「しっかしリスキーな提案をしたもんだなw」
電車に揺られながら棗は言った。
今日から関東、勝ち進めば全国と、開催地は東京になる。
なので今日以降移動は電車だ。
「リスキ?」
「危険がある、という事です。」
「危険?なんでー?」
「だってランチっつったって今日は無理でしょw」
「明日になりますよね・・・」
「お互い午前だしね。」
関東大会は、初日は1戦しかしない。
4つしかないハードコートを16校で使う為、1回戦を丸一日かけてこなすのだ。
立海と氷帝は、お互いに開会式を済ませたらその後直ぐに試合。
それが終わったら昼を待たずに解散である。
つまりランチはお互い帰校してから。
だから合同ランチしようと思うなら2日目しかない。
そして2回戦は午前。とどのつまり、紀伊梨の提案はお互いに1、2回戦を勝ち抜くと当て込んでの物になるのである。
そりゃあ他校から負けるんじゃないの負けるんじゃないのと心配されるのも引っかかるが、当然そっちも勝つよね!とみなされるのもちょっと。
「???えー?別に良くなーい?だってきっと勝つっしょー!氷帝って強いってやなぎーも言ってたし!」
「まあ実際問題、勝つ可能性は高いんだけどさw」
「柳が言ってたってなると信憑性高いわね。」
「もしお互い勝ち進んだとして、ええと・・・当たるのは決勝になるんですね。」
「なんだそのカードはw見たいような見るのが怖いようなw」
「あ!ねーねー紫希ぴょん、あそこはー?」
「どこですか?」
「えーと、あのー、ほら!じょ・・・えー、あのナイスバディな美人せんせーの居た所!」
「城西湘南ですね、ええと・・・準決勝、です。」
その準決勝というのもお互い勝てばという枕詞がつくが、まあ勝ち進んでくるだろう。
以前幸村に言ったところによると、向こうも今大会からはレギュラーをぶつけてくるはずだ。
「ていうか、気になるんなら名前くらい覚えとけよ。」
「学校の名前ってむつかしーんだもーん!なんかどれも似てるしさー!」
「それはわかるかもw」
「〇〇第一、第二、第三、とか間違えちゃいそうですよね。」
「ああ、××中学と東××中学とか。」
「そこへ行くと氷帝って名前わかりやすいなw」
「偶々なんでしょうけど、跡部君のイメージにぴったりです。」
「そう言われたら、立海って名前も外から見るとそこそこなのかもね。」
「あそこも面白かったよねー!あのー、あずあずが通ってるって言ってた青春!青春・・・中学?」
「ああwそういやそんな名前してたな、桃崎ちゃんの学校w」
「確か、青春学園です。略して青学と皆呼んでらっしゃるとか・・・」
「青春学園・・・・」
なんという響き。
自分みたいな人間は、もうその学校の名前だけで進学の選択肢から外しそうだ。
「・・・そういや、こないだ梓と会った時に居た男子。」
「ああ、あの遠目でちらっと見たクラスメイトの美少年かw」
「不二周助君、でしたよね?」
「そ。彼奴もテニス部なんだって梓が言ってた。って、可憐が言ってた。」
「へー!あ!じゃあじゃあ、周ちゃんとも今日会えるかな!」
一言も面と向かってやり取りしたことないのに、早くも「周ちゃん」呼びの紀伊梨。
まあ優しそうな顔してたし多分受け入れてくれるでしょう、なんて思いながら棗はトーナメント表を見直した。
「・・・ああ駄目だわw」
「何がですか?」
「青学の名前が載ってないわw地区予選か都大会で敗退しとるw」
「あーあ。」
「えー!じゃー会えないのかー。お喋りできると思ったのになー!」
「青学ってそんな強くないんだ?」
「まあ実際、関東大会に来れてないからなw」
「都大会には出たんでしょうか?」
「可憐なら知ってるかもね。同じ東京だし、まめだから一通りはマークしてるでしょ。」
「おっしゃ、聞いてみよー!」
話しながら揺られながら、景色はいつしか見慣れない物に。
『次は、東京。東京です。どなた様も、お忘れ物のないようにー・・・』
到着まで後20分。