やばいね、誰も居ないね、平日の昼間の運動公園ってこんなのなんだ、なんて口々に言い合いながら、私服のビードロズ4人はコートへと辿り着いた。
「おー!席がめちゃんこ空いてるー!」
「今日は大人の方の方が多いくらいですね。」
「ちらほら他校生居るな。」
「まあ表彰があるだろうからw部長・副部長格は居るんでないのw」
(って事は、平川は居ないわけよね。)
よしよし、安心してOK。
千百合は人知れず気を緩めた。
「あれ?」
「どうしたんですか?」
「ねーねー!あの人誰と思うー?」
「どれよ。」
「ほらー!ゆっきーとお喋りしてる人ー!女の子ー!」
その台詞に、4人全員意識がベンチの方に向いた。
居る。
確かに、若干年上っぽい女子が。
「マネージャーさんじゃないですよね?」
「あのジャージは違うなあw」
「・・・っていうか、そもそもベンチまで行けるなら関係者じゃないの。」
「えー?でもそれって結局誰なんだかーーーん?」
ちょんちょん、と肩を叩かれて紀伊梨は振り返った。
あまりにも不用意に。
「やっぱり、紀伊梨!それにビードロズ!」
「あれ?みっきー!」
そこに居たのは、応援部の井谷である。
そう、今日が活動日なのは別にテニス部だけじゃない。
応援部だって今日は本番なのだ。
「誰?」
「あ!みっきーはねー、クラスの友達だよ!それとおーえんぶなの!」
「あ。応援部と言いますと、それなら今幸村君とあっちでお話してる方は・・・」
「ん?ああ!うん、うちのグループリーダーの先輩!」
「なんだ、応援部の人かw」
「知らない人かと思ったー!」
「そっか。普段皆、うちのジャージなんて見ないもんね。」
一応応援部も、レギュラージャージ的な物があるのである。
ただ、それはそれとして本番の時の衣装が別に用意されていて、皆普段そっちばかり見ているから応援部のジャージ姿を見る機会がないのだ。
「で、話を戻すけど。」
「おにょ?」
「なんで皆、此処に居るの?授業は?」
「あ!あー、えーと、うーと・・・うん!」
「俺夏風邪の体でw」
「私も。」
「わ、私も一応・・・」
「・・・はあ。」
まあそんなこったろうなとは思ったというか、それしかあり得ないというか。
「・・・ま、別に私は良いんだけどさ。ばれないようにやんなよ、誰から何言われるか分かったもんじゃないよ。」
「はーい!」
「ごめんなさい・・・」
「すまんね、黙っといてw」
「テニス部にも言わないでね。」
「え?テニス部にも?」
「「「「テニス部にも。」」」」
「なんで?喜ぶと思うのに。」
「ゆっきーこーいうの怒るもーん!ずる休みとかさー!」
「まあ幸村は左程でもないにしてもなw」
「真田君は絶対に怒ります・・・」
「ああ・・・そりゃそうか・・・」
例え同じクラスじゃなかったとしても、応援部として関わってるだけで真田の厳しさというか融通のきかなさはわかる。
応援部として打ち合わせに行くだけで、関係ないこっちまで怖くなるくらい部員に対して怒鳴っているもん。
「ま、いずれはバレるんだけどさ。どうせバレるなら事後の方が良いじゃん。」
「確かに真田はなー。今からでも学校行けって言いそうな勢いだもんなー・・・分かった!とりあえず今日は絶対漏らさないようにしとく!」
「やったー!みっきー、話分かるー!」
「有難うございます。」
「いや、別に私は黙っとくだけだから大したことじゃーーー」
「おーい、美樹ー!」
「あ、はーい!ごめん、じゃあもう行くし!」
「みっきーも頑張れー!」
「あはは!私は良いから、テニス部の応援だけしたげなよ!大舞台なんだしね!」
ポンポンを手の代わりに振りながら駆けていく井谷。
その背を見送って、4人はーーーいや、紀伊梨以外の3人は安堵のため息を吐いた。
「ちょっとビビったわ。」
「油断したなwテニス部にだけ警戒すれば良いと思ってたのにw」
「でも、井谷さんが良い人で良かったです。」
「ねーねー紫希ぴょん!」
「はい?」
「大舞台って何?おっきな舞台ってこと?だよね?」
「はい、そうです。この場合は本当の広さが大きいという意味ではなくて、スケールが大きくて重要という意味です。輝かしい場面というか・・・」
「ほうほう!重要な試合なんだしって事ですな!うんうん!」
「あんた本当にわかってんの?」
「気楽なもんだなあw勝つか負けるかって時にw」
「えー!だってさー、前も可憐たんとそんな話したけどさー!
ゆっきー達が負けてるとこ、見たことないもん!」
「・・・まあw」
「そうですよね・・・・」
「わかっちゃいるけどさ。」
それは、紀伊梨でなくてもそうだった。
皆、見たことない。
だから心配はしても想像が出来ていない。
我らが神の子率いるチームが、敗北する姿を。