可憐の顔つきが変わった。

「絶対、誰にも聞かれたくないの。だから。」
「・・・そうなん。」

これは只事ではない。
そう感じる忍足の耳に、可憐の開ける鍵の音がやけに大きく響いた。










中に入ると、可憐は1つ深呼吸をした。

正直、迷いはある。
あくまで渦中の人間は網代なのに、網代の許可なく話を広めて良いのだろうかという迷いが。

でも。

「可憐ちゃん?」
「え?」
「ほら。話、あるんやろ?」
「・・・うん。」

しんとした部室で、2人は持参していた弁当を広げた。

こんな気持ちで今日の昼食を食べる事になるなんて、可憐は思ってもみなかった。

「・・・それでね。あの、話なんだけど。」
「おん。」
「実は・・・」

可憐は忍足に話した。
自分ではなく朝香が聞いたという事を踏まえて、元マネージャーの生徒たちが戻りたがっている事。
その為に網代を説き伏せようとしているらしい事。
奥の手とやらが向こうにはあり、それは暴力や苛めかもしれないという事。

聞き終わると、忍足は食事の手を止めて目を細め、下を向いた。
思考の時の顔をしている。

「・・・成程なあ。」

今の話を聞くに、忍足は忍足で思う所がある。
色々と。

先ず。

「・・・可憐ちゃんには言うとくべきやったかも分からんな。」
「え・・・?」
「先ず、そもそもやけどな。なんで今迄居たマネージャー、全員撥ねられたか知っとる?」
「・・・ううん。茉奈花ちゃんは部長様がちょっと、って言ってたけど・・・」
「せやなあ。今更原因は云々とかいう話もナンセンスやけど、発端言うたら跡部になるわ。」

忍足は話し始めた。