Well done 2 - 6/6


「よーし、歌うぞー!」

待望のカラオケタイムに、デンモクに噛り付く紀伊梨。

「カラオケ、カラオケ♪もー、待ちくたびれちゃったよー!結局紀伊梨ちゃんはゲーム出来なかったしー。」
「なあ、あの小学生結局何だったんだ?LINEだと財布賭けて勝負するから、みたいな事しか言ってなかったじゃん?」
「それが、話すと長くなりまして。」
「簡潔に説明しろと言われると厳しいもんがあるぜよ。」

「む・・・?こうか、いや・・・む?」
「真田君、それは洋楽のジャンルですから洋楽しか出ませんよ。」
「む、そうなのか。」
「真田、わからなくなったら此処のボタンをペンで押せ。検索出来るからその方が早い。」
「アーティストとは何のことだ?」
「歌手の事だよ・・・」

「おじいちゃんと孫感がやばい。」
「あはは!まあそうだね、弦一郎はこういう事の疎さに関してはそこらのお年寄り以上だから。」
「・・・?精市、何それ。」
「これかい?あの、貰った財布の中に入っていたんだよ。」

幸村の手には、小さく折りたたまれた可愛らしいメモ用紙が一枚収まっている。

「名前と、住所と、電話番号が綺麗な字で書いてある。メモはピンクの花柄だし、多分彼女のお母さんが、落とした時用にでも入れておいたんだろうね。」
「はー、成程。返すの?」
「元からどうにか返すつもりだったよ。別に欲しくもないし、持っていたってどうしようもないし。」
「まあそりゃそうか。」
「本当は、あの場で持って行ってくれればそれで済んだんだけれどね。」
「まあ、あっちはあっちでそういうの如何にも嫌がりそうじゃ・・・というか、返しても怒るんじゃないの。」
「だろうとは思うけれど、それはそれでまあ良いよ。勝手ながら住所を見させてもらったけれど、東京住まいだそうだから、もう会うこともきっとないと思うしね。」
「へー。彼奴、東京から此処まで来てたんだ。」

そりゃあご苦労さんな事で、と思いながら千百合は何気なくそのメモを横目で見た。


『あーあー、テステスwそれじゃ今から、1学期お疲れさま記念のカラオケ大会を始めます!』


千百合は棗の号令に、メモを財布にしまった。
本当に一瞬しか見なかったので、名前も確認できなかった。

でもまあいいやと思った。
幸村の言う通り、もう多分会うこともあるまいと思ったからだ。

今から丸1年も経たない内にあっさりと再会の機会が訪れることを、この場の誰もが知る由もなかった。