「は・・・・」
さっき溜息を吐く為に開いた日吉の口は、呆然として再度開いた。
「「「勝つのは氷帝!」」」
「「「勝つのは氷帝!」」」
「「「負けるの関(せき)中!」」」
「「「負けるの関中!」」」
「あーん、跡部君試合しないかなー!」
「ちょっと、かがんでよ!跡部君が見えないじゃない!」
「そっちこそ、もっとずれてよ!」
「あっ、跡部君が立ち上がった!」
「嘘、どこどこ!?」
「・・・・・」
「す、凄い人ですね・・・」
「あはは・・・えと、わかってくれたかなっ?この調子だから、今みたく途中から見に来ても、大体何も見えなくってっ。」
こっちだよ、と案内すると2人ともついてはくるが、やはり色々気になるらしくちら、ちら、とギャラリーの方を振り向きながらになる。
分かるよ。
幾ら応援多いって言ったって、普通はこうはならないもんね。
「あっ、ここここ!此処で見てねっ!」
「「此処・・・?」」
可憐の案内した「此処」。
ビニールシートにパイプ椅子(跡部はペルシャ絨毯と革張りのソファを置くべきかと言っていたが全員で却下した)のスペースに、此処は見学者が来ますから跡部に怒られたくない人は座らないでちゃんと空けといてねと張り紙がしてある。
勿論解説役になる可憐の椅子もちゃんと有り。
それは良い。
それは良いんだけど。
「・・・あの。」
「はいっ!何かな日吉君っ!」
「あっちで見ても良いですかね。」
「あっ、あっちは部外者は立ち入り禁止なんだっ!2人は確かに幼稚舎だけど、まだ氷帝テニス部じゃないから・・・ごめんねっ!」
(本気かよ・・・)
(これは、ちょっと・・・)
ぎこちなく座る2人。
やばい。
周りが煩すぎる。
ここのスペースは確保されていても、そのスペースのぐるりはギャラリーに取り囲まれていることには変わりないのだ。
音と人の壁の圧が凄すぎて、試合に集中できない。折角来たのに。
「よしっ!じゃあ早速見てみてっ!って言っても、もうD2は始まっちゃってるけどっ。」
「それは良いんですが、それはそれとして1つ良いですか。」
「?」
「あの跡部さんという人は今日の試合、出るんですか?」
今日の日吉の大きな目的の一つがそれである。
跡部は中等部から氷帝に入学したため、幼稚舎の生徒は一応まだ厳密にはあの王がいかなる人物なのか知らない。
ただ、それはそれとして跡部の存在は噂という形でかなり幼稚舎に広まっている。
あり得ないくらいの金持で、びっくりする程俺様で、信じられないような求心力を持ち。
そして、この人数の部員の誰より強いテニスの腕前がある。
お手並み拝見といきたいところなのだ、日吉的には。
だが。
「ごめんね、今日は跡部君は多分出ないかなあっ。」
「ですか。まあ予想は出来てましたけど。」
「残念です・・・」
一応可能性としては0ではない。
跡部は今行われている関中学校との試合、S1にちゃんと入っているからだ。
ただ、跡部の見解としてこの試合も3タテして勝つとの事だった。
だからおそらく回ってこない。基本、跡部の見解は外れないし。
「あ。」
「あ?」
「あの、もしこの試合勝ったとして、そしたら次は決勝戦ですよね?」
「うんっ!」
「決勝戦でも跡部さんは出ないんですか?」
「えっ?」
「あっちのブロックに王者立海が居るって、トーナメント表で見て知ってます。格上の人達と当たることになるのなら、跡部さんがS3になる可能性はありませんか?」
鳳の言っていることは、これもまたオーダーの戦法である。
敢えてS1に一番の選手を置かないことで、1敗覚悟で1勝を確実に取りに行くわけだ。
成程。
「確かにそういう事はあるかもっ!跡部君に聞いてみるよっ!」
「本当ですか?良かった!日吉、決勝では跡部さんが見られるかもだよ!」
「「かも」だろ。そもそもそれ以前に、決勝の日に俺達側の都合がつくかどうかもまだわからないんだ。」
「うん・・・まあ、そうだけど。」
(日吉君はきついなあ・・・)
「で?」
「えっ?」
「えっ、じゃないですよ。今の相手はどういう相手でこっちのペアはどういうペアなのか、ザッとで良いんで早く教えて下さい。」
「日吉!」
「あっ!ご、ごめんねっ!ええとええと、今の相手は関中学校で、」