さて、昼休みに会いたいと忍足に言われた榎本は、ラッキーと思った。
それは伊丹と内川も同じで、わざわざ向かう手間が省けたものだと喜んだのだった。
「でも、もうすぐ網代さんの件終わるんなら良かったなー!」
「ちょっと真美!まだ気は抜けないんだから!」
「でも、目処が立ったのは良い事だよ~。ね、可憐ちゃん?」
「うん!私もすごくホッとしちゃったっ!」
こっちはまだホッとしきれないんですがねえ・・・な思いの3人。
網代の件は目処が立っていても、可憐の件はそうではない。
「・・・可憐、宿題やってきた?」
「ん?数学の?12~16Pだったよねっ!」
(教科も範囲も間違いなしか・・・)
(こりゃあまだ解決してないわね?)
他にバロメーターはないものかと思う物だが、分かりやすいのだから仕方がない。
キーン・・・
コーン・・・
「やばい、先生来る!」
「じゃあ皆、お昼はお願い!」
「りょーかい~」
「任せときなって!」
というやりとりをしたのが今朝の話。
昼休みになり、今網代のクラスに向かって、可憐と内川は歩いている。
「今日も何も無いと良いんだけど・・・」
「まーまー!そんな気張らなくたって、ドーセもうすぐ終わるって!遅くても明日なんだろ?」
「そうだけど。」
でも終わりきるまで気は抜けない。
可憐が気合を入れ直そうと、グッと拳を握った時だった。
「あのう・・・桐生さん?」
「え?」
振り向くと、知らない女生徒。
制服のリボンの色からして、2年生のようだ。
「桐生、可憐さんよね?女子マネージャーの。」
「はい・・・そうですけど。」
「やった!あの、私、マネージャー志望なんだけど、色々お話聞きたくて・・・それとも2年生は、取って貰えないのかな?1年生ばっかりって聞いたんだけど、1年生だけ?」
「い、いいえっ!そんな事は!大丈夫です!ただ・・・」
今は拙い。
自分には網代を守る任務があるのに。
「・・・良いじゃん、行ってきなよ!」
「え!?真美ーーー」
「大丈夫だって!今日だけの事だし、私一人でも絶対!なんとかするよ!」
そういってパンチのフリをして見せる内川。
(どうしよう・・・もし真美に何かあったら・・・でもぐずぐずしてると・・・)
迷う可憐の背を押す様に、内川は笑って見せた。
「平気平気!もし一歩でも教室から出たり、知らない人が入ってきたら、ふんじばってでも止めるって!」
「・・・じゃあ、直ぐ戻るから!それまでお願い!」
「おー!」
「ごめんね真美!ええと、じゃあ部室でお話を、あ、後お名前は・・・」
「あ、加納美咲です!」
慌てながらも2年生の応対をする可憐の姿に、内川はそっと笑みを零した。
可憐はテニス部が大好きなのだ。
自分だって、出来る事はしてあげたい。
(しかし1人か・・・いざなってみると、いや!しっかりしろ、私!)
絶対網代を守るのだ。
不安を振り払って、内川は駆け出した。