ベンチに引っ込んだ幸村は、タオルで汗を拭く。
暑い。
まだ然程動いてないのに。
「幸村、どうだ。」
「こういう言い方はどうかと思うけれど、普通と言おうかな。取り立てて変わったことをしては来ないね。まあただ、試合としてはまだ序盤も序盤だから。」
「ああ、これから仕掛けてくる可能性は89.97%だ。」
「お前なら問題はないと思うが、用心していけ。」
「ああ、勿論・・・・」
「幸村?」
「・・・いや。なんでもない。」
そう言いながら、幸村の視線は平川から離れない。
幸村の第六感は知っているというか、わかっているのだ。
彼奴は、敵だ。
「うん・・・膝は問題ないわね。」
「だから大丈夫ですって。」
「そういうわけにいかないのよ。大丈夫と思ってもそうでない事例なんて、山ほどあるんだから。」
擦りむいた膝に大型絆創膏を貼ってもらう平川。
「有難うございます。じゃあ・・・」
「待ちなさい、平川君。」
「・・・はい。」
「もう一つタイムをとった理由があるわ。貴方、さっきショットを躊躇ったでしょう。何故なの?」
打ちたくなかったからだよ。
とはまさか言えない。
どんなに強くそう思っていたとしても。
「あの距離から、打てるかどうかと思って。」
「打てない、と思ったの?」
「・・・迷ったんです。どっちつかずになっちまって、それで足が縺れて。」
「そう、成程ね。でもそれは一番やってはいけない事だわ。結局ポイントを取られることになるし、今回のように体勢が崩れて事故に繋がるわよ。」
「・・・はい。」
わかってるよそんな事。