First region competition:Semi final round 1 - 8/10


「どうですか。」
「スピード特化型タイプだ。」

東雲がはっきりと言った。

「前衛も後衛も区別なく、兎に角早い。拾いまくるスタイルだな。」
「俺も東雲もパワータイプだからなあ。威力じゃ敵わないって最初から踏んでるんだ。」

それにしたって大した足だぜ、と呟く佐川の視線の先には、向こうのペア。

大した足。
そりゃ大した足だろう。

そのハーフである身体スペックを活かして磨きをかけ、今の時点で部内でもトップレベルのスピードを持つ桑原。
その桑原レベルの足を持つ者が、2人揃っているわけだ。

(・・・コーディネーションか。これもまた、プレゼンというわけだね。)

自分に任せてくれたら、ここまで伸ばしてやれる。
この試合は、その点を幸村にアピールしているのだろう。

普通の選手でもこのレベルにはしてあげるけど、素質として抜群のものを持った幸村のような逸材なら・・・後はわかるわね?
華村がそう言い聞かせてくるようである。

「これからどうするおつもりですか?」
「「パワーで押していく。」」

佐川と東雲は当然という態度で言った。

「あくまでスタンスは変えないということですね?」
「まあ、少しは意地ってのもあるが。」
「それ以前に、あっちはスピード勝負をしたいわけだからな。でも、別にわざわざ相手の得意分野で勝負してやる必要もないんだ。」
「うむ、妥当ですね。」
「・・・・・」
「幸村?どうした?」
「いえ、なんでも。ですが引き続き注意はしてください。これ以上不戦敗を重ねるわけにもいきません。」
「ああ、勿論だ。」

ベンチから再び立ち上がる佐川と東雲。
幸村はその背を思案顔で見送った。


「プレイ!」


「あっちのサーブだぞ、佐川。」
「ああ、気を付ける。」


「はあっ!」


(来た!普通のサーブだ!)
(やっぱりこいつ等はスナイプするタイプじゃない。スピードでこっちのスタミナを奪う気だ!)

「いけ、東雲!」
「言われなくても!」

相手は、パワーでは立海側に劣っている。
それを知っているから、基本ボレーを返さない。
一度バウンドして威力を弱めないと返せないのがわかっているのだ。

それなら簡単。
弱められて尚返せない威力をショットに込めてやればそれで良い。

「・・・・はああっ!」


ドカ!


「くっ!」

「アウト!0-15!」

やはり返してきた。
でも狙い通りだ。返し切れていない。ネットのこっち側に返すのが精一杯で、まともにリターンが望めないのだ。

に、と笑うと城成湘南のプレイヤーはこっちを見て舌打ちする。

「ちっ・・・馬鹿力め。」

馬鹿力。
今此奴、馬鹿力と言ったのか。自分に向かって。

「ふっ!」
「何がおかしい!」

そりゃあおかしいに決まってる。

「お前、本当に今のが馬鹿力の打つショットだと思うのか?「たかだか」俺程度のパワーで?」
「何?」

「うちの1年はもっと強いぜ。」

佐川と東雲はパワータイプである。
が、それは単に個人のパラメータで見てパワーが一番優れている、というだけ。
絶対的なパワーの強さでは、今の時点で既に幸村・真田より若干劣るのである。
多分その内柳にも抜かれるだろう。せめて卒業までは勝っていたいなと思う、先輩のプライド。

「俺達が立海一番のパワー自慢だなんて思うなよ?上には上がいるんだ。」
「・・・・マジかよ。」
「俺は大真面目だ。」




「柳。」
「なんだ?」
「あっちのペアのデータなんだけれど、城成湘南にスカウトで入ったかどうかはわかるかい?スカウトなら、前の学校でどんな成績だったかも。」
「確かそのデータはあった筈だが・・・ああそうだな、2人ともスカウトだ。前の学校では優秀な人材ではあったが、城成湘南に集められた者全体の成績順でいうと・・・まあ、並みか少々下回る、というところだな。と言おうか・・・」
「?」
「現時点での城成湘南のプレイヤーとしても、あの2人の実力は然程ではない。レギュラーにはなれるだろうが、補欠といった所だな。」
「何?では欠員が出ているのか?」
「いや、そういうデータは無い。なんらかの事情で、あの2人が繰り上がりでD1を努めていると見る方が正しいだろう。」
「・・・・・・」

幸村は考える。

多分。
あの2人は捨て石だ。

並みの者でもここまでの仕上がりになるという伸びしろアピールをする為に選ばれた。本当の実力ではないのだ。
佐川と東雲は、おそらく差をつけて勝てるだろう。
華村もそれは織り込み済みの筈。
この試合はアピールのための試合であって、向こうも元よりD1で立海に勝てると思っていない。

「ゲーム立海!1-3!」

立海が盛り返し始めた。
まあそうだろうねと観客がーーー相手校の顧問さえも思う中で、立海がD1での勝利を勝ち取るまでもう少し。