Rudeness 2 - 6/8


「・・・ふう。」
「真由子、どうだってー?」
「なんか、全然関係ない女子が1人邪魔になるかと思ったけど大丈夫だったって。呼出成功。」
「よっしゃ!」
「後は話するだけだね。聞いてくれるかなあ・・・」
「亜里沙は心配性なんだから、大丈夫よ!」

件の上級生たちは、作戦が成功した事に安堵していた。
呼出さえできれば後は袋の鼠だ。

余裕の表情で彼女達は隠れていた所から出て、十数m離れた目的地







ーーーテニス部部室の扉を開けた。







「・・・あれ?」
「嘘!居ない!」
「なんでー!?」
「ちょっと涼子!美咲に電話!」
「してるけど・・・あ、ちょっと美咲!?」
「待って待って!ね、真由子も皆も、取り敢えず出よう!」
「なんで!?」
「居ないなんて予想外じゃん!逆にどっか席外してて、戻ってきたら私達告げ口されるよ!今部外者なんだから!」
「部外者・・・」
「・・・・あああああもう!」

何故だ。
加納から連絡を受けて直ぐ来たから、ものの数分しか経っていない筈なのに。
一同は歯噛みしながら、部室を後にした。







その2、3分後。
再び部室の扉が開いた。

そしてその人はそっと。
そうっと呟いた。








「・・・可憐ちゃん。」








「忍足君っ・・・!」

掃除用具入れの陰から、聞きたかった声がして、見たかった顔が覗いた。

「忍足君!忍足君・・・!」
「よう頑張ったわ。もう大丈夫やで。」

兎が飛び跳ねるように、可憐は忍足の腕の中に飛び込んできた。

大丈夫だと言っても、ぎゅっと抱きしめても尚小刻みに震える体に、忍足は胸が締め付けられるのを感じた。

(そらそうやろな・・・怖いわな。)

散々暴力かも、苛めかも、と悪い想像を巡らせていた。
それだけでも可憐にとっては穏やかではなかっただろうに、蓋を開けてみたらターゲットは自分だったのだ。
さっきの集団は一人残らず全員、自分をなんらかの形で陥れようと考えていたなんて、充分怖がるに値する。

「ごめんな。もっと早う気づいたら良かったわ。」
「ううん・・・でも、どうしてあんな電話出来たの・・・?」

加納は部室に来たところで、ノートを忘れたから取りに戻りたい、此処で待っていて欲しいと言い出した。
それに頷くと同時に同じタイミングで忍足から着信があり、部室に居ると言うと、「直ぐに隠れて自分が行くまでじっとしてろ」と指示されたのだった。

こうなると分かっていなければ、あんな電話は出来まい。

「あんな、奥の手っちゅうのがなんなんか、多分分かってん。」
「え?」
「あれ、しょう、とかまお、とか人の名前でもなんでもなかったわ。」
「えええ!?じゃあ何!?」




「”将を射んとすれば、まず馬を射よ”や。」




其処を断片的に聞いてしまって、うまを、の部分をまお、と間違えてしまったのだ。
榎本のイントネーションを聞いてまさかと思ったが、語尾の話で確定ではと思った。
馬を射よ、よ。という結びならば、「よ」が二回、無意味に続いてるように聞こえても不思議はない。

「将が跡部やっちゅうんやったら、馬は茉奈花ちゃんやろうけど、今回は茉奈花ちゃんをどないするっちゅう話やったやろ?やから将言うんは茉奈花ちゃんで、ほんなら馬は・・・」
「・・・私?」
「可憐ちゃんからの提案やったら、茉奈花ちゃんは考えるやろしなあ。なかなか目の付け所はええ言うか・・・敵ながら天晴いうやつやな。」

だからと言って許す気にはなれないのだが。

「まあ、この際間違うてても別にええわ。最悪の事態はどうにかなったし。」
「忍足、く・・・!?」

お礼を言おうと思っていた可憐は、言葉を詰まらせた。
忍足の腕の力が強くなって、もうこれ以上近づけないと思っていたのにもっと近くなる。
なんだか急に恥ずかしくなってしまって、逆に身じろぎ出来ない可憐の耳元で忍足が囁いた。

「ほんまに良かった。怪我とかせんで。」

(・・・忍足君、)

あ。
いけない。

と思う時にはもう遅い。

「・・・ううえええええ・・・・!」
「可憐ちゃん?」
「うぐ、えぐ・・・う、ううう、うあああ・・・!ごべんね、ごべんなざい・・・!」
「何が!?ちょ・・・どないしたん。どっか痛いん?」

違う。
そうじゃない。

可憐は今、自分が堪らなく恥ずかしかった。

忍足はこんなに自分に優しくしてくれるのに、心配して必死になってくれるのに、それなのに自分ときたらどうだ。
たかだか別の友達と2人で映画行く位の事でいちいち寂しがって。
馬鹿か。馬鹿め。

「ごべんね、ごべんね・・・」
「何の話か知らんけど、俺何も謝られるような事されてへんで?やから・・・ん?」

携帯が鳴った。
誰だ、こんな時に。

「もしもし、誰や知らへんけど今取り込み中・・・」




『俺だ。今すぐ後ろでビービ―泣いてる奴を連れて、会議室に来い。』




王のお声。