「・・・・・」
「審判、どうする?」
「どうするってw」
「もう2勝したからね。これでお終いにするか、もしくはもう1勝負五十嵐の考えたゲームでやるか。」
「それねwどうしましょうねw」
2戦目のポ/ップ/ンミ/ュージ/ックは・・・ポ/ップ/ンミ/ュージ/ック「も」、幸村があっさり勝利を収めた。
これで3戦2勝なので、もう勝負はついたと言えばついた。
だから別にもう1勝負なんてしなくても良いのだが。
「嫌だ!」
「やるかい。」
「当たり前だろ!せめて1勝はする!このままで引き下がれるか!」
「うむ!その意気や良し!」
「確かに、負けているからと言ってめげない所は評価出来るな。」
「単に怖いもの知らずなだけという気もしますが。」
「まあ何にせよw次の勝負に移りましょうw」
「はいはいはーい!紀伊梨ちゃんの考えたのはね、エアホッケー!」
ピク、と少女の眉が動いた。
「へえ、紀伊梨にしては良いチョイスじゃん。」
「えっへん!・・・あれ?紀伊梨に「しては」?」
「最後に体を動かすやつが来たな・・・」
「確かに、ゲームの中ではスポーツ要素のある方じゃの。」
エアホッケー。
これはやった事の無い方が珍しいゲームであろう。
何せルールが単純で、大人は勿論子供が取っつき易い。ゲームの入門としてはうってつけだ。
まあ幼児とかがやる分にはカコーン、カコーン、あーん手が届かなーい、なんて微笑ましいゲームになりやすいが、ある程度年のいった人間同士の対決だとそうはいかない。
「良いすか、エアホッケーw」
「俺は構わないよ。」
「俺も良いけど。おい、お前!」
「なんだい。」
「怪我すんなよ。」
物騒な事を言いながら、少女は自分の側についた。
幸村も着く。
「エアホッケーだって!」
「良いチョイス!あの子が体動かしてるとこ見たーい!」
「でも今度は負けちゃうんじゃないかなー?」
「あー、わかる!あの子線細いもんね・・・イケメン、頑張れー!」
気のせいである。
純然たる気のせいである。
幸村は確かに見た目は儚げかもしれないが、この場にいる誰よりフィジカルが強くても全く驚きはしない。
「行くよ。」
「おう!」
《レディー・・・ファイト!》
シュン、と音がして滑らかに滑り落ちて来るパック。
「ふっ。」
カコーン!
「うら!」
カコーン!
「っ!」
カコン!
「せい!」
カコン!
ガコン!ガコン!
ガコン!ガコン!
ガコ!ガコ!ガコ!ガコ!
ガガガガガガガガ!
「おおおおおお!?凄い凄い!どっちも凄いぞー!」
「マジか。張り合ってんじゃん。」
「エアホッケーの音じゃねえw」
「やばいな、何か・・・どっちがというかどっちも・・・」
「これは意外な展開ですね。」
「確かにな。これこそ幸村の圧勝じゃと思うとったが。」
「む・・・これはまずいな。」
「いや。まずい、というほどではない。」
柳が言うと同時に、ガシュ!と音がして少女側のゴールにパックが入った。
パッパラ~♪なんて軽快な音がするが、盤面はそんなポップ楽しい雰囲気じゃない。
「驚いたな。ついてきているじゃーーー「おい!」うん?」
「お前は何者だよ!」
「何者と言われても、ただの中学生だけど。」
「嘘吐け!俺にエアホッケーで点取った奴はここ数年一人も居なかったんだぞ!」
それは頷けた。
この発言は中二病とかじゃなくて本当であろうことは、今の攻防を見ていればわかる。
「ねーねー!」
「あ?」
「こーんなエアホッケー強いんだったらさー、どーして格ゲーでしょーぶとか言ったのー?最初からエアホッケーで良かったんじゃにゃいのー?」
今日の紀伊梨は冴えてるなあ、なんて全員が失礼なことをちらりと思う中、少女はあっけらかんと言った。
「確かに俺はエアホッケーの方が得意だ!」
「うにゅ!」
「でも!ゲーム界に彗星のごとく現れた天才を演出するためには、エアホッケーじゃなくて格ゲーの方が格好いいというか、それっぽいだろ!だからだ!」
「おお!なるほどー!」
あほや、あほが居るで。
一同のみならず、居合わせたギャラリーも皆そう思った。
「そのような理由で財布など賭けずとも、と思いますが。」
「本人にしか納得できない何かがあるんだろうな・・・」
「というか、彗星のごとく云々の設定ってまだ覚えてたんだ。」
「覚えてるだけで生きてはおらんがの。」
「???」
「真田。先も言ったが、あまり深く考えるな。」
もうここまでの格ゲー・音ゲーでコテンパンにされてる時点で天才もへったくれもあったもんじゃないが、まあ本人はまだ諦めきれないようなのでそれを止める気もない。好きにしたら良い。
好きにしたら良いのだが、どうせなら最初からこのエアホッケーの一回勝負だけで決着をつけていた方が、まだ天才対天才の戦いとしての体を取り繕えていたかもしれない。
「話を戻すが!俺はエアホッケーには何より自信があるんだ、吠え面かくなよ!」
「点を取ったのは俺の方じゃ「シャラーップ!さっ!勝負再開だ、いくぜ!」
どうやら都合の悪いことは聞かない方向で行くことにしたらしい。
とはいえ、少女のエアホッケーでの実力は本物だ。
これは意外や意外、楽には勝たせてくれそうにない・・・と思っている間にも、またエアホッケーの台からエアホッケーの音じゃない音がする。
「で、柳。」
「何だ?」
「さっきまずいって程じゃないって言ってたけど、こっちの勝率結構高いの?」
「そうだな。傍目からは五分に見えるが。」
「まあ、ラリーが続いている分には五分に見えるだろうが、返し方が違う。」
「「「「「「?」」」」」」
「相手側を見ろ。」
「うらあ!」
「せい!」
「おんどりゃあ!」
「・・・?見てもよくわかんにゃい!」
「もっとよく見ろ。彼女は目と手が同時か、目の方が若干遅れている。」
「ということは・・・あいつは本能というか、経験で返しているのか。」
「その通りだ。彼女はことエアホッケーに関しては明らかに幸村より場数を踏んでいる。だから幸村の返球が早くても、体が勝手に打ち返してくれる。ある程度はな。」
勿論、限界はある。
体力が尽きてくると、次第にそれも難しくなっていくだろう。
「対して、幸村を見ろ。」
「・・・目の方が早いな。」
「ということは、幸村君は目で追って返球しておいでなのですね?」
「そうだ。幸村の方が意識的に返している分、微調整がし易く、入りやすい。」
ガシュ!
パッパラ~♪
「・・・・!くそ!次だ、次!」
「ふふふっ!」
「何笑ってんだよ!」
「偶にはゲームも良いなあと思って。」
「ああ”!?勝ってるからってイヤミかてめえ!」
ガコン!
ガコン!
「柳、目で追ってるって事はさ。頭で考えて返してるんでしょ?」
「そうだ。」
「ってことは、集中力が要るんじゃないの。」
「その通りだ。集中力が欠けると幸村の方が不利になる・・・が。」
「彼奴の集中が切れることなんてある?w」
「それ以前に、幸村は今俺の考えた集中力持続のトレーニングを日々こなしていたところだったんだ。」
「「「「「「「え?」」」」」」
「本人としては、丁度いいトレーニングの機会だと思っているだろうな。」