「あら、可憐ちゃん。」
「うんっ?」
「元気になったのね。何だか顔が明るいわ。」
帰り道。
可憐は仲のいいマネージャーと共に帰路についていた。
「えっ?」
「閉会式の時なんて、心ここにあらずな顔してたわよ?」
「そりゃそうなるよ・・・」
「結構ショックよね・・・」
マネジながらに、初めてのちゃんとした敗北にずうん・・・と落ち込んでいるのは何も可憐だけじゃない。
新城や金町や、他のマネジ仲間の皆だって、多かれ少なかれ同じような思いだ。
まさかうちが負けるだなんて。
そう、思っていた。
「っていうか可憐、もう立ち直ったの?すごくない?」
「私、そのう・・・なんていうか、いっぱい泣いたからっ!わーっと叫んで、こう・・・」
「マジか、いつの間に?」
「あー、良いなー!私もそれしたかったー!」
やっぱり、もう中学生ともなると、悲しいからと言って人目のあるところでわあわあ泣くのは憚られる。
その心理は当然といえば当然だが、時には足枷。
「でも、実際皆も結構落ち込んでるよ、多分・・・」
「・・・そうだよねっ。週明けの部活とか、どんな空気なのかな・・・」
「まあ、その辺は部長様がきっと上手くやってくれるわよ。」
「そういうものっ?」
「勿論!部長っていう立場は、こういう時こそ部長らしくなくっちゃあ、ね?」
「・・・・・」
「真理?なあに?」
「いや、なんていうか・・・茉奈花はもう平気なの?」
「うん?うーん・・・平気っていうか、元々そんなに言うほどは凹んでないかな?」
「「「そうなのっ!?」」」
「ちょ、ちょっと・・・いやね、ちょっとは落ち込んでるわよ?別に良い気分なわけじゃないわ、勘違いしないで?」
「で、でもちょっとだけなんて・・・あっ!もしかして、茉奈花ちゃんテニスやってたからっ?」
「「「え?」」」
「忍足君が言ってたんだっ。なんていうか勝負慣れしてると、平気・・・じゃないけど立ち直るのが早い、みたいなっ!」
「あ、なーる。」
「そうなの、茉奈花?」
(・・・あれっ?)
網代は一瞬。
一瞬だけ、すごく微妙な顔をした。
でも次の瞬間には、パッといつもの明るい網代の笑顔に変わっていた。
「・・・まあ、そういう面もあるわ、ね。性格によるところも大きいけれど。私、あんまり物事に落ち込まないタイプだから。」
「確かに、茉奈花が凹んでるのってあんまり想像つかないかも。」
「体重増えてるときとか、落ち込んだりしない?」
「あかりじゃあるまいし・・・」
「あー!言ったな!」
「・・・・・」
(・・・私、何か良くない事言っちゃったかなあっ?)
テニス辞めた理由について、以前網代は「ちょっとね」としか言ってくれなかった。
やっぱり、触れられたくないのだろうか。
網代が元々プレイヤーだったのは皆が知ってることだし、このくらいなら話題に出しても大丈夫かなと思ったけど、これも良くなかったかもしれない。
(もうこれから、私の方からこの話題出すの止めよう・・・ううん、触るのも駄目だよねっ。今度からもっと気をつけなくちゃっ!)
「可憐?どしたの?」
「置いていくよー!」
「あっ!はーいっ!」