First region competition:First round 1 - 5/9


樹の言う通り、此処は4つあるテニスコートが地形のせいで2コートづつ分かれている。
なので油断してふらふら歩いていると、迷子が多発するのである。

この男もそう。

「あれー?おっかしいなあ、テニスコートはこっちって書いてあったから歩いて来たのに。」

案内板に従って歩いていたら、確かにテニスコートの気配はする。するが、どうも見覚えがない。自分の学校のメンバー達も見ないし。

「うーん・・・まあ先輩達の試合は午後からだから、まだ焦らなくても良いと言えば良いんだけどね。」

それに他校の女子可愛いし。
なんて思ってても言っちゃいけないな、こういうのは口に出しちゃうと女の子は寧ろ引いて行っちゃうからね。
とか考えていても、顔がどうしてもルンルンと喜びに浮かれるのは抑えきれない。

「ええと、あと受付に提出するものが・・・きゃうっ!」
「おっと!」
「いたた・・・ご、ごめんなさいっ!ちょっと前が疎かにっ!」
「いやいや、良いんだよ!気にしないで!」
「あ、有難う、そう言って貰えると・・・」

何かに焦るとすぐぶつかる可憐の手を引いてくれた少年。
このユニフォームは。

「・・・あれっ?山吹中の人っ?」
「そうだよ♪」

そう、その濃い緑は山吹中学のユニフォームである。

「俺は千石清純っていうんだ、よろしくね。君は氷帝の・・・マネージャーさんだよね?いやあ、可愛いなあ!流石氷帝、テニスだけじゃなくて女子もレベルが高いね!」
「あ、え、ええっ!?ええと、ええと・・・」
「おお、見た目だけじゃなくて反応も可愛い♪良いなあ、うちにもマネージャーが居れば良いんだけど。」
「えええ・・・って、そうじゃなくてっ!山吹中の人がどうしてここに居るのっ?第3コートだよねっ?」
「えっ!あ、えーと・・・その。恥ずかしいんだけど、ちょっと迷子っぽくなっちゃって?いやあ、コートがまさか2箇所あるとは!ちょっとした罠だよね。」

(正直、わかる気もする・・・)

可憐だって、今日色んな人から何度言われたか。
今日の会場はコートが離れてるからな、絶対間違えるなよ、他所の所に行くんじゃないぞ、極力元いた場所から離れるなよ。
向日から迷子になったら帰ってこれないからな!と言われたときは流石に憤慨した。幼児に脅しをかけてるんじゃないんだぞ。

「それじゃあ私、案内しよっかっ?」
「えっ?良いの?」
「うんっ!ちょうど受付に行く所だし、あっちのコートも一応さっき皆と場所を確認したから、多分大丈夫っ!」

(・・・大丈夫、だよねっ?)

そこはかとなく嫌な予感がする気もするが。自分はドジだし。
いやでも、落ち着いてやれば大丈夫なはずだ。
そもそも此処とあっちのコートは、距離的には確かに遠いが道としてはほぼ1本道なのである。間違う方が難しいくらいだよね、なんて皆も言ってたし。
うん、平気平気。

何気に不安要素たっぷりな事など露知らず、千石はすっかりこれで万事解決と言わんばかりに安心モードである。

「良かった、助かるよ!一時はどうなることかと思ったけれど、迷子になってこんな可愛い女の子に道案内して貰えるとはね。やっぱり俺ってラッキー♪」
「ラ、ラッキーかなっ?迷ってる時点でラッキーじゃない気も・・・」
「何言ってるんだい、そんな事ないよ!ラッキーに多少のアクシデントはつきものだからね。そうだろ?」

底抜けに明るい顔で笑ってそう言う千石。
可憐はその笑顔につられて、つい笑ったのだった。