そして昼休み。
いや、今日はもう放課後。
「えー、明日から休みに入るわけなんだが。皆、休みだからって生活リズムを崩しすぎないように!無茶しない!ケガしない!病気しない!良いな!」
はーい!
と良い返事の響く終業式後のC組。
本当にわかってんのかねえ・・・と新海は内心でため息を吐くが、まあ中坊なんて大人の言うこと聞いちゃ居ないよな、という諦念もあり。
(あーあ、だる。とっとと帰ろ。)
今日は終業式の日で、部活はオール停止である。
この後はフリー。
「あ。」
隠れてスマホを見ていると、紀伊梨からLINE。
皆でカラオケ行こう!らしい。
(1学期のお疲れさま打ち上げ・・・打ち上げもへったくれも、そんな言うほど疲れるような何かがあったわけじゃ、)
ない・・・と思いかけたが。
ちょっと改めて振り返ってみると。
(・・・いや、割とお疲れさまだな。うん。打ち上げは良いかも。)
これは珍しく紀伊梨の日本語が正しいというか、振り返ると一学期はかなり色々あった。打ち上げの響きが相応しいなと思うくらいには。
「ねえ紫希、カラオケ・・・紫希?」
「・・・・・」
「紫希って。」
「・・・え、はい!ごめんなさい、なんですか?」
「・・・眠い?」
「ああ、ええと・・・そうですね。お恥ずかしいんですけど、最近寝不足かも・・・」
「何で。」
「・・・今やってる単元が、ちょっと。」
嘘だ。
千百合にはわかる。
というか、分からないのなんか紀伊梨くらいのもんじゃないだろうか。
と言いつつ、突っ込まれたくない主義の千百合は基本的に突っ込んではこない。
紫希にはそれが有り難かった。
(いけません、こんな事じゃ・・・もっと色々、ちゃんとしないと・・・)
紫希は寝不足である。
それは本当だ。
理由はキーボード。
棗が指導しなくなってからというもの、紫希はひたすら自己練習に励んでいた。
それ以外他にどうしたら良いのかわからなかったからだ。
・・・そうはいっても捗ってはいなかった。それも事実だったが。
「・・・ま、良いや。カラオケ。」
「カラオケ?」
「紀伊梨から。行くでしょ?」
「あ・・・そうでした、今日は午後部活無しでしたね。」
だから今日は全員揃う。
行きたい。
けど。
「・・・ごめんなさい、今日はちょっと。学校で用事が・・・」
幾ら家にキーボードがあると言っても、所詮は住宅地の中で放課後の話である。
近所の迷惑を考えるとあまり長くは弾いてられない。
でも今日は。
音楽室が空けば、紀伊梨と千百合が居ないことが保障されている学校で心行くまで弾くことが出来る。
「・・・そ。」
「ごめんなさい、行きたいんですけど・・・」
「まあ、しょうがないんじゃない。紀伊梨は煩そうだけど。」
本当は行きたい。
でも行く気になれない。
練習、しないと。