「今何時?」
「8時丁度です。」
「おーーー!ちょーはやーい!」
「早すぎだろw後1時間あるわw」
関東大会初日にて、危うく初戦を見逃すかと思われたギリギリ具合で到着した4人。
それを警戒して早く集まろうと頑張った結果、今度は早く着きすぎた。
「暇いwちょっとこれ、涼しいところに居ようぜw」
「もうどっかコンビニに引っ込んどかない?暑苦しいしさ。」
「でもさー、こんなに早いのにジャージ着てる人達はいっぱい居るよねー!」
「皆、準備があるんだと思います。大変ですよね、試合もあるのに・・・」
今日の試合開始は9時から。
だから見てる方は9時に来ればいいが、選手たちは色々やる事があるのでそうも言ってられない。
「可憐ちゃんも、きっともう居らしてますよね。」
「あー、多分ね。お疲れって感じ。」
「倒れないと良いけどなw今日も暑いぞおw」
「席日陰だと良いなー!」
「そうだ。」
「「「?」」」
「お前、朝変だったけど体調悪いんじゃないの?」
「・・・・あー。」
「えっ!?なっちんしんどいの!?」
「大丈夫ですか?あんまり無理はしない方が、」
「大丈夫大丈夫w平気平気w」
「倒れても助けないから、今のうち家帰ったら。」
「ひっでえw」
そもそも誰のせいだと思ってるんだ、とは言わないでおいた。
今日。
今日の成り行きがどうなるかはわからないが、取りあえず今日、千百合は転校云々の問題に結論を出すはず。
城成湘南とは、午後の準決勝で当たる。
ちょっと当たる前に敗退してくれないかなーなんて甘い事を考えつつ、まあ期待するだけ無駄だろうねと諦めつつ。
「で。今日のコートどっち?」
「まあ待てw今日は存分に迷えるからw」
「こないだと同じとこじゃにゃいのー?」
「ずっと同じコートではやらないんじゃないかと・・・・あ。」
4人の足元にカサッと舞い込んでくる紙片。
折りたたまれて癖づけられたトーナメント表には、「山吹中」の所が赤ペンで囲われてある。
「ごめーん!それ俺のなんだ、ごめんね!」
走ってくるオレンジの髪の少年ーーー千石は、ばっちり「山吹中」と書いたジャージを着ている。
「はい、どうぞ。」
「有難う!いやあ、チェックしてたら急に風が吹いちゃってさ!でもこんな可愛い女の子に拾って貰えるなんて、これもまたラッキー♪」
「え、」
「なんだ新手のナンパ師かw」
「山吹中ね、覚えた。監督か誰かに言いつけよ。」
「いやいやいや!そういうわけじゃないよ、わざと飛ばしたとかじゃないから!」
「ねーねー!この紙のさー。」
「ん?おおっ!君もとびっきり可愛いね!なんだい?」
「この赤いのって自分のがっこーが分かるようにっしょ?この青いのはー?」
「ああ、それだね。それはね、俺が独自で調査した女子レベルの高い学校のマーク♪」
「「「・・・・・」」」
「・・・あ、あれ?」
「へー!じゃあじゃあ、この青いとこは可愛い女の子がいっぱい居るのー?」
「えっ、いや冗談だよ!ジョークジョーク!またまた~、って言って笑ってくれるのを期待して・・・そんな黙らないで!」
「紛らわしいw」
「分かりづらいわ、いかにもマジでやりそう。」
「ええっ、そうかなあ?ううん、君も可愛い顔してなかなか手厳しいなあ・・・」
「じゃあ、青は本当はどういう意味なんですか?」
「これは本当はね、俺が独自で調査した「注目株の居る学校」なんだよ。」
「ちゅーもくかぶ?」
「まあ、完全に俺の独断だけどね。良い選手だな、手強そうだな、っていう選手の居る学校がわかるようにしてるのさ!」
(意外にまともな理由だったw)
(最初からそう言えば良いのに。)
「おーーー!すごいすごい、かっこいいー!」
「そう?有難う!やっぱり女の子に褒められるとテンション上がるなあ♪」
「・・・立海もマークしてあるんですね。」
「うん?うん!そりゃあ勿論、関東の王者だからね。」
千石はスッと真面目な眼差しになって言った。
「所謂名門のネームバリューっていうのは、割と簡単に地に落ちてしまうことも少なくないんだけど。・・・青学みたいにね。」
「ねーむばりゅ?が、ちに落ちる・・・」
「バリューは価値っていう意味の英語です。所謂ブランドというか、有名さというか・・・それが無くなるという感じの事です。」
「青学って名門だったんだ。」
「うん、まあ昔の話さ。俺達の親くらいの時代かな?」
「マジで結構昔だなw」
「そうだよ?最近はまあ、関東大会にもなかなか顔を出さなくなっちゃってるみたいだからね。今年は手塚君が居るからどうかと思ったんだけど。」
「手塚君?って誰?」
「青学の選手さ!強い上に有名なんだ、中学テニス界でこの名を知らない者は居ない。」
「おーーー!」
「マジか、初耳だw」
「千百合っちゆっきーとかから聞いた事あるー?」
「いや、あんまり個人で名指しするような話しないし。」
「柳君ならご存知でしょうか?」
「多分なw」
「まあまあ、話を戻すけど、兎に角名門だからって良い選手がずらりとは限らないんだ。でも、今年の立海は良い意味で去年と全然違う。弱体化どころか、何倍にもパワーアップして帰ってきた!って感じだね。」
「「「へー・・・・」」」
「おーー!すごーい!」
何かこう、知らない人に会うたび会うたび立海凄い!マジ王者!と褒められると、若干微妙なものがあるというか、手放しで喜べない。
いや、凄いのは良いことだし嬉しいのだが、あんまり褒められるとピンとこないというか、そんなに凄いんだー・・・みたいな他人事感を覚えてしまう。
「ねーねー!他には?他には?」
「他?うーんそうだな。色んな所があるけれど・・・
・・・やっぱり、今年一番目を引く、という意味では立海以上に氷帝学園だろうね!」
強さが、という以上に目立つのはその変わりぶり。
今までの体制や伝統など端から覆して、0から急速かつ頑強に作り直し上げられた氷帝テニス部は、今年ある意味では立海以上に熱い眼差しを向けられている。
「やっぱ注目選手って意味では跡部様すかw」
「うん!まあ彼は色んな意味で有名だからね。経歴とか、お金持ちぶりとか、部の切り盛りの仕方とか。でも、やっぱり彼のコートでの一番の武器はオーラかなあ?同級生とは思えない空気だよ。」
「へー!そーいえば、紀伊梨ちゃん達べ様のテニス見たことないねー。」
「その内見られるでしょ。負けなければ。」
「というか、君達詳しいね?私服だけど、もしかして氷帝の生徒?」
「うーうん!紀伊梨ちゃん達違うお!」
「友達が氷帝に居るんです。」
「そうなの?いやあ奇遇だね、俺もそうなんだ!実は初日にコートをまち、ゴホン!いやいや、諸事情で氷帝の方に行く機会があったんだけどね、そこで可愛いマネージャーさんに会ったんだ♪ちょっと・・・いやかなりうっかりさんだったけど、そこがまたいい感じだったなあ。」
かなりうっかりさん。
の、氷帝マネージャーというと。
「可憐たん?」
「あれっ?知り合い?」
ああやっぱりね。