「いらっしゃい!焼きたてのフランクフルトだよ!」
「1本下さい!」
「お嬢ちゃん、輪投げはどうだい?」
「あ!やるやる!」
「台湾から来た新触感のかき氷だよー。」
「紀伊梨ちゃんマンゴー味!」
「から揚げ揚げたていかがですかー?」
「はいはーい・・・お?」
「ストップじゃ。」
ぐん、と首元を引っ掴むように引き戻されてる紀伊梨。
「なーにー?一口欲しいのー?」
「そういう事を言いたいんじゃないぜよ。」
「五十嵐さん、余計なお世話かもしれませんがもう少し選ばれた方が。」
さっきからなんとなく紀伊梨と一緒に居た仁王と柳生だが、紀伊梨は新しい露店の前に来るたびにいちいち足を止めている。
まさかこの調子で進んでいく気か、夏祭りの屋台なんて制覇したらえらいことになるぞ。
「そもそもお前さん、金はあるんか。」
「あるよ?」
「買ったとして、食べきれ・・・いえ、五十嵐さんは食べきれますね。」
「うん!お金もねー、おかーさんがたっくさんくれたよ。」
無駄遣い云々以前に、そもそも紀伊梨はよく食べるのである。
夕食食って来いというのなら相応の金を持たせておかねばならない事を、皐月はよーく知っていた。
「それにしてももう少し考えんしゃい。」
「考えるって何をー?」
「胃の容量と手持ちのお金はゆうげ・・・限りがあるものですよ。何が欲しいのか良く考えるべきです。」
「そお?うーん・・・」
マンゴー味のかき氷を食べながら歩く紀伊梨の様子を見て、どうもいまいちわかってないらしい事を仁王と柳生は感じる。
ぶっちゃけだ。
ぶっちゃけ、紀伊梨と行動を共にし始めたとき2人は結構軽い気持ちで、別行動にしたくなったらさっとそうすれば良いやとしか思ってなかった。
が。
(・・・こりゃあちいとまずいぜよ。)
(そうですね。目を離すと暴飲暴食に走りそうですし、それに・・・)
ちょっと試しに、2人は歩くペースを落として紀伊梨の後方に下がった。
そのままじわじわと気づかれないようにスピードを緩め、一定の距離が紀伊梨の知らん間に出来る。
と。
「ねえ。」
すぐに、知らない男が近づいてきた。
男といっても、多分高校生くらいだろう。
「ほ?紀伊梨ちゃん?」
「そう。あのー、夏祭り一緒に回らない?俺奢るからさ。」
「お!そーなn「「駄目。」」
ほうらやっぱり。
さっきから歩いていて、すんごく周囲の視線が煩かった。
一人にしたらこうなるだろうなと思っていたが、やはりか。
「あ!ねーねーニオニオにやーぎゅ、このおにーさん奢ってくれるっt「はいはい、わかったきに良い子でこっちに来んしゃい。」
「すみません、そういう事ですので。」
「あ、ああ・・・」
引きずるようにしてその場を後にする仁王と柳生。
「?」な顔の紀伊梨に、2人は思っていたより面倒な展開になってしまったのを悟った。
(これは一人に出来ませんね。)
(誰かにバトンタッチ出来るまでこのままじゃな。)
あの男だけじゃない。
さっきから紀伊梨に話しかけようとちらちらこっちを伺ってる気配はひっきりなしに感じる。これじゃ2人揃って手洗いにもいけない。一人は張り付いてないと一発アウトだ。
よくよくナンパにあうと聞いてはいたが、いよいよそれが本格的にやってきたというところか。
まあ仕方がない。
一応予想の範囲内のトラブルだ。
「ま、手始めに射的に付き合うて貰うぜよ。」
「あ!紀伊梨ちゃんもやるやるー!コルクの銃かっこいいよねー!」
「そっちじゃない、弓の方じゃ。」
「え!?そんなのあるの!?」
「あちらに見えますよ。」
「おー!紀伊梨ちゃん初めてだ、やるやるー!」