First region competition:After the game - 4/8


「あー!やーっとがっこー見えてきたー!」

試合後、紀伊梨と郁は今やっと学校の射程圏内に入った所であった。
因みにテニス部はもう学校に着いている片付けがあっても、送迎バスがある方が早いからだ。

「つっかれた~!暑いよ~!ねーいっちー、着いたらジュース買お・・・あり?いっちー?」
「・・・・・・」
「おーい!いっちー!」

(どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、)

バクン、バクン、と心臓が逸りだす。

なんで母校に来ただけでこんな緊張しなくちゃいけないんだろう。
いやこれはあれだよ。
テニス部にばれないかどうか心配なんだよ。

「いっちー!」
「!な、なんだ!」
「がっこー着いたけど、いっちーどーすんの?紀伊梨ちゃんテニス部の方行くお?」
「あ・・・・」

まずい。
もう考えてる時間がない。

「ゆっきー達に来てるーってばれるの嫌なんっしょー?あ!紀伊梨ちゃん、えーと鈴ちゃん?鈴ちゃんの事呼んできてあげよっか!」
「い、いや良い!それはばれる!」
「あり?そお?」

そんなの、確かに直接郁のことは話題に出してないかもしれないが、出してるも同じだ。
林の友達でかつテニス部に顔出せない人間なんて、柳のデータや幸村の察する能力の前では瞬間で見透かされる。

「じゃーどーするのー?その辺でかくれんぼしながら鈴ちゃんの事待ってるのー?」
「う、ううん・・・」

まあ、それしかない。
出ていけないんだから。


だが。


「・・・い、ちおうぎりぎりまで隠れながら近づいてみるよ。」
「お!?」
「よ、要はばれなければ良いんだよ!あんまり離れていても鈴奈を見逃しかねないし、なるべく近くの方が良いことは良いし・・・」

まずい。
口が勝手に喋る。

何言ってるんだ、此処で適当に木の陰にでも隠れて待ってろよ。
林にLINEを入れて置いたら向こうで見つけてくれるだろ、それで良いじゃんと冷静な自分が言う。
でもそれ以上に冷静でない自分が、隠れるなんてダメだ!と叫ぶ。

そうやって隠れて林と合流して、帰っちゃうつもりか?
そうだよ、当たり前だろ。
馬鹿!なんの為にわざわざ学校に寄ったんだよ!
鈴奈と帰るためだろ、何言ってるんだ。


そうじゃないだろ!


何がそうじゃないんだよ、という結論に凄く必死になって見て見ぬふりをしてる間に、郁の足は先導してくれる紀伊梨についていって、段々テニス部へと近づいて行く。

冷静じゃない方の自分が囁く。

おい、これは渡りに船だぞ。
なんてったって、ここには五十嵐さんしか居ないんだ。
春日さんでもまあ大丈夫だったろうが、黒崎さんは鋭い。彼女が居れば、絶対何やってんの?とかって掘り下げられるところだったぞ。
わかるか?これは神の采配なんだよ!
神様は、お前の味方なんだ!行けよ!

どこへ行けっていうんだ。
適当な事わめくなよ。

冷静な自分の声が段々小さくなって来た頃、2人はテニス部の敷地まで着いた。

「つい、たー・・・ととと!あむないあむない、大声出したらばれちゃうかんねっ!」
「ああ・・・もう既に大声のような気もするがね・・・」
「あり?まー大丈夫大丈夫!で、えーとゆっきー達はどこかに・・・あり?」
「どうしたんだい?」
「あれー?何か全然人居ないっぽいよー?ちょー少ないー!」
「え、」

ちょっと待って。
人が居ない。
全然いないではなく、少ない。ちらほら見る。


その状況ってつまりーーーー


「五十嵐、お疲れさま。」

そう言って片手を上げる幸村、真田、柳は、もう制服姿でラケットバッグを背負っている。

うん。
そうだよね。
多分今解散したばっかりなんだろう。

「あ!ゆっきー!真田っち!やなぎー!お疲れちゃーん!・・・って!あ!やばいやばい、いっちー!隠れるんだ早く!」
「いや、もう良いよ・・・」

あまりに遅い。色々手遅れすぎる。というかいっちーって言っちゃってるじゃん。

「一条さんも来ていたんだね。」
「ああ・・・まあ、その。」
「鈴ちゃんと帰りたいんだってー!居る?」
「綽名で呼ぶな、誰だかわからんだろう!」
「真田、林の事だ。1年生の林鈴奈だ。しかし・・・」
「お?」
「彼女はもう帰ったぞ。」
「え!?」

素でびっくりな紀伊梨に、幸村はちょっと申し訳なさそうに微笑んだ。

「今日は色々話し合いたい事があってね。マネージャーには一足早く解散して貰ったんだよ。」
「えーーー!マジかー!マジかー!ちゃんと急いだのにー!」
「おい、待たんか。」
「うにゅ?」

「急ぐの急がないのという話の前にだ。林の方にその話は通しておかなかったのか?自分も学校に寄るから下校が出来る、合流しようと前もって言っておけば林の方が待っておくことも出来ただろう。」

そう。
それなんだ。

それに思い至らないほど郁は馬鹿じゃないし迂闊でもない。
LINEするタイミングなんて山ほどあった。

でも、しなかった。

「・・・・・わ、すれ、てた。」
「ぎゃーす!マジかー!うーん、でもまーそんな時もあるよね!紀伊梨ちゃんもよく宿題とか忘れるお!」
「忘れるな!本当にお前という奴は、いつまでもいつまでも!」
「あーん、怒らないでよー!」

紀伊梨と真田がわあわあ騒ぐ中、郁は幸村と柳が何も言ってくれませんようにと願った。

忘れてた。
こんな言い訳通るのは紀伊梨くらいのものである。真田だって、冷静になったら気づくだろう。その部分を忘れるって、そんな事ある?かなり考えにくいんだけどという事に。

「てゆーか、他の皆はー?」
「・・・!」

紀伊梨のその言葉に、郁はハッとする。

ドク、ドク、と心臓が高鳴る。

そうなのだ。
彼は居ない。
まだ、此処に。

「居るよ。もうすぐ着替え終わって出てくる・・・あ。ほら。」
「あー!皆、お疲れちゃーん!」
「おや、五十嵐さん。お疲れ様です。」
「お前は元気だな・・・」
「そーお?これでも今日はちょっと疲れてるんですよっ!」
「誰が信じるんじゃ。」
「全くだぜ・・・あれ?」

ドン。ドン。と心臓が早くなる。

あの目が。
こっちを向く。


「一条!お前、来てたのかよ?」


ドキンーーーー

「・・・・ああそうだね、居ちゃ悪いんなら僕は帰るよ。鈴奈とも入れ違いになってしまったようだしーーーー」
「はいはい、誰もそんな事言ってねえだろい。」

ぱし、と手を取られてまた心臓が跳ねた。

放せよ、とは思わない。
それよりも、今思うのはやっぱりねということ。
自分がこうやって立ち去る素振りを見せたら、丸井はこうして引き留めるだろう。そう予想はついていた。

「そーだよ、いっちーも一緒に帰ろーよー!千百合っちはゆっきーと一緒に帰っちゃうし、紀伊梨ちゃん一人つまんないもん!」
「いや、方向が・・・」
「というか・・・そもそも後の3人はどこに行ったんだ?」
「ご一緒ではないのですか?」
「・・・えーと・・・あのねー、なっちんと紫希ぴょんはねー、ねっちゅーしょーになっちゃったの。」
「「「「「「「え!?」」」」」」」
「あ!2人ともじゃないお!なっちんの方ね!」
「幸村君の試合が終わった直後辺りだよ。黒崎君が倒れて、病院に連れて行って休んだんだが一人では帰れないから、春日さんが付き添って行ったんだ。」

そう、S3の試合の直後、棗はふらつくと呟いてよろよろと席から立ち上がり、一足早く帰ろうとしてバタンキューしたのだ。

流石に家までの道中を一人にするのは危なすぎるが、じゃあかといって誰が適役かというと、フィジカルに難ありでも紫希しか居なかった。
千百合はスカウトの件があるから学校へ行かねばならないし、郁は黒崎家の方向も電話番号も何も分からないし。じゃあ残るは紫希か紀伊梨かという事になるが、紀伊梨は不安すぎる頼むから止めてという、失礼なような妥当なような理由であとに残るは紫希しか居ない。

「黒崎の方かよ?逆かと思ったぜ。」
「珍しいね。棗は滅多に体調なんて崩さないんだけど。」
「ああ・・・でも、最近結構眠そうにしてたからな。」
「ほう、そうなんか?」
「ああ。本当に、つい最近になってだけどな。授業中に他の事して遊んでるのはよくあるんだけど、この間から段々居眠りし始めて・・・」

桑原は今席の位置関係上棗の後ろに居るので、舟を漕いでいるのがよく見えるのだ。
刺された時はなんだかんだ軽快に答えるのが常なのに、最近は本気で一瞬進んでいるところを見失ったりもしている。あまりの様子の違いに、教師も叱るより心配をするレベル。

「たるんどる!授業中に眠り込むなど、言語道断だ!」
「まあまあ、真田君。きっと何か、事情がおありなんでしょう。」
「黒崎は確かに不真面目な一面もあるが、自分のコンディションに疎いタイプではない。何か理由がある確率は低く見積もっても71.01%以上だ。」
「桑原、少し良いかな。」
「ん?」
「最近と言ったね。具体的に何時頃からか分かるかい?」
「え?うーん・・・気が付いたらって感じだったからな・・・」
「大体でいいんだ。正確じゃなくても。」
「・・・先週、いや、先々週半ば位には、確か。」
「それなら、確かフェスの曲が固まったタイミングだね。」

幸村は千百合とまめに連絡を取っている。
だから、ビードロズの活動の進み具合も大よそであれば掴んでいるのだ。

「では、フェスに向けて方針が決まったのでそちらの練習で疲れが溜まっていた、というところでしょうか?」
「原因の一つには間違いなさそうじゃな。」
「全く・・・くだらんとは言わんが、体調の管理くらいせんか。たわけが。」
「えー!なっちん、そんな頑張ってたのかなー?うーん、そんなむつかしー曲じゃないんだけどなー?」

(フェス、ね。)

丸井だけは知っている。
紫希と棗が今、ビードロズの2人に内緒で進めているキーボードの計画のことを。

丸井的には仁王の言い方は実はドンピシャで、フェスが云々という話は正に「原因の一つ」なんだろうと思う。それが全部じゃなくて、元々あったタスクたちの中に更にそれが増えたので、複合的にのしかかってきたあれこれの疲労が一時棗を押しつぶしているのだ。

それは紫希の方を見てもわかる。
ふと何かに追い詰められているような顔を最近よくしているし、何かというとキーボードの練習を気にしている。


多分。
あんまり上手くいってないんだろうな、と思う。

「・・・・・」
「・・・おい。」
「え?悪い、何?」
「何じゃない、放せ!」
「離したらどっか行くじゃん。」
「あのなあ・・・」

(ああいう所が黒崎の反感を買うんじゃろうな。)
(でしょうね。そこが丸井君の魅力でもあるといえばあるのでしょうが。)
(でも要らないトラブルの元だよな、やっぱり・・・)

「ところで五十嵐。」
「にゃ?」
「春日と黒崎棗の次第はわかったが、黒崎千百合の方は何処へ行った?今日の話は彼奴が肝心だというのに。」

真田も柳も他の皆も、なんだかんだ幸村の行く末については気を揉んでいるのだ。
いや、大丈夫と思う。
思うけど、やっぱりきっちり聞いておかないと安心しきれないから。

「・・・えーと、あのー・・・あ!あの、お腹「女子の方の黒崎さんなら、呼ばれて残っていたが。」痛くなっ、ちゃっ、てー・・・!」

だから。
腹痛で遅れてるんだよ、と嘘を言おうとした紀伊梨は完全に出遅れた。
普段嘘なんてつかないもんだから、こういう時はどうしてもぎこちない。

ああほら。
幸村の眉間にちょっと皺が寄ってる。
怖い。

「呼び出し?誰に?」
「僕はあまりよく事情を知らないが、男子でその・・・ああすまない、名前を失念してしまったが今日の午後試合で君達と対戦した学校の奴だ。なんとか・・・湘南中学、だったかな?丁度君と試合をしていた男子だったと思うが。」
「何の用事で?」
「さあ、そこまでは。大した話じゃないと本人は言ってたし、黒崎さんの方も彼は勧誘の話を重ねたりはしないからと言ってたよ。」
「・・・・・・」
「五十嵐。」
「ひゃい!」
「止めなかったのかい?」
「止めたよ!でも千百合っちがだいじょーぶって言うしさー!先に行っといてって言うしさー!千百合っちが良いよって言ったんだったら、いくら紀伊梨ちゃんでも引っ張って連れてきたりとかは出来ませんよっ!千百合っちのほーが力は強いんだかんねっ!」

紀伊梨だって、まずいことは分かっていた。
平川がまずいんじゃなくて、幸村がまずい事が。でも、まずいからって無理やり阻止は出来ない。当たり前だけど、こういうのは本人の意向が最優先だ。

これだから腹痛で誤魔化そうと思ったのに・・・と幸村を良く知る紀伊梨は思うが、ほぼ何も知らない郁は?を浮かべながらあっけらかんと続ける。

「幸村君。僕が言っても信用に値しないかもしれないが、確かに敵校の男子ではあるだろうがおそらく暴力沙汰なんかにはならないよ?人目もあったし、喧嘩をしそうな空気じゃなかったし。」

(そうじゃねえんだよなー。)

郁に非はないが、どうしても言ってることはとんちんかんになってしまうというか。
千百合が危なくないとしても、面白くないもんは面白くないのだ。
幸村自身、面白くないながらに自分の都合だとわかっているから、あんまりやかましく言わないけれど。

「幸村。気持ちはわかるが、少なくとも安全な確率は高い。落ち着け。」
「うむ。一条の言うことが本当だとすると、直に本人が来るだろう。その時に話を聞け。その方が確実だ。」
「・・・そうだね。ありがとう、そうするよ。」

「こあい・・・・」
「お疲れ・・・」
「しかし五十嵐さん、わからなくもありませんがあの手の誤魔化しは止めた方が。」
「バレた時がまずいぜよ。お前さんは吐いた嘘を吐き通せるタイプでもないじゃろ。」
「そーなんだけどさー!怒るってわかってるのにさー!」
「いや、わかるぜ?分かるけどな。」

「つうかさ。」
「・・・なんだよ。」
「お前、試合見に来てたのかよ?」

(君のそういう所が僕は死ぬほど嫌いだよ。)

察して放っといてくれるとか、そういう気遣いないんだろうかこの男。無いんだろうな。
この場にはおそらくそれが出来る男の方が多いと思うのに。

「・・・鈴奈がうるさいからだよ。君達はともかく、鈴奈は友達だ。」
「そっか。で?」
「で?」
「感想は?」
「感・・・!?」

感想て。
今この状況で観戦の感想を述べよってか。

何て言えば良い?
何を期待されてる?

凄かった?
ビックリした?
見直した?

・・・死んでも言えるかそんな事。

「・・・褒められたいなら後で春日さんにでも聞けば良いだろう。」

そう言って、相変わらず手を握られながらそっぽを向く郁はわかっている。

紫希は自分と一緒に観戦していた。
紫希ならきっと伝えてくれる。

本当は楽しかったこと。夢中になって見ていた事を。

「・・・ほら。」
「ん?」
「言ったんだからもう良いだろう!離せ!僕は帰るんだ!」
「えー!いっちー、一緒に帰ろーよー!ねーってばー!」


「・・・何やってんのあんたら。」


テニス部の入口から顔を覗かす千百合。

来た。
漸く本日の、ある意味一番重要な人物が。

「千百合っちー!やーっと来たー!もー、遅いよー!」
「そんな遅くないでしょ。」

とは言っても、思ったより長引いた事は認める。
結局あの後平川を問い詰めまくっていたら、結構時間を食っていた。

「んで、一条はなんでまだ此処に居るの?マネジまだなの?」
「・・・逆だよ。もうとっくに帰ってしまってたんだ。」
「は?」
「千百合っちー!それよりさ、もっと肝心な話があるっしょ!」

なんで?と郁に聞き返したい千百合。
明らかにおかしい。
連絡取ってなかったのか。
流石に部活中はちらちら携帯見る余裕なんかないとしても、終わったらスマホチェックくらいするだろうに。

色々突っ込みたいのは山々だが、郁にとってはつくづく助かることに、紀伊梨は特におかしいとも思うことなく話題を次へとぐいぐい動かしてくれる。

「結局どーなのさー!千百合っち的にあの学校はなしなの!?なしでしょ!なしって言ってよー!」
「それはもう強制だろ・・・」
「して、どうなのだ。」
「どうって・・・」

じ・・・と皆が千百合を見つめる。
別に自分が出せるのは自分の意見なのであって、最終的に決めるのは幸村なのだからそんな重要視しなくて良かろうに。

「・・・まあ、色々理由の方は後でちゃんと言うけど。」
「うん。」

「ざっくり端的に言うと、辞めといたらって感じかな。」

はあ、という溜息と共に弛緩する空気。

「あーん良かったー!」
「まあ、そう言う確率が高いと踏んではいたが。」
「しかしやはり、こうしてきちんと否定を聞くと安心しますね。」
「だから私の意見だろっつってんのに。決めるのは本人でしょ。そうよね?」
「まあね。ただ・・・」
「ただ?」
「ううん。今は辞めておくよ。帰り道、一緒に帰ろう。その時に、どうしてそう判断したのかを細かく聞かせてもらうよ。」
「ん。」
「じゃ、帰るか。」
「あ!はいはい!ちゅーもーく!なっちんのお見舞いに行きたい人は居ませんかっ!」
「嫌。」
「お前は同じ家だろ・・・」
「五十嵐、気持ちはわかるけど止めた方が良いよ。」
「えー!なんでー!?」
「もうええ時間ぜよ。明日は日曜日じゃし、明日にしんしゃい。」
「そうだ。気の置けない友人とはいえ、夜分にあまり家を訪ねるものではない。」
「ちぇー・・・じゃーいっちー、帰ろ!」
「いや、だから五十嵐さんとは方向が・・・」
「そうそ。此奴どっちかっていうと俺んちの方だし。」
「・・・・・・」
「ん?」

千百合の視線はじっと、郁の手を握りっぱなしの丸井の手に注がれている。

なんなんだろう。
此奴。いや、もはやこいつ等も。
なんで誰も突っ込まないんだろう。あれか。もう諦めているのか。突っ込んでも無駄だろうって事か。

「何だよ?」
「いや、良いよもう。もうお前、そのままずっと生きていけよ。もう口出しする気も失せてきたわ。」
「は?」
「というか、いつまでこうしてる気なんだ君は!離せ!」
「あ、悪い悪い。」

今度はあっさり離れた手。
それが惜しいなんて思ってない。

もう今日は会えたから。
話せたから。
手まで繋いだから、十分。


学校まで来て、良かった。