「・・・・・」
可憐は撤収の為に使ったタオルを纏めていた。
なんだか不思議な心地だ。
変に凪いでいると言おうか、何も考えられないし何も湧き上がってこない。
「可憐ちゃん。」
「忍足君・・・」
「汚れてへんタオル、どこに置いといたらええやろか。」
「あっ、ええとそれはカメラケースの隣の鞄・・・って、あれっ?カメラケースカメラケース・・・」
「さっき茉奈花ちゃんが持って行っとったで。」
「えっ?」
「アングルの確認だけ今日の内にしとかな、明日すぐ纏めにかかられへんて。」
そうか。
そういえば、今日はカメラ使ったんだった。
普段は使わないけど、今日は使った。
録画しとかないといけなかった。
次の戦いの為に。
今日はもう、駄目だった、から。
「え・・・・?」
何かが地面にぽたりと落ちた。
雨か。
いや違う。
自分が泣いているんだ。
「・・・可憐ちゃん。」
「え、あう、う、え?えう・・・」
ぽろぽろぽろ、と次から次へ出てくる涙。
拭っても拭っても両目から。
ああいけない、人前なのに。
もっと泣きたい人は泣いていないというのに。
「ごめ、忍足君、ごめん、」
「ええねん。泣きたい時はようさん泣き。」
「でも、でも、私マネジなのに、」
「関係あらへんて。・・・はい。」
忍足は新品のタオルを頭に被せてくれた。
そうすると、急に世界が狭くなったようで。
ああそうか。
今ここには自分と忍足しか居ないんだ。
じゃあ泣いても大丈夫かな。
きっと大丈夫だよね。
「・・・・ふ、」
「うん。」
「ふ・・・うええ・・・うええん・・・・うああああ・・・!」
「・・・よし、よし。」
負けた。
負けてしまった。
心のどこかでは思っていた。
勝てるんじゃないかって。
だって今年は跡部が居て、皆すごく強くなっていて。
毎日毎日、頑張って頑張って。
今日の決勝まで、ずっと負け無しで。
それがずっと続くと思っていた。
今日だって、最後には勝つと信じていた。
知らなかった。
負けるって、こんなに悔しいことなんだ。
悲しくて。
悔しくて。
その悲しさや悔しさを持って行くところも、何処にもない。
誰にもぶつけられない。
ただただ、自分の内から溢れるに任せるしかない。
零しても零しても尚止まらない、この涙と同じに。