First region competition:After the game - 7/8


学校に戻り。
その後マネジ業務をしていた可憐は、今日も今日とてやっぱり遅めの帰路についていた。

「ただいま~。」

「あっ!帰ってきたっ!」

暗い廊下に妹、美梨の声がした。
正確に言うと、廊下の明かりは消えているがその向こうのダイニングキッチンの明かりが点いてるのは硝子戸の向こうに見えていて、美梨の声はそっちからしたのだ。

(?なんだろ、私何か待たれてたっ?)

今日何かあったっけ、なんて思いながら食卓へと続く扉を開ける。

「ただいま・・・」

「おねーちゃん!」
「「可憐!」」

「「「全国進出おめでとー!」」」

パン!と鳴るクラッカーの音。
テーブルにめっちゃ乗ってるご馳走。
部屋まで軽く飾りつけしてある。

「・・・・・え?え?」
「あ、あはは・・・」
「ほらもー、おかーさん。やっぱりちょっと無理があるって思うな、って美梨言ったのに。」
「あ、あのな可憐。これにはその、深いわけが・・・」
「わけ?」
「あの・・・可憐、ごめんっ!お母さん、今日が決勝だって思い込んでて!」
「SNSで氷帝が今日勝った、って見ちゃったんだって。優勝したんだって勘違いしちゃったらしいの。」

全てが分かったのは、母、遥がひとしきり料理の下準備を終えたところであった。
遅れて帰って来た父、健二と美梨がまるで優勝したみたいな騒ぎだなと感心し。
え?優勝したんでしょ?
え?
え・・・?
・・・なんてやり取りを終えた頃には、もう片づけるに片づけられない所まで来ていたのだった。

「ああ、そういう・・・」
「ま、まあほら!今日勝った事は事実なんだし、な!」
「そうそう!優勝は兎も角として、これでもう全国大会には行けるんだよね?それでも十分凄い事だって、お母さんは思うな!」
「全国、進出・・・」

そうか。
そういえば、決勝に気を取られていてなんとなく流していたけれど。

決まったんだ、全国進出。
開かれたんだ、次のステージへの扉が。

「おねーちゃん!」
「美梨・・・」
「おめでと!ほら、ショコラもおめでとうって!」

ワン!と元気よく泣く愛犬は、ブンブン尻尾を振って喜んでいる。
その光景に、可憐はやっと実感がわいてきた。

「・・・・うんっ!有難うっ!」






「それで・・・むぐ。可憐、次の試合こそ決勝なんだよな?」

健二がミートローフを咀嚼しながら言った。

「うんっ!そうだよっ!」
「わあ・・・次勝ったら、お母さん今度こそちゃんとお祝いするからね!」
「ねー、おねーちゃん。相手どこだっけ?」
「立海だよっ!」
「立海?って、おねーちゃんのお友達の?」
「うん、そうっ!紫希ちゃん達の居る所っ。」
「お友達の学校が相手か・・・勝負の世界とはいえ、気は進まないなあ。」

父の言う感覚は可憐にも分かる。
勝負をするからには必ず勝者と敗者に別れねばならないのであって、ましてそれが真剣勝負なら尚更色々複雑な思いがあるだろう。

可憐も少し前までそう思っていた。

でも。
今は。

「・・・確かに、お父さんの言う通り、友達相手って言うのは初めてだからっ。他の学校と対戦する時とは、ちょっと違う感じがするけど・・・」
「けど?」

「・・・でも、こっちも向こうもお互いに真剣だって思うからっ!だから、友達なのにとかそういう事は、考えちゃいけないと思うし、立海の方にも考えて欲しくないっ。そういうのはなんていうか、逆に失礼だと思うっ。」

何かに打ち込んだ事がなかった。
まして本気で人と競った経験もなかった可憐。

けれどこうやって皆と毎日部活して、頑張って頑張って。
それは勝つために。
皆で栄冠に輝く為に。

それは向こうも同じ。
負けられないのはお互いさまで、だからこそ。

「・・・!そうか、頑張れよ。選手のサポートだって、大事な仕事だからな。」
「うんっ!」


「・・・ね、おかーさん。」
「うん?」
「おねーちゃん、変わったよね?美梨、前のおねーちゃんも嫌いじゃなかったけど、今のおねーちゃんの方が断然素敵だって思うな。」
「・・・うん!お母さんもそう思うよ。」

微笑みあう美梨と遥の足元で、ショコラが同意するようにワン!と一声鳴いた。