My narrative - 1/6



関東大会団体戦準優勝。

誇らしいどころか、いっそ憎らしいほどのこの肩書を背負って学校に帰ったのは、つい先日のこと。

今日は週明け。
関東大会が終わって次の平日。

「行ってきます・・・」
「はい、行ってらっしゃい・・・」

心なしか重い空気を背負って家を出る可憐を、母、遥はなすすべなく見送った。
新聞から伺う父も、何もかけてやれる言葉もなく。

「心配だなあ、氷帝テニス部。」
「そうだな。まさか負けると思ってなかったから・・・」

遥も健二も、テニスのことについてはてんで素人である。
まして現在の、関東の中学テニス界隈事情なんか知るはずもない。

だが知らないながら可憐はいつも跡部君は強い、うちの学校はとても強いと言っていたし、実際今まで戦績を聞いたら圧勝しかしてなかったから、なんとなく今回も優勝するだろうと勝手に思っていた。
まさか1勝も出来ないで帰ってくるなんて。

「おはよ~・・・ふああ~あ・・・あれ?おねーちゃんは?」
「お姉ちゃんは朝練に行きました。ほら、美梨も顔洗って。」
「あふ・・・大会終わったばっかりなのに、おねーちゃんの部活ってほんとやる気いっぱいだよねー。」
「「・・・・」」
「あれ?どうしたの?美梨何か変なこと言った?」
「いや、変なことは言ってないけど・・・」
「やる気いっぱいかどうかは・・・」

少なくとも今日に限ってはその点は微妙だ。
打ちのめされている部員だってきっと沢山居るだろう。なまじ今までほぼ無敗だっただけに、その衝撃たるや計り知れない。

「でも、落ち込んでても始まらないでしょ?切り替えが大事だって美梨は思うな。」
「美梨。当人でもないのに軽々しくそういう事を言うのは、父さんは感心しないぞ。」
「えー?でも本当の事なのに!美梨間違ったこと言ってないよ?」
「間違ってるとか正しいとかそういう問題じゃないの。ほら、早く洗面所行ってらっしゃい。」
「むー・・・何か朝から納得いかないなー。」

渋々、という様子で洗面所に行く美梨を見て、遥と健二は溜息を吐いた。
どうもこの下の娘は、こういう時人の感情の機微に疎くていけない。

また、別に間違ったことを言ってるわけじゃないから余計に注意し辛い。
落ち込んでたって始まらない、切り替えが大事。
それはその通りなのだ。

その通りなのだが。








(そうは言っても・・・)

「はあ・・・・」

知らず登校中に溜息を吐いてしまう可憐。

切り替えが大事。
それはわかっていても、そう簡単にいかないのが人間という生き物。

それに、可憐にはもう一つ気がかりがある。

(今日の部活どんな空気なんだろう・・・)

関東大会最終日は、跡部はほぼ何も言わなかった。
ただ挨拶の時、今日の結果を受けて次にどうするべきか各々考えろ、とだけ言って解散した。

考えろと言われたって、深く考えるまでもなく皆分かっているだろう。
さっさと立ち直れば良いのだ、それが一番合理的。

分かってるけど。

「はああ・・・」

ため息は当分止まりそうにない。








「ふむ・・・」

朝練の最中、網代は真剣な眼差しで練習風景を見ていた。

「茉奈花ちゃんっ。」
「あら、可憐ちゃん。どうしたの?」
「あ、ううんっ。大した用じゃないんだけどっ。」
「けど?」
「・・・今日、何か皆変だねっ。」
「そうね。空気が重いというか悪いというか。仕方ないといえば仕方ないんだけれど。」

やはり気のせいではなかった。
思っていたより皆普通だと最初は思っていたが、段々とどうも普段と違うと感じるようになってきた。

あからさまに引きずって普段だったらあり得ないミスをする者。
無意識下でショックを受けて、自覚なく動きが鈍っている者。
落ち込むまいと力み過ぎてピリピリしている者。

表面上だけでも普段の自分にサッと戻れている者が果たして何人居るか。

(もう、すっごく意気消沈ムードって程じゃなかったけど・・・やっぱり気になっちゃうなっ。私も早く元に戻らないと・・・)

さっきから空気がどうのと言ってるが。
だが可憐自身は、網代はともかく、自分はこの空気の原因の一人になんだかんだでなってしまっているんだろうな、という自覚はある。

跡部はどうなんだろう。
部長として、この場の雰囲気に何を考えるんだろうか。

実は跡部は今日の朝練を欠席しているのである。
どうしても外せない仕事が前から入っていたらしく、まあ関東終わった直後だし放課後は出るしと聞いていたから、まあその程度ならと思っていたが、まさかあんな敗北を喫してこんな状態になるなんて。

PiPiPiPi・・・

「あら、もうこんな時間!可憐ちゃん、後片付けしましょ。」
「あっ、うんっ!」