First region competition:Final 3 - 8/8


「皆、アイスティーよ。」

大体皆食べ終わった所で、花凛は人数分のアイスティーを持ってきてくれた。
それから焼き菓子。ケーキセットにつくやつだ。

「これは・・・」
「おばさんからのおまけよ。あの人が、今日は余計な事をしちゃったから。」

花凛の視線を受けて、カウンター奥の勇はちょっと罰が悪そうな目でそっぽを向いた。

「それに、今日は大会だったんでしょう?お疲れさまも兼ねてね。」
「有難うございます。」
「ううん。結果はどうだったの?勝ったのかしら?」
「はい、おかげさまで。関東大会は優勝です。」
「そうなの?すごいわね。」

何気なく言う花凛だが、実際は花凛が思うより結構凄いことなのである。テニスをあんまりよく知らないから、すごいわねーなんて軽く言えるだけだ。

「でもさー、何かすぐ終わっちゃったなー。」
「まあね。長引かなかったよね。」
「あれは、氷帝側が途中から粘るのを止めたんだよ。」
「そうだったんですか?」
「ああ。俺も危うくデータを取られそうになった。」
「じゃあやっぱり、途中から何か動きが変と思ったのは気のせいじゃなかったわけねw」
「うむ。おそらく、D1から我々には勝てんと踏んで目標を変えたのだろう。」
「・・・でもさー。ひょーてーの人って、負けたらレギュラー変えられちゃうんっしょー?」
「ああ、そっか。確かにそんな雰囲気の事言ってただろい。」
「柳君、実際どうなのかは調査済みで?」
「ああ。五十嵐の推測は当たりだ。氷帝の方針として、一度公式試合で負けた者は二度と出さないとの事だ。」
「じゃあ、D1とかS3の選手は・・・」
「知っててやってたんじゃろうな。」

厳しいなあ・・・と思いながらアイスティーを吸うビードロズだが、テニス部勢は見上げた根性と思いつつも気の毒とは思わない。
レギュラーの座につくというなら、それくらいの覚悟はまああるべきと思っているから。

「まあ、相手の行動としては賢いというか妥当というか、何も不思議ではないね。」
「うむ。準優勝である以上、全国を見据えて行動するのは当然の事だからな。」
「全国でも氷帝と当たる事はあるでしょうか・・・?」
「その確率は高い。お互い勝ち上がっていけば、いずれどこかでは当たる事になる。」
「あ!そーだそーだ、それ聞こーと思ってたんだよー!全国って、他にも強いところあるんっしょー?」
「他に・・・」

テニス部の面々は思い思いに考えてみる。
他に強いところ、有名な所。

「獅子楽は有名じゃな。」
「それどこー?」
「確か、九州の方でしたね。」
「全然知らんw初めて聞いたわw」

「関西じゃ四天宝寺とかが有名だろい。」
「ああ、大阪のだな。」
「四天宝寺って、テニスに強かったんですか・・・」
「紫希知ってんの?」
「偶に、大阪まで出て遊びに行った時に。関西だと名前が通っているらしくて。」

紫希は田舎が京都なので、夏の度に関西まで出るのだ。
大阪の中心部に行くと割と喧しい中学生が居たりして、祖父が多分四天宝寺生だろうと教えてくれた。

「ほーほー。ししがくと、してんほーじね!うん!覚えました!楽しみにしてる!」
「楽しみにしてるって微妙じゃないのかこの場合w」
「あははっ!まあ、楽しみにしててくれても良いよ。」
「良いの?」

「最後にはうちが勝つからね。」

これは自信と言うより、半分は宣誓である。

必ず勝つ。
今年の優勝は自分達のものだ。

「あの・・・」
「うん?」
「その・・・うちが勝つということは、幸村君は結局移らないと思っていて良いんですか?」
「ああ、その事か。良いよ。」
「ふいー!怖かったー!」

紀伊梨の心の叫びは、この場の全員の心の叫びであった。

幸村が抜けるとか、あまりにも大きい損害である。
色んな意味で。

「断りの電話など入れたのか?」
「いや。でも、もう向こうも、あの話は今後振っては来ないんじゃないかな。こういう言い方はなんだけど、懲りたと思うから。」
「まあ、先日のあの負け方では、そうなってもおかしくはありませんね。」
「弱いの露呈してたしね。もう食い下がれないか。」

華村は気が強いというか押しの強いタイプではあるが、しつこくすることはあってもみっともないことをするタイプではない、というのが幸村の見解だった。
それを踏まえると、あの対戦結果で尚も勧誘を重ねてくるというのは考え難かった。

「ただ、面と向かって「もうこの話は終わりです」と、やり取りしたわけではないからね。もしかしたら、今度は千百合じゃなくて、他の誰かに何か話を振ってくるかもしれないけれど、皆そういう時はもう無視して俺に知らせて欲しい。まあ、全国が終わったらそうそう会う機会も無いだろうけど。」
「ダメ押しで何か言うて来るとしたら、全国の時じゃろうな。」
「おお!千百合っち、せんせー見つけたら隠れないとだお!」
「いや、私はもう逆に何も言われないんじゃないの。」
「むしろ、お前らが隠れた方が良いんじゃないか・・・」
「お前は特にふらふらうろつく方だからなw気をつけろよw」
「えー!つまんないよー!」

そう言ってぶー垂れる紀伊梨にとってーーーいや、口には出さないがビードロズ全員にとって全国大会というのは、こう言っては何だが娯楽であった。

友達のハレの舞台。
それには違いないが、まだどこか勝負の世界というものをそれこそ可憐ほどにはわかっていなかった。

マネージャーをしている可憐でさえ、今日を迎えるまで本当にはピンとは来てなかったのだから、テニス部でもない4人に分かれという方が難しいといえば難しい。
氷帝の今日のレギュラー落ちを取り巻くシステムも驚いたといえば驚いたが、それでも他所の学校の事であり、自分達の事ではなかった。

しかし、この考えはもう少しで変わることになる。
それまではもう暫く。

全国まで、今しばらく。