「ハンカチと、ティッシュと、タオルと、財布と、お弁当、携帯・・・」
自宅にて夕食をもぐもぐしながらぶつぶつ言う愛娘を、父・健二は不可思議な目で見つめる。
「遥、可憐はどうしたんだ?」
「明日関東大会だから、忘れ物しないように、って頑張ってるんだよ!って、そういう私も不安なんだけど・・・何か忘れてる気がする、アクエリ入れて、冷やしタオル入れて、保冷材入れて、」
「お、おいおい・・・」
「会場までの地図と、時刻表と、ファイルと、バインダーと、」
「そういうのって持って行く物じゃなくて部で管理するものだって美梨は思うんだけど、違うの?」
「・・・はっ!そうだ、そうだったっ!」
「お姉ちゃん、だいじょーぶ?」
全然大丈夫じゃない事を本人はおろか家族の全員が察している。
(あああ駄目っ!落ち着かない、全然落ち着かないよっ!とは言ってもどうしたら良いのかわかんないし・・・)
「お姉ちゃん、それお母さんのお茶だよ?」
母のお茶を間違って飲んでいる事にも、それに注意されていることにも気づかないくらい落ち着いていない可憐。
その左手に置いてあったスマホが、ピロンと鳴った。
「は、はいっ!誰っ、何っ、どうしたの・・・・あれっ?紀伊梨ちゃんっ?」
『可憐たん!』
『いよいよ明日から大会ですな☆』
『可憐たんも来るんっしょ?マネジだもんね☆』
『そいでさ!そいでさ!お弁当一緒に食べない?』